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強制退去とは?条件・流れ・その後まで入居者と大家が知るべきポイントを解説

2026.03.18

強制退去とは、入居者に退去を求め、それでも応じない場合に裁判所の判断を経て明け渡しを強制的に執行する手続きのことを指します。大家の一方的な独断で行うのではなく、契約解除や訴訟などの段階を踏んだうえでの最終的な手続きです。

本記事では、強制退去の意味や適用される条件の他、流れや入居者のその後、立場別のよくある疑問などを紹介します。

強制退去とは?基本的な意味と法律上の位置づけ

強制退去とは、入居者が自ら退去しない場合に、裁判所の判断を経て物件の明け渡しを強制的に執行する手続きを指し、法的には「明け渡し」や「立ち退きの強制執行」と表現されます。

強制退去は借主を退去させるだけではなく、家財の撤去も含まれます。ただし、借地借家法は居住の安定のために借主の権利を強く保護しているので、大家が一方的に鍵を替えたり荷物を出したりする行為は認められていません。大家側は話し合い・契約解除・訴訟・強制執行という段階を踏む必要があります。

強制退去が適用される条件と具体例

強制退去は、貸主と借主の信頼関係が破綻し、契約の継続が難しいと判断された場合に適用されます。強制退去の条件やよくあるケースなど、具体例を紹介します。

家賃滞納が続いている

家賃滞納は強制退去の典型例とも言えますが、1〜2か月の遅れで直ちに認められるわけではありません。家賃滞納が悪質かつ長期化している場合に、重大な契約違反として契約解除・強制退去が認められる傾向にあります。

例えば、3か月以上の継続滞納に加えて再三の催告にも応じず、支払う意思が見られないといったケースが該当します。滞納の期間だけではなく、支払う意思と能力も重要な判断材料となるのがポイントです。

迷惑行為や契約違反が続いている

騒音や悪臭、ゴミ屋敷化、近隣住民への執拗なクレームなどの迷惑行為が繰り返され、貸主や管理会社が注意しても改善されない場合も、信頼関係を壊す重大な契約違反とみなされます。

また、無断増改築・無断転貸など、賃貸借契約に禁止されている行為が続く場合も、強制退去が認められます。

建物老朽化や再開発など貸主側に正当事由がある

借主側に違反がなくても、法律上で立ち退きが求められる場合には強制退去が認められます。建物の老朽化により建て替えが必要な場合や、都市計画による道路拡張・再開発などが該当します。

ただし、老朽化や再開発に正当事由があるかどうかは個別に判断されるため、裁判に持ち込まれるケースが多い傾向です。

強制退去までの具体的な流れ

強制退去は協議や催告、裁判を経るのが原則であり、いきなり追い出すことはできません。強制退去までの具体的な流れを解説します。

ステップ1:借主への注意・話し合いで任意解決を試みる

まずは借主への電話・手紙・訪問などでトラブルを解決できるか試します。家賃支払い通知や迷惑行為の中止を求め、事情を聞きながら自主的な改善を促しましょう。

分割払いの提案や生活状況の確認をして、貸主と入居者の双方が合意した場合は、この段階でトラブルが収束する可能性があります。

ステップ2:連帯保証人・保証会社に連絡する

借主が督促や話し合いに応じない場合は、連帯保証人や家賃保証会社に連絡し、滞納家賃の立替えや状況の是正を求めます。家賃滞納が問題となっている場合、保証人経由で支払いが再開される可能性があります。

ステップ3:内容証明郵便で契約解除の予告・督促を行う

任意の交渉でも改善が見られない場合は、配達証明付き内容証明郵便で、滞納額・支払期限・契約違反の内容などを正式に通知する必要があります。

配達証明付き内容証明郵便は、誰が・いつ・どんな文書を送ったかを郵便局が証明してくれます。通知していないといった主張を防げるのに加えて、裁判でも重要な証拠として扱われるので必ず通知するようにしましょう。

ステップ4:賃貸借契約の解除と明渡請求訴訟を提起する

内容証明郵便で定めた期限までに支払いや改善がない場合は、賃貸借契約を解除し、建物の明け渡しを求める訴訟を裁判所に提起しましょう。家賃滞納がある場合は、滞納家賃・遅延損害金の支払いも一緒に求められます。

提起する際は賃貸借契約書や内容証明郵便、登記事項証明書などの資料を証拠として裁判所に提出する必要があります。

ステップ5:裁判と判決・強制執行による明け渡し

裁判では、双方の主張や証拠を踏まえて和解や判決となります。それでも借主が和解内容や判決に従わず退去に応じない場合、最終手段として強制執行の申し立てが可能です。

強制執行は裁判所執行官の立ち会いの下で家財を搬出し、鍵交換を行って物件を空の状態にしてから明け渡されます。

強制退去の費用と期間の目安

ケースにもよりますが、強制退去が実行されるまでには数十万円の費用と数か月の日数を要します。それぞれの目安を紹介します。

強制退去にかかる主な費用と目安

強制退去までにかかる主な費用の内訳は以下の通りです。

種類 目安
内容証明郵便 1300円程度
裁判費用 5万円〜8万円程度
強制執行費用 30万円~50万円程度
弁護士費用 30万円~

強制執行には予納金に加え、鍵交換費用、荷物の撤去・借主の家財等の保管費用がかかるため高額になるでしょう。また、弁護士費用は事案によって金額が変動します。

法律上、訴訟費用や強制執行費用は原則として、敗訴した借主に請求可能です。ただし、家賃滞納をしている借主は支払い能力が乏しいケースもあるため、大家の持ち出しとなることが多くなる傾向にあります。

強制退去が完了するまでの期間の目安

ケースにもよりますが、訴状提出から判決が得られるまでは短くても2~3か月の期間を要するのが一般的です。家賃滞納がきっかけの場合、滞納発生から明け渡し訴訟の提起まで早くても4~5か月程度かかるでしょう。

判決後の強制執行申し立てから実際に執行されるまで(断行日)は、民事執行手続に基づき、おおむね6週間程度が目安とされています。

強制退去させられたらどうなる?入居者への影響

強制退去は単に部屋から出ていくだけではなく、その後の生活全体に大きな影響を及ぼします。住む家と生活の基盤を一度に失う事態を防ぐためにも、強制執行される前に対応することが重要です。

住まいへの影響

強制退去の執行時点で入居者は部屋から退去となり鍵も交換されるため、その住居には戻れなくなります。室内に残っていた家財道具は賃貸人が用意したスペースや執行官指定の倉庫に移され、一定期間保管されます。

期間内に本人や親族が引き取らなければ処分されるのが一般的なので、生活の基盤となる住まいと荷物を一度に失うリスクが高まるでしょう。

金銭面への影響

強制退去になっても、滞納家賃や遅延損害金の支払義務は残り続けます。加えて、強制執行で発生した荷物の運搬・保管・廃棄、鍵の開錠・交換、執行官の立会いなどの費用は原則として借主が負担しなければなりません。

このような点を踏まえると、強制退去による金銭面への影響は一般的な引っ越し費用の2〜3倍程度になると考えられます。そのため退去の判決が出た場合は、居座り続けるよりも強制執行までに対応した方が金銭的負担は軽くなるでしょう。

信用面への影響

保証会社を利用している場合に家賃滞納が原因で強制退去になると、滞納情報が信用情報機関に記録される可能性があります。その結果として、クレジットカードやローンの審査が厳しくなるだけではなく、次の賃貸住宅を借りる際の審査も不利になるかもしれません。

信用面への影響は一定期間続くので、早めの家賃支払いや分割相談、公的支援の利用などを検討することが重要です。

【立場別】強制退去に関するよくある疑問

居住者を強制退去させたい、大家に強制退去させられそうといった場合、それぞれの立場で疑問が湧き起こるかもしれません。よくある疑問を紹介します。

【大家】勝手に鍵を替えたり、荷物を捨てたりするのは違法?

居住者に早く立ち退いてほしいからといって、独断で勝手に鍵を替えたり、荷物を捨てたりするのは避けましょう。これらの行為は「自力救済」と呼ばれ、法律上原則として禁止されています。

損害賠償請求の対象となるのに加えて、状況によっては住居侵入や器物損壊などの違法行為に該当する可能性もあるため、必ず段階を踏む必要があります。

【大家】相続した不動産に親族が住み続けている場合の強制退去は可能?

遺産分割協議が終わっているか、賃料の有無などで立ち退き請求の可否は変わります。

遺産分割協議が終わっていない場合は、請求が難しいでしょう。相続発生直後の不動産は相続人全員の共有状態で、それぞれに使用する権利があります。そのため、同居している相続人は居住を続けられると解釈できます。

遺産分割協議で所有者が決まり、親族が無償で住んでいる場合は「使用貸借」に該当する可能性があるため、原則として貸主側から契約終了と明け渡し請求が可能です。ただし、直ちに退去を迫るのではなく、退去時期や条件を話し合うのが前提とされています。

家賃を支払う「普通借家契約」で親族が住んでいる場合は、家賃滞納などの正当な理由がなければ強制退去は認められにくいと言われています。

【入居者】強制退去になりそうなときはどこに相談すれば良い?

強制退去を迫られそうなときは、弁護士や公的な法律相談、自治体の相談窓口などを利用してみましょう。

家賃滞納をしている場合は、立ち退きや家賃滞納の分野に詳しい弁護士に相談するのが効果的です。立退き要求の妥当性や立退料の相場、交渉の進め方などについて、専門的なアドバイスや代理交渉をしてもらえるかもしれません。

また、多くの自治体では無料法律相談や、住まいに関する総合窓口を設けています。賃貸トラブルや住まいの不安について、弁護士や専門相談員に無料で相談できるので、自治体のホームページなどで調べてみると良いでしょう。

強制退去には労力と費用がかかるのでまずは任意解決を試みよう

強制退去は直ちにできるものではなく、裁判による判決が必要です。大家と居住者のどちらにも時間や労力、費用がかかるため、どのようなケースでも、まずは任意解決を目指しましょう。

また、強制退去が認められないケースもあるので、まずは弁護士などの専門家に相談して疑問を解決することをおすすめします。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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