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負の資産である不動産(負動産)とは?基礎知識・リスク・相続・処分方法まで徹底解説

2025.12.29

使い道がなく、所有しているだけで維持費や税金がかかる「負動産」。空き家や山林などがその代表で、放置すると倒壊や近隣トラブル、相続問題に発展するケースも少なくありません。

本記事では、負動産の意味や増加の背景、放置によるリスク、相続時の対応や処分方法までをわかりやすく解説します。

負動産とは|まずは基礎知識をおさえよう

相続や空き家問題などで注目される負動産。まずはこの問題の実態と背景、将来起こり得るリスクについて、基礎から解説します。

負動産の定義

負動産とは、売却も活用も難しく、所有しているだけで維持費や固定資産税などがかかる「負の資産」となった不動産のことです。特に、地方の空き家や再建築不可の土地などに多く見られるのが特徴です。こうした負動産を抱え込まないためにも、事前の対応が重要になります。

負動産増加の背景

負動産は、人口減少や高齢化、相続の増加、さらには解体費用の高騰など、さまざまな社会的な背景が重なって生まれています。特に、地方では空き家が増え続け、売ることも使うことも難しいまま放置されるケースが多く、いまや身近な社会課題になりつつあります。

総務省の行った「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)」によると、2023年の空き家数は約900万戸で過去最多となり、空き家率は13.8%に上昇。また、1993年からの30年間で、空き家はおよそ2倍に増加しています。

負動産の2025年問題

2025年には団塊の世代が75歳以上となり、相続の急増により空き家や管理困難な不動産が一気に増えると予測されています。特に地方では、需要の低さから売却が難しい不動産が増え、管理や処分に悩む人が急増する可能性があります。

また、都市部と地方での不動産価値の格差拡大も、懸念されている問題点の1つです。負動産に悩まされないよう、相続前から家族間で話し合ったり、専門家に相談したり、生前対策をしておきましょう。

負動産になりやすい不動産の特徴

負動産化しやすい物件は使い道が乏しく、需要も少なく、維持や取引にコストや手間がかかりがちです。以下のような特徴の不動産は、負動産となりやすいため注意しましょう。

特徴 主な理由・問題点
地方や田舎の空き家 過疎化・供給過多・修繕費が高額
山林・農地 利用用途が限られ、管理や転用が困難
評価額が極端に低い物件 市場価値がなく、売却困難
築年数が古すぎる建物 老朽化・再建築制限・耐震性に不安
リゾート・地方のタワーマンション 維持費が高く、入居率も低迷
管理不全のマンション 美観・衛生・資産価値に悪影響
権利関係が複雑な土地・建物 権利が複雑に絡み、売却や管理の調整が難航しやすい
建築制限のある土地 法的に建て直しができない

負動産を相続する問題点

負動産を相続すると、維持費や税金に加えて、さまざまな手続きの負担がのしかかります。ここでは、相続後に起こりうる4つの具体的な問題点を解説します。

1.維持に手間とコストがかかる

建物がある場合は、火災保険や修繕費、清掃などの管理費が必要です。特に遠方の不動産を相続した場合、自分で管理できず、地元の管理業者や近隣住民に依頼するなど、費用も手間もかさみます。

さらに管理が行き届かない空き家は、「空家等対策特別措置法」に基づいて「特定空家等」に指定される可能性があり、自治体から命令や代執行を受けることも。管理の改善がなされない場合、固定資産税の軽減措置が解除され、税額が最大6倍になるリスクもあるため注意が必要です。

参照:環境省 空家等対策の推進に関する特別措置法の概要

2.固定資産税が毎年かかる

相続などで取得した不動産は、たとえ使っていなくても固定資産税が毎年かかります。長く保有すればするほど、毎年の固定資産税がかさんでくるため、使い道のない不動産を持ち続けることは、家計への継続的な負担となります。

利用していないにもかかわらず、税金だけが毎年発生する状態は非効率であり、早めの活用や処分を検討することが重要です。

3.土地の処分は簡単にできない

不動産は一度相続すると手放すのが容易ではなく、売却には登記や契約、測量など多くの手続きが必要です。

後程詳しく述べますが、2023年施行の「相続土地国庫帰属制度」によって国に譲渡する道もありますが、建物付きや条件に合わない土地は対象外で、すべての不動産が手放せるわけではありません。負動産ほど処分のハードルが高くなってしまいます。

4.将来の相続人に負担を残してしまう

不動産を処分せずに放置すると、将来子どもたちが負動産を相続し、税金や管理の負担を背負うことになります。

相続人が複数いれば権利関係が複雑化し、処分も困難に。自分の代で対応せずにいると、後の世代に思わぬトラブルや負担を残すことになりかねません。

負動産をそのままの状態で放置する3つのリスク

負動産を放置すると、思わぬリスクが積み重なっていきます。ここでは倒壊・犯罪・法的責任という3つの代表的なリスクを取り上げ、放置が招く深刻な事態について解説します。

1.倒壊のリスク

負動産を放置すると老朽化が進み、倒壊や外壁の落下など危険性が増します。特に、木造住宅は湿気やシロアリの被害を受けやすく、安全性が著しく低下することも。

自然災害が多い日本では、旧耐震基準の建物は災害時のリスクも高く、周囲への影響が大きくなります。

2.犯罪のリスク

管理されていない空き家は、不法侵入や放火、ゴミの不法投棄といった犯罪の温床になりやすく、近隣トラブルの原因になります。火災が起これば周囲に被害が及ぶ恐れがあり、所有者が損害賠償や管理責任を問われるケースも。

防犯対策にも限界があるため、早めの処分や活用がおすすめです。

3.法的なリスク

先の章でも述べた通り、管理が不十分な空き家は「特定空家」に指定されます。「特定空家」に指定されると、自治体から修繕や解体の命令を受ける可能性があるため、注意が必要です。

負動産を相続した場合の6つの選択肢

負動産を相続した場合は、「手放す」「活用する」などいくつかの選択肢があります。放置すると税金や管理の負担が続くため、早めに方向性を決めることが重要です。ここでは、主な6つの対応方法を紹介します。

1.売却する

まずは、売却の可能性を探ることが重要です。活用が難しいと感じても、他人にとっては価値ある負動産という場合もあります。立地や築年数に難があっても、格安物件としての需要は存在し、工夫次第で現金化も可能。

売却には測量や登記などの準備が必要なため、専門家や自治体への相談を早めに行うことが成功の鍵です。

2.活用する

売却が難しい不動産でも、立地や特性に応じて活用できる可能性があります。以下に代表的な事例をまとめました。

活用方法 特徴・メリット 注意点・課題
駐車場(コインパーキング・月極) 初期費用が少なく、駅近や施設周辺では安定収益が見込める 精算機器や舗装工事に費用がかかる
駐車場(観光地・商業地向け) イベントや観光シーズンに高需要 季節変動や近隣の競合状況により収益が不安定になる場合も
トランクルーム・コンテナ貸し 狭小地や住宅街でも運用可能。収納ニーズに対応しやすい 立地によって収益に差がある
太陽光発電設備 売電収入が見込め、国の補助制度も活用できる 初期投資が高額。日照や敷地条件に左右される
資材置き場 建設業者向けに更地を貸し出すシンプルな活用法 搬入経路によっては不向きなケースも
古民家賃貸 歴史的価値を活かした居住用・店舗用賃貸が可能 修繕費用や耐震・設備基準のクリアが必要

 

3.相続土地国庫帰属制度で引き取ってもらう

2023年に始まった「相続土地国庫帰属制度」を活用すれば、相続した不要な土地を一定の条件下で国に引き渡すことが可能です。

申請には一定の要件を満たすことと、10年分の管理費用として負担金が必要になるため、事前に確認しておきましょう。審査を通過すれば、所有権と管理義務から解放されます。

「相続土地国庫帰属制度」で対象にならない土地は次のとおりです。

【申請自体ができない土地】

  • ・建物が残っている土地
  • ・担保権や使用収益権が設定されている土地
  • ・他人による使用が予定されている土地
  • ・土壌汚染が確認されている土地
  • ・境界が不明確、または権利関係に争いがある土地

【審査で不承認となる土地】

  • ・崖地などで管理に過度な手間や費用がかかる土地
  • ・地上に処分を妨げる物がある土地
  • ・地中に除去が必要な物がある土地
  • ・隣地との法的争いを要する土地
  • ・通常の管理に過分なコストがかかる土地

4.お金を払い、引き取り業者に引き取ってもらう

どうしても処分できない不動産は、有料で引き取りを行う不動産業者に依頼する方法もあります。費用がかかりますが、固定資産税や管理費が継続的にかかるよりは現実的な選択肢になり得ます。

ただし、業者によって条件や対応に差があるため、慎重な業者選びが必要です。

5.相続放棄する

負動産を相続したくない場合は、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うと、所有権や管理義務から解放されます。

ただし、特定の財産だけを選んで放棄することはできず、すべての相続財産を放棄する必要があります。相続放棄は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に申請が必要です。期限を過ぎると放棄できなくなるため注意しましょう。

また、放棄が正式に認められるまでの間は、民法に基づき一時的な管理義務が生じます。倒壊や事故を防ぐため、放置せずに必要最低限の管理を行う責任があるため、相続放棄をする際は、早めの判断と専門家への相談が重要です。

6.寄付する

不動産を国や自治体、公益法人へ寄付する方法もありますが、すべての土地が対象となるわけではありません。活用の見込みや管理負担の軽さなど、一定の条件を満たす必要があり、実際に寄付が受け入れられるケースはごく限られています。

田舎の山林などは、寄付が断られるケースが多く、寄付先の選定や事前相談が重要。また個人への無償譲渡では、贈与税が発生する可能性もあるため、事前に専門家に確認しておくと安心です。

負動産を売却・処分する4つの実践的な方法

「実際に負動産を手放すにはどうすればいいの?」という方も多いのではないでしょうか。ここでは実際に負動産を売却・処分するための4つの方法を紹介します。段階的に取り組むことで、売却や処分が難しいと思われていた負動産も、スムーズに手放せる可能性が高まります。

1.隣地の所有者に相談して売却を検討する

不動産の処分を検討する際は、隣地の所有者に声をかけてみるのが有効です。隣人にとっては隣地を買い取ることで、利便性や土地の活用幅が広がるメリットがあります。

隣人への声かけは手軽で現実的な選択肢として、まず検討しておきたい方法のひとつ。個人間取引は価格交渉が柔軟で、低価格や無償譲渡も成立しやすい一方、契約書の作成や登記、測量などの手続きが必要になるため、専門家に相談しながら進めるのが安心です。

2.不動産会社に仲介や買取を依頼する

不動産会社に買取や仲介を依頼するのは、不動産を処分する際の基本的な方法です。買取なら早期現金化が可能で、仲介なら幅広い買い手と出会える可能性があります。

市場価値が低い物件は対応不可な場合もあるため、複数社に査定を依頼し比較検討しましょう。最近では一括査定サイトも利用でき、効率的に売却の可能性を探ることが可能です。

相続した不動産をどうするか判断に迷っている方は、住栄都市サービスにご相談ください。

3.訳あり不動産買い取り業者に相談する

不動産会社で売却困難な訳あり不動産を所有している場合は、専門の買取業者に相談してみましょう。

事故物件や共有持分など、一般には敬遠されがちな物件でも、リノベや再販を前提に買い取ってくれる業者が存在します。ただし、相場より大幅に買取価格が安い傾向があるため、注意が必要です。

4.建物を解体して更地にし、売却する

建物が老朽化している場合は、解体して更地にすることで売却しやすくなることがあります。また、更地にすると再建築が可能になるため、購入希望者の幅が広がるパターンも。

ただし、解体費用が百万円〜数百万円かかる上、固定資産税の軽減措置が外れて税額が上がる点は気を付けたいところです。コストと売却価格のバランスを見て、専門家に相談しながら進めましょう。

家族に負動産を相続させないための対策

家族が負動産を相続してから慌てないためには、事前の準備が何より重要です。ここでは、生前からできる対策として「家族での相談」や「空き家バンクの活用」など、将来のリスクを回避する具体的な方法を紹介します。

生前に相談しておく

負動産をめぐるトラブルを防ぐには、生前からの対策と家族との話し合いが欠かせません。所有不動産の現状把握や登記情報の整理を行い、必要に応じて売却や修繕を検討することで、相続時の混乱を避けられます。

また、家族会議で相続の意向を共有し、専門家への相談やセミナー参加を通じて知識を深めておくと、将来的な負担を大きく軽減できます。今のうちから家族でオープンに話し合うことが、最良の対策です。

空き家バンクに登録する

空き家バンクとは、自治体やNPO法人が運営する空き家の売却・賃貸マッチング制度で、所有者と移住希望者をつなぐ仕組みです。

登録は無料または低額で、ポータルサイトにも掲載されるため、情報の拡散や契約支援、補助制度の活用も期待できます。ただし、買い手がすぐに見つかるとは限らず、対応自治体や条件も異なるため、事前の確認と併用手段の検討が大切です。

どこに相談すればいい?負動産問題の専門家

負動産の問題は一人で抱えず、早めに専門家に相談するのが解決の近道。ここでは、不動産会社・法律の専門家・自治体といった主な相談先と、それぞれの役割や特徴を紹介します。

不動産会社

まず検討したいのは、不動産会社への相談です。売却や買取の可能性を査定してもらえるのはもちろん、「更地にしたほうが良いか」「賃貸として活用できるか」といった選択肢を提案してくれるケースもあります。

特に、負動産のように扱いが難しい物件の場合は、対応実績のある会社を選ぶことが重要。立地や状態によっては取り扱いを断られることもあるため、複数の業者に相談するのがおすすめです。

弁護士・司法書士

弁護士や司法書士は、負動産に関わる法的トラブルの解決に欠かせない存在です。弁護士は、相続人間の対立や交渉代理、裁判対応など「争いごと」を含む案件に強く、司法書士は登記や相続放棄申述など「手続き・書類作成」の専門家として実務をスムーズに進めてくれます。

相続放棄や登記手続き、共有名義の整理、借地権の問題など、法律が絡むケースでは早めに相談をしましょう。

行政機関・自治体の空き家対策窓口

市区町村の役所や自治体には、空き家対策専用の相談窓口を設けていて、空き家バンクへの登録支援、解体費用の補助金制度、空き家管理サービスなど、地域密着の支援策が用意されているケースもあります。

自治体によって制度や支援内容は異なるため、まずは窓口へ問い合わせてみましょう。

負動産は放置せず、早めの対応と専門家への相談が重要

負動産は、所有しているだけで税金や維持費などの負担が続き、放置すると倒壊やトラブルのリスクが高まります。

相続後の対応には売却や放棄など複数の選択肢があるため、早めに方向性を決めることが大切です。判断に迷う場合は、不動産会社や専門家に相談して、適した解決策を見つけましょう。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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