【相続不動産】残置物があっても売却できる?起こりうるトラブルや処分方法を解説
2025.12.19

相続した家を片付ける際、残置物の対応に困ることもあるかもしれません。残置物とは、不動産を売却する際に存在する家電や家具などの物品やゴミのこと。これらは、
なるべく処分しておくのが基本です。
本記事では、相続した不動産に残置物があった場合の対処法について解説。売却時に残置物があることで起こりうるトラブルや処分の注意点についても紹介しています。
目次
相続した不動産の残置物とは

相続した不動産における残置物は故人の所有物であったもので、その所有権は相続人にあります。ここでは、残置物の基本について理解を深めましょう。
故人の所有物
残置物とは、以前の所有者や入居者が退去や死亡後に、不動産内に残した家具・家電・衣類などの生活用品や私物のことです。相続した不動産の場合は、故人が生前に使用していた家財道具や私物、つまり遺品が該当します。
残置物というと処分対象と捉えられがちですが、所有権は元の所有者にあります。そのため、勝手に廃棄・処分することは後々トラブルにつながることも。
ただし、相続した不動産の場合の所有権は相続人に移るため、相続人間で合意を得れば原則自由に処分が可能です。
不用品との違い
残置物と不用品の違いは、所有権の放棄があるかどうかです。残置物は元の所有者が置いていったもので、所有権は依然としてその所有者に残っています。
一方、不用品は所有権を放棄したもの。不用品は自由に処分できますが、残置物は前述のとおり、基本的に勝手に処分できません。
残置物は処分すべき?残っていても不動産の売却は可能?

不動産を売却する場合、残置物は原則処分する必要があります。ただし、買主の合意を得た場合や業者が買い取る場合は、そのまま売却することも可能です。ここでは、不動産売却時の残置物の対応について解説します。
売却するなら、原則処分が必要
不動産を売却する際は、残置物をできるだけ撤去してから引き渡すのが基本です。詳しくは後述しますが、残置物があると購入希望者の関心や売却価格にマイナスな影響を及ぼすことがあります。
やむを得ず残置物が残っていても売却は可能ですが、売却しづらくなる可能性があることは理解しておきましょう。
買主の合意を得た場合や、一括で業者が買い取る場合は処分不要
買主が了承したときは、残置物を残しておいてかまいません。特に残置物の中に比較的新しい家具や家電が含まれる場合、購入の負担が省けるため、買主から残してほしいと要望されることもあるでしょう。
また不動産買取業者の中には、残置物ごと買い取ってくれる業者もあります。自力で対処するのが難しい場合は、一括で買取を依頼するのも一つです。
【不動産売却】残置物があることで起こりうる5つのリスク・トラブル

不動産の売却時に残置物があると、リスクやトラブルを引き起こしかねません。ここでは考えられる5つの事象について紹介します。
1.内覧時の印象が悪くなり売却しづらくなる
残置物が多く残っていると、部屋の広さや設備の状態が正しく評価されにくくなり、管理が行き届いていない印象を与えてしまいかねません。その結果、売却自体が難しくなったり、価格交渉で不利になったりします。
残置物の量や状態によっては、不動産会社が売却依頼を断るケースもあるため、物件の印象を良くするために残置物は整理・撤去しておくことが重要です。
2.引き取る予定だった私物が勝手に処分される
残置物の中に後で売主が引き取る予定の私物があっても、売却時に伝わらず誤って処分されてしまい、取り返しがつかずトラブルにつながることがあります。特に価値のある骨董品や記念品などは、慎重な対応が必要です。
売主は売却前に、引き取るものと処分してよいものを事前に明確に分けておくことが大切です。写真や書面で管理しておくと、誤って処分されるリスクを減らせます。
3.所有権が不明瞭でトラブルになる
残置物の所有権は、売却後も基本的に売主にあります。買主は勝手に捨てたり使ったりできないため、対応に困ることになるでしょう。
売主側としても、前述のように誤って処分されると、損害賠償を起こさざるを得ないこともあるかもしれません。残置物があるまま買取る場合は、「所有権を放棄する」と明確な取り決めをしておく必要があります。
4.付帯設備の認識や取り扱いでトラブルになる
エアコンや照明器具などの付帯設備も、残置物としてトラブルになりやすいポイントです。特にエアコンは買主が残してほしいと希望することが多く、引き渡し時に取り外されたり、引渡後すぐに故障したりすると揉める原因になります。
売却前には、付帯設備の状態や年式を買主と一緒に確認し、契約書に「付帯設備付きであることや故障時の責任は負わない」と明記しておくことが重要です。
5.処分の手間や費用の負担でトラブルになる
家具や家電などの残置物を処分するには、多くの手間と費用がかかります。自治体の粗大ゴミ回収なら安く済みますが、予約が必要で時間がかかることも。一方、不用品回収業者に頼むと早い反面、数万円〜数十万円の費用がかかる場合があります。
このような費用や作業の負担をめぐって、「どちらが片付けるのか」「誰が費用を払うのか」といったトラブルに発展するケースは少なくありません。契約前に残置物の扱いや費用負担を明確に取り決めておくことが、揉め事を防ぐカギとなります。
相続した不動産の残置物を処分する方法

相続した不動産の残置物は自分で対応するか、業者に依頼して処分します。ここでは、2通りの方法について解説します。
自分で処分する
残置物の量がそれほど多くなく、時間や体力に余裕がある場合は、自分で片付けを進める方法もあります。自治体のごみ回収を利用すれば低コストで処分可能で、リサイクルショップやフリマアプリを使って売るのも一つの手。
ただし大型家具や家電は運搬が大変で、リサイクル料金がかかるケースもあります。自分で処分するのは思い出の品や貴重品の整理までにして、残りは専門業者に依頼するなど、無理のない方法を選びましょう。
業者に依頼する
残置物の量が多い場合や、遠方にあって自分で片付けるのが難しいときは、専門の業者に依頼するのがおすすめです。業者にまかせれば、仕分けから運搬、処分まで一括で対応してくれるため手間を大幅に減らせます。
ただし家財道具の処理費用は高くなりやすく、1Kで3〜8万円前後、3LDKでは15〜50万円程度かかるのが一般的です。作業内容や残置物の量によって金額は変動するため、複数の業者から見積もりを取って比較しましょう。
また悪質な業者による高額請求や不法投棄などのトラブルを防ぐため、「一般廃棄物収集運搬業」や「古物商」の許可を持っているかどうかもチェック。遺品整理を兼ねている場合は、供養や貴重品の仕分けにも対応できる遺品整理業者を選ぶと安心です。
相続した不動産の残置物を処分する際の注意点

残置物を処分するのは、遺産分割が終わってからにしましょう。ただし、相続放棄を選ぶ場合は、そもそも遺品整理はできません。ここでは、相続した不動産における残置物処分の注意点を解説します。
遺産分割が済んでから処分を進める
残置物の処分は、相続人全員での話し合いを終えて合意を得てから行うのが基本です。遺産分割が完了する前に勝手に処分してしまうと、「あの品は自分のものだったのに」とトラブルに発展しかねません。
遠方に住む相続人がいる場合は、写真やオンラインを活用して情報を共有しながら話を進めると安心です。相続財産の一部として扱う意識を持ち、遺産分割協議などの必要な手続きを済ませておきましょう。
相続放棄をする場合、遺品整理はできない
そもそも相続放棄を検討している場合、故人の遺品や残置物を勝手に片付けるのは避けましょう。相続放棄とは、プラスの財産も借金などのマイナスの財産も、一切引き継がないということ。
遺産を処分する行為は「相続を承認した」とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。ただし、思い出の写真や財産的価値のない「形見分け」の範囲であれば、問題ないことがほとんどです。
相続した不動産を売却するなら、残置物は速やかに撤去を

相続した不動産の売却において、残置物はできるだけ早く撤去するのが理想的です。自力で片付けるのが難しい場合は、業者を頼って進めると安心。残ったままだと買主とのトラブルにつながる可能性もあるため、売却を決めた時点で対処しましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
