敷地権とは?所有権との違いや必要性、計算方法をわかりやすく解説
2026.03.12

敷地権は、マンションを語るうえで欠かせない重要な権利です。しかし、敷地権・敷地利用権・所有権・非敷地権といった用語は内容が似ており、売却や相続の場面では判断に迷う人も少なくありません。
この記事では、敷地権の基本的な意味から必要性、確認方法、さらに敷地権割合の求め方までを順を追って解説します。
目次
敷地権とは?

マンションのように、1つの建物の中に複数の独立した住戸が存在するものは「区分建物」と呼ばれます。その住戸ごとに所有権をもつ人が「区分所有者」であり、専有部分については自由に利用したり売却したりできます。
ただし、マンションの建物が建つ土地は特定の区分所有者が個別に所有しているわけではなく、区分所有者全員が持分を共有して利用しているのが一般的です。
戸建住宅では土地と建物を別々に登記し、それぞれを単独で売却することが可能ですが、マンションの場合は専有部分の権利と土地の共有持分を切り離すことができません。
つまり、部屋だけを残して土地を処分する、または建物だけを手放すという扱いはできず、常にセットで考える必要があります。
このように、マンションの専有部分の所有権と、その建物を支える土地の利用権を一体化して扱う仕組みが「敷地権」です。現在建てられている多くのマンションで採用されており、権利関係を明確化し、円滑な取引を可能にする制度として機能しています。
敷地権と敷地利用権・所有権・非敷地権の違い

敷地権に関わる言葉には似ているものが多く、誤解されやすいのが特徴です。それぞれの違いを整理して理解しておきましょう。
敷地権と敷地利用権の違い
どちらも土地に関係する権利ですが、示す内容は異なります。敷地権は「土地と建物の権利を一体化した形態」であり、敷地利用権は「その土地を使うことができる権利そのもの」です。
マンションに住む場合、専有部分だけでなく、建物が建つ土地も利用しています。この土地を利用するための権利が敷地利用権で、所有権・賃借権・地上権などの形で区分所有者全員が共有するのが一般的です。
敷地権と所有権の違い
所有権は不動産を法令の範囲内で自由に使い、収益を得て、処分できる「権利そのもの」を指します。一方、敷地権は「専有部分の所有権と敷地利用権を切り離せないようセットで扱う権利形態」です。
戸建住宅では土地と建物をそれぞれ独立した所有権として売買できますが、マンションの場合は専有部分の所有権と土地の持分をバラバラに処分することはできないため、実質的に所有権に一定の制約がある仕組みといえます。
敷地権と非敷地権の違い
マンションには「敷地権マンション」と「非敷地権マンション」が存在します。非敷地権とは、戸建と同じように土地と建物をそれぞれ別個に登記している形式です。敷地権を採用している物件は、部屋と土地を一体で扱い、登記もまとめてなされていて別々に売却することができません。
一方、非敷地権のマンションは土地の権利と部屋の権利を切り離して売買できるため、処分方法は戸建に近い扱いになります。
多くのマンションは敷地権方式ですが、少数ながら非敷地権の物件も残っています。詳しい内容は後述します。
敷地権が生まれた背景と重要性

敷地権が制度として整えられた背景には、マンションの登記に関するさまざまなトラブルがありました。以前は専有部分の区分所有権と敷地利用権が別々に登記され、敷地利用権は1冊の登記簿で一括管理されていたのです。
そのため、名義変更や抵当権設定が集中する事態に。記載ミスや漏れが起こりやすい状況が続き、売買や相続の際に登記内容が一致しないといった問題も発生していました。
1983年の法改正で敷地権制度が導入され、区分所有権と敷地利用権をまとめて登記できるようになったことで、管理の複雑さや登記の手間が大幅に改善されました。
その結果、取引の安全性が高まり、現在ではマンションの権利を正確に管理するうえで欠かせない制度となっています。
敷地権がないマンションも存在する

現在の多くのマンションでは敷地権が設定されていますが、すべてがそうとは限りません。
代表例としては、1983年の改正前に建てられ、土地と建物の登記が別々の状態で残っている物件や、改正後でも管理組合の判断により敷地権化されなかったケースが挙げられます。
こういったマンションでは、土地と建物を別個の不動産として扱う必要があるため、売却や相続の手続きが煩雑になりがちです。住宅ローンが利用しづらい、買主が権利関係を不安に感じやすいなどの理由から、市場では売れにくい傾向があります。
また、建物の所有者と土地の持分名義が一致しないとトラブルの原因にもなるため、取り扱いには注意が必要です。
とはいえ、敷地権がないマンションでも売却自体は可能です。相続や売却に不安がある場合は、専門の不動産会社に相談することで、権利説明のサポートや手続きの整理など、スムーズな取引につなげやすくなります。
敷地権の確認方法・敷地権割合の計算方法

マンションの権利内容を正しく把握するには、敷地権の有無や敷地権割合の確認が欠かせません。ここでは確認方法と計算方法を紹介します。
敷地権の確認方法
マンションに敷地権が付いているかどうかは、登記簿謄本(登記事項証明書)を見るのが確実です。
登記簿謄本には、不動産の所在地、構造、所有者、抵当権などの情報が記載されています。その中に「敷地権の目的である土地の表示」や「敷地権の表示」といった項目があれば、そのマンションには敷地権が設定されていることになります。
「敷地権の表示」には、敷地権の種類(所有権・地上権・賃借権など)、敷地権割合、登記日などが記録されており、土地に関する権利関係も確認できます。
登記簿謄本は法務局で取得できるほか、オンライン申請でも入手可能です。なお、管理規約や売買契約書に敷地利用権の記載があることもあります。
取引を進める際に敷地権を確認せずに手続きを進めると、後々トラブルや遅れが生じる可能性があるため、必ず事前にチェックしておきましょう。
敷地権割合の計算方法
敷地権割合とは、マンションの敷地に対して各住戸がどの程度の権利をもつかを表す数値で、基本的には専有部分の床面積の比率によって決まります。計算式は次の通りです。
【各住戸の床面積÷全住戸の床面積=敷地権割合】
専有面積には「壁芯面積」と「内法面積」がありますが、敷地権割合の算出では壁芯面積を使用するケースが一般的です。
■計算例①
10戸すべての専有面積が60㎡のマンションでは、総床面積は
60㎡×10戸=600㎡
1戸あたりの敷地権割合は
60㎡÷600㎡=0.1(=10%)
となります。
次に、別の例として専有面積が異なる住戸が混在する場合も見てみましょう。
■計算例②
70㎡の住戸が10戸、80㎡の住戸が20戸あるマンションで、80㎡住戸の敷地権割合は
80㎡÷{(70㎡×10)+(80㎡×20)}=80÷2300=約0.0348
となり、約3.48%がその住戸の敷地権割合となります。
面積以外を基準に割合を決める例もごく一部にありますが、一般のマンションでは床面積による算定が基本です。
敷地権を理解してマンション売却・相続の失敗を防ごう

敷地権は、マンションの専有部分と敷地の権利を切り離せないように整えた制度で、権利関係を明確にしてトラブルを防ぐ役割をもっています。
敷地権が設定されていないマンションが存在することも事実で、その場合は売却や相続の手続き・権利説明が複雑になり、市場で売れにくく評価されてしまうケースもあります。
マンションを資産として適切に扱うためには、敷地権の有無や割合を正しく理解することが欠かせません。特に相続や売却を検討している場合は、判断を誤らないためにも専門の不動産会社へ相談することをおすすめします。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。




