マンションの建て替え費用はどれくらい?相場と払えない場合の対処法
2026.03.22

マンションの建て替え費用は1戸あたり約1,000万円〜2,000万円が相場で、仮住まい費用なども加わると負担はさらに増します。老朽化したマンションを購入・相続する際は、建て替えリスクを想定し、管理状況や修繕履歴を事前に確認することが将来の安心につながります。
目次
マンションの建て替え費用はどれくらい?

マンションの建て替えには多額の費用がかかります。特に自己負担額は想像以上に大きく、事前の理解が欠かせません。この章では、建て替えにかかる費用の相場や誰が払うのか、補助金活用の難しさについて解説します。
相場は1戸当たり約1,000万円~2,000万円
マンション建て替えにおける住民の自己負担額は、1戸あたりおよそ1,000万円~2,000万円が相場です。国土交通省の調査でも、2017〜2021年の平均負担額は約1,941万円とされています。
ただし、この平均額は比較的大きい規模のマンションで、新たに高層住宅として建て替え、戸数を増やして負担を抑えたケースであると考えられるため、注意が必要です。小規模マンションでは戸数を増やしにくく、1戸あたりの自己負担額がもっと高くなる可能性があります。
加えて、仮住まいの家賃や引越し費用なども別途かかるため、想定より多くの資金が必要になることも考慮しましょう。
参照:国土交通省 マンションを取り巻く現状について
費用は住民の自己負担だが、軽減されることもある
マンションの建て替え費用は、原則として住民の自己負担です。
しかし、条件によっては軽減されるケースもあります。たとえば、建て替えによって高層化や戸数の増加ができる場合、新たに増えた住戸を販売することで収益が得られます。その資金を建て替え費用に充てれば、住民負担を抑えることが可能です。
ただし、全額免除されるのはまれで、容積率や立地条件などによって左右されます。建て替えを検討する際は、事前に専門家に相談することが重要です。
補助金の活用は難しいケースが多い
マンション建て替えには、国の「優良建築物等整備事業」や、東京であれば「東京都都市居住再生促進事業」など、自治体の補助金制度があります。これらは解体費や共用部分の整備費など一部費用が対象で、条件も厳しく、公共通路の設置が求められる場合も。
補助金を利用しても自己負担がゼロになることはほとんどなく、住民にとって大きな経済的負担が残るのが現実です。事前に制度の詳細を各自治体の公式情報で確認しましょう。
マンションの寿命はどれくらい?建て替え目安と延命のコツ

マンションは「寿命=築年数」と思われがちですが、実際には管理や修繕状況次第で大きく変わります。この章では、マンションの寿命の考え方や、建て替えの目安、長く快適に住むための延命のコツを解説します。
建て替えの目安は築40〜50年
マンションの建て替え時期は建物の物理的な寿命ではなく、管理組合の判断によって決まるのが実情です。鉄筋コンクリート造の躯体は適切な維持管理を行えば長期間使用できますが、国土交通省やマンション再生協議会の事例を見ると、実際に建て替えが行われているのは築40〜50年が中心です。
老朽化や安全性、資産価値の観点から、築40年がひとつの検討目安といえます。
参照:マンション再生協議会 建替法による建替え事例
耐久年数より長く利用可能
マンションの法定耐用年数は47年とされていますが、これはあくまで税務上の目安で、実際の寿命とは異なります。鉄筋コンクリート造のマンションは、適切に管理・修繕がされていれば、80〜100年、それ以上使えることも。
コンクリートの品質や建築技術の向上により、最近の建物ほど寿命が延びる傾向にあり、今後さらに長期利用が可能になると考えられています。
参照:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表
国土交通省 期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について
定期メンテナンスでマンションの寿命を延ばす
マンションの寿命は建物だけではなく、給排水管や電気設備などのライフラインの状態にも左右されます。これらの設備は30〜40年で交換が必要となるため、定期的な点検と適切な修繕が不可欠です。
長期修繕計画をもとに継続的にメンテナンスを行うことで、建物全体の寿命を大きく延ばすことが可能になります。
マンションの建て替え事例は少ない

全国には約713万戸の分譲マンションがあり、2024年末時点で築40年以上の高経年マンションは約148万戸にのぼります。
しかし、実際に建て替えられた事例は、2025年3月時点でわずか323件・約2.6万戸と、全体の約1.7%にすぎません。建て替えが実現しているのは、立地条件が良く、耐震性に問題のある一部のマンションに限られ、多くのマンションでは費用や合意形成の壁が大きな課題となっています。
参考:
国土交通省 分譲マンションストック数の推移
国土交通省 築40年以上のマンションストック数の推移
国土交通省 マンション建替え等の実施状況
マンションの建て替えが少ない3つの理由

築古マンションが増える一方で、実際に建て替えられるケースはごくわずか。その背景には、費用・合意形成・法制度など複数の課題が存在します。この章では、建て替えが進まない主な3つの理由をわかりやすく解説します。
1.建て替え費用の負担が大きい
マンション建て替えが進まない理由のひとつは、区分所有者の費用負担の重さにあります。
先にも述べた通り、建て替えには1戸あたり1,000万円〜2,000万円かかるのが一般的で、解体費や建設費など多くの費用を住民が自己負担しなければなりません。高層化によって販売利益で負担を軽減できる場合もありますが、それでも費用がゼロになることはほとんどないと言えます。
また、築年数が古い物件では、住宅ローンの利用条件が厳しくなることもあり、資金調達のハードルがさらに上がることも課題のひとつです。
2.住民の合意が得られない
建て替えには原則、区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。費用負担や引越しへの不安から反対意見も多く、合意形成が大きな壁になっています。
2026年からの法改正により、老朽化で安全性に問題がある場合は4分の3の賛成で建て替えが可能になりますが、賛成を得るハードルの高さ自体は依然として変わりません。
3.建築基準法の制限で建て替えができない
マンション建て替えが難しい理由のひとつに、法制度や建築基準法の制限があります。
建築当時は合法でも、その後の法改正によって、現在の容積率や高さ制限に適合しない「既存不適格」の物件は、同じ規模で建て直すことができません。
既存不適格物件は現状のまま使用できますが、建て替えや大規模改修を行う際には現行の基準に適合させる必要があり、同じ規模・配置で再建築できないケースも。この法的な制限が、建て替えの大きな障壁になることがあります。
マンション建て替え費用が払えないときの2つの対処法

建て替えには多額の費用がかかるため、負担が難しいと感じる住民も少なくありません。この章では、建て替え費用の自己負担が難しい場合に検討できる2つの対処法について紹介します。
1.自分の住戸を手放し立ち退く
費用負担が難しい場合、ひとつの選択肢が住戸の立ち退きです。
建て替えに反対した所有者には、組合から時価での売却を求められる「売渡請求権」が適用され、修繕積立金が返還されるケースもあります。無理に建て替えに参加するより、自身の状況に合った選択をすることが大切です。
2.所有者全員合意でマンション敷地を売却する
自己負担が難しい場合、敷地ごと売却する方法もあります。
全区分所有者の合意が必要ですが、「マンション敷地売却制度」が適用されれば、5分の4以上の賛成で売却が可能に。売却により住民は分配金を受け取り、他の住まいへ移る資金に充てられます。事前に制度の要件や、合意形成のハードルを確認しておくことが重要です。
築古マンション購入・相続時に確認したい|建て替えリスク対策

築古マンションの購入や相続をする際は、将来的な建て替えリスクも視野に入れておくことが大切です。この章では、事前に確認すべき管理状況や修繕履歴など、リスクを避けるための具体的なチェックポイントを解説します。
管理状況をチェック
築古マンションの購入前には、日頃の管理状況を必ず確認しましょう。
管理費の徴収が滞っていないか、管理組合がきちんと機能しているかなどがチェックポイントです。管理組合の会計資料や活動記録は、不動産会社を通じて取り寄せができます。普段の管理がずさんなマンションは、将来のトラブルにつながる恐れがあるため注意が必要です。
修繕積立金や過去の修繕履歴も確認
築古マンションを購入する際は、修繕積立金の金額と過去の修繕履歴を確認することが重要です。
適切な修繕が行われてきたかどうかで、今後の住み心地や資産価値に大きく影響します。積立金が極端に少ない場合や修繕記録が乏しい場合は、将来的に大きな出費やトラブルにつながる可能性があるため、慎重に判断しましょう。
将来の負担を見越して、後悔のない選択をしよう

築古マンションは、相続や購入時に価格が安く魅力的に見える一方で、将来的に1戸あたり1,000万円〜2,000万円前後の建て替え費用が発生する可能性があります。加えて、合意形成の難しさや法的制限もあり、建て替えが進まないケースが多いのが現実です。
将来の経済的負担を避けるためにも、管理状況や修繕履歴を確認し、「持ち続ける・手放す」の判断を早めに検討しましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。




