【相続税申告】必要書類と添付書類|収集のポイントや控除時の対応も解説
2025.05.12

相続税の課税対象になった場合、必要書類を正しく揃えて申告する必要があります。しかし、どんな書類を準備すればよいのかわからない方も多いでしょう。
相続税をスムーズに申告できるよう、必要な書類・添付する書類や収集のポイントのほか、よくある質問もあわせて解説します。
目次
相続税申告が必要なのはどんなとき?

相続税の申告が必要なのは、相続財産から借金等を引いた課税価格が、基礎控除額を超えているときです。基礎控除額は以下の計算式で求められます。
基礎控除額=3,000万円+法定相続人の数×600万円 |
課税価格が基礎控除内に収まっている場合は、相続税の申告は不要です。なお、相続税の申告書は相続の開始があったことを知った日の翌日から、10ヶ月以内に提出しなければなりません。
相続税申告に必要な書類

相続税の申告には、必ず相続税申告書の提出が必要です。申告書は第1表から第15表まであり、最寄りの税務署窓口、もしくは国税庁のホームページからダウンロードすることにより入手できます。様式は相続が発生した年のものを使用しましょう。
相続税申告の際に添付する書類

相続税の申告には、いくつか添付しなければならない書類があります。ここで紹介する書類が必ずしも必要なわけではないため、状況に応じて用意しましょう。
1.戸籍に関する書類
戸籍に関する具体的な必要書類は、以下のとおりです。
- ・被相続人の戸籍謄本等
- ・被相続人の住民票の除票
- ・被相続人の戸籍の附票
- ・相続人全員の戸籍謄本
- ・相続人全員の戸籍の附票
- ・相続人全員の住民票
- ・相続人全員のマイナンバーカード
- ・相続人全員の身分証明書
上記はいずれも市町村役場で取得できます。
2.遺産分割に関する書類
遺産分割に関する具体的な必要書類は、以下のとおりです。
必要書類 | 取得場所 |
---|---|
遺言書 | 自宅等 |
遺産分割協議書 | 相続人が作成 |
相続人全員の印鑑証明書 | 市町村役場 |
特別代理人選任の審判証明書 | 選任審判所 |
相続放棄受理証明書 | 家庭裁判所 |
申告後3年以内の分割見込書 | 国税庁ホームページ |
3.現金・預貯金に関する書類
遺産に現金・預貯金がある場合、以下の書類が必要です。
必要書類 | 取得場所 |
---|---|
預金残高証明書 | 金融機関 |
既経過利息計算書 | 金融機関 |
通帳のコピーや預金取引履歴証明書、定期預金証書 | 自宅や金融機関 |
4.不動産に関する書類
相続財産に不動産が含まれている場合、以下の書類が必要です。
必要書類 | 取得場所 |
---|---|
登記簿謄本 | 法務局 |
固定資産評価証明書 | 市町村役場 |
名寄せ帳 | 市町村役場 |
住宅地図 | インターネットや図書館 |
公図または地積測量図 | 法務局・出張所 |
賃貸借契約書 | 自宅等 |
借地権契約書 | 自宅等 |
5.株式・投資信託等に関する書類
株式・投資信託など、有価証券に関する具体的な書類は以下のとおりです。
必要書類 | 取得場所 |
---|---|
取引残高証明書 | 証券会社 |
配当金の支払通知書 | 自宅等 |
過去5年分の被相続人の取引明細 | 証券会社 |
直近3期分の決算書 | 証券会社 |
6.保険・退職金に関する書類
生命保険や退職金などに関する書類は以下のとおりです。
必要書類 | 取得場所 |
---|---|
死亡保険金支払通知書 | 生命保険会社 |
保険証書 | 自宅等 |
解約返戻金が記載された資料 | 各保険会社 |
退職手当支払計算書 | 被相続人の勤務先 |
7.債務に関する書類
債務がある場合は、以下の書類が必要です。
必要書類 | 取得場所 |
---|---|
借入残高証明書 | 金融機関 |
金銭消費賃借契約書 | 借入先 |
未納租税公課の納税通知書 | 自宅等 |
医療費や公共料金など未払いの領収書 | 自宅等 |
8.贈与に関する書類
贈与に関する具体的な必要書類は、状況に応じて以下のように異なります。手元に保管している書類を確認しましょう。
<過去3年以内に生前贈与を受けた場合>
- ・贈与税申告書
- ・贈与契約書
<相続時精算課税制度が適用された場合>
- ・贈与税申告書
- ・贈与契約書
- ・相続時精算課税制度選択届出書
- ・被相続人の戸籍の附票
<特例贈与が適用された場合>
- ・贈与申告書
- ・贈与契約書
- ・非課税申告書
9.葬儀費用に関する書類
お通夜や告別式など、葬儀に関する費用は相続財産から控除できます。葬儀会社や火葬場、参列者の飲食費などで支払った費用の領収書は保管しておきましょう。領収書がない場合はメモでもかまいません。
相続税申告で控除を受ける場合に必要な書類

相続税の申告にあたって、条件に適している場合は控除が受けられます。ここでは、配偶者控除を申請する場合と、小規模住宅地等の特例を申請する場合の必要書類を解説します。
配偶者控除を申請する場合の必要書類
配偶者控除とは、亡くなった方の配偶者が遺産を相続した場合、課税対象となる相続遺産が1億6,000万円以下、もしくは法定相続分までであれば相続税が課税されない制度です。
配偶者控除を利用したい場合は、以下の書類を用意しましょう。
- ・被相続人の戸籍謄本
- ・相続人全員の戸籍謄本
- ・遺言書または遺産分割協議書
- ・相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議を行った場合)
- ・申告期限3年以内の分割見込み書
小規模住宅地等の特例を申請する場合の必要書類
小規模宅地等の特例とは、相続した土地の評価額を80%減額できる制度のことで、相続税を大幅に節税できます。
小規模宅地等の特例を利用したい場合は、以下の書類が必要です。
- ・被相続人の戸籍謄本
- ・相続人全員の戸籍謄本
- ・遺言書または遺産分割協議書
- ・相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議を行った場合)
- ・申告期限3年以内の分割見込み書
【相続税申告に必要な書類】押さえておきたい収集のポイント

相続税の申告に必要な書類を収集する前に、効率的な取得順序や収集にかかる期間を押さえておきましょう。発行に時間がかかるものを優先すると効率が上がり、収集期間は平均して1ヶ月前後といわれています。
効率的な収集の順序
相続税の申告に必要な書類は、発行に時間がかかるものから取得することが大切です。以下の書類を優先することで、効率よく準備できます。
- 1.戸籍謄本
- 2.金融機関の残高証明書
- 3.領収書など手元に保管している書類
戸籍謄本は、被相続人の出生から死亡までの分が必要なため、複数の本籍地をたどる場合は時間がかかります。金融機関の残高証明書は即日発行が難しいため、早めに依頼するとよいでしょう。自宅に保管してある領収書等は、事前に探しておくと慌てなくて済みます。
収集にかかる期間
相続税の申告に必要な書類の収集には、平均して1ヶ月前後かかります。書類の種類や状況によっては2ヶ月以上かかる場合も。
前述のとおり、戸籍謄本の取り寄せには時間がかかります。金融機関の残高証明書は、発行に1〜2週間程度かかるのが一般的。書類の収集は早めに着手しましょう。
相続税申告に関するよくある質問

ここでは、相続税申告に関するよくある質問に回答します。
1.原本が必要な書類はありますか?
印鑑証明書です。遺産分割協議がある際に、原本を用意する必要があります。なお、印鑑証明書以外の書類は、すべてコピーで問題ありません。
2.通帳のコピーは必要ですか?
通帳のコピーは、多額の入出金や贈与がないかを明確にする目的として必要です。過去5年分の記録を用意しておきます。
ただし、通帳のコピーだけでは「他にも口座があるのでは」と税務署に疑われる可能性があるため、金融機関から残高証明書を取得しておくとよいでしょう。
3.自分で手続きするのは難しいですか?
相続税の申告は、自分で手続きすることも可能です。特に、相続財産が総額5,000万円以下と少ない場合や、土地など複雑な資産がない場合は手続きしやすいでしょう。
一方、遺産分割が済んでいない場合や、不動産の評価額が自分で算出できない場合、相続財産が多い場合などは専門知識が求められるケースもあるため、税理士のサポートを受けると安心です。
4.税理士に依頼した場合いくらかかりますか?
相続税の申告を税理士に依頼した場合、税理士への報酬相場は相続財産の0.5〜1.0%が一般的。例えば、相続財産が5,000万円だった場合、税理士への支払は25〜50万円です。
費用をかけたくない場合は、自分で手続きすることも検討するとよいでしょう。
相続税申告に必要な書類を理解し、スムーズに手続きを進めよう

相続税の申告には、戸籍情報から具体的な資産の状況まで複数の書類を取得する必要があります。書類によっては発行に時間がかかり、また、条件によって控除が受けられる場合もあるため、余裕を持って準備を進めましょう。
なお、不動産の相続に関するお悩みをお持ちの方は、住栄都市サービスまでご相談ください。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
