土地の名義変更にかかる費用はいくら?理由別の違いや税金・節約方法
2025.11.11

土地の名義変更には登録免許税や必要書類の取得費用が必ずかかり、相続・売買・贈与など理由によって税金の種類や金額も変わります。一般的に数万円から十数万円が目安ですが、相続税や贈与税が課税されると負担が大きくなるケースも。
この記事では、名義変更に必要な費用の内訳から費用を抑える方法までわかりやすく解説します。
目次
土地の名義変更の費用は理由で変わる

土地の名義変更にかかる費用は一律ではなく、相続・売買・贈与・財産分与といった理由ごとに大きく変わります。
例えば相続では登録免許税が0.4%と低めですが、贈与や売買は2%が課され、さらに不動産取得税や贈与税などが加算されることもあります。離婚に伴う財産分与も同様に2%が必要です。どの理由で名義変更を行うかによって、費用総額は大きく変動します。
土地の名義変更にかかる費用や税金

土地の名義変更には、必ず発生する登録免許税や必要書類の取得費用に加え、売買・相続・贈与といった理由ごとに税金がかかる場合があります。
費用総額はケースによって大きく変動するため、自分の状況に当てはまる税金や実費を正しく把握しておくことが重要です。
登録免許税
土地の名義変更を申請する時に必ずかかるのが登録免許税です。金額は「固定資産税評価額×税率」で算出され、名義変更をする理由によって税率が変わります。例えば評価額2,000万円を相続で登記する場合、税額は8万円となります。
| 名義変更の理由 | 税率 |
|---|---|
| 相続 | 0.4% |
| 売買 | 2.0% |
| 贈与 | 2.0% |
| 財産分与 | 2.0% |
必要書類の取得費用
名義変更には住民票や印鑑証明書、戸籍謄本、固定資産評価証明書などの書類が必要で、それぞれ取得に数百円の手数料がかかります。相続では除籍謄本や改製原戸籍も必要になることが多く、合計で5,000円〜1万円ほどになるのが一般的。
自治体によって手数料は異なるため、あらかじめ必要な書類と費用を確認しておくことが、無駄な出費や時間のロスを防ぐポイントです。
| 必要書類 | 費用目安 |
|---|---|
| 住民票 | 1通200〜400円 |
| 印鑑証明書 | 1通200〜300円 |
| 固定資産評価証明書 | 1通200〜400円 |
| 戸籍謄本 | 1通450円 |
| 除籍謄本 | 1通750円 |
| 登記簿謄本 | 1通480〜600円 |
各種税金
土地の名義変更では、登録免許税の他にも理由に応じた税金が発生します。理由別の代表的なものは次のとおりです。
| 名義変更の理由 | 発生する主な税金 | 税率の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 相続 | 相続税(基礎控除超の場合) | 10〜55% | ・基礎控除=3,000万+600万×法定相続人 ・不動産取得税は非課税 |
| 売買 | ・不動産取得税 ・譲渡所得税 |
・不動産取得税:土地・建物3%、住宅以外4% ・譲渡所得税:短期39.63%/長期20.315% |
売却益が出た場合のみ譲渡所得税が発生 |
| 贈与 | ・不動産取得税 ・贈与税 |
・不動産取得税:土地・建物3%、住宅以外4% ・贈与税:最大55% |
・年間110万円を超える贈与に課税 ・生前贈与で注意が必要 |
| 財産分与(離婚) | 不動産取得税 | 土地・建物3%、住宅以外4% | 原則、相続税や贈与税は発生しない |
名義変更の理由ごとに課税内容が変わる点が重要です。特に相続では非課税の扱いがある一方、贈与は高額な贈与税がかかるケースが多いため注意が必要。
なお、農地の名義変更を行う場合は、通常の不動産登記に加えて農業委員会の許可が必要となるケースがあります。手続きの手間や費用が増える点も押さえておきましょう。自分のケースにどの税金が関わるのか、必ず確認してください。
相続税の税率は次の記事で詳しく紹介しています。
土地の名義変更を司法書士に依頼する場合の費用相場

土地の名義変更を司法書士に依頼する際の報酬は、一般的に5〜15万円程度が相場です。相続や贈与、売買など登記の種類や、相続人の人数、遺産分割協議書の有無によって費用は増減します。
司法書士ごとに報酬基準が異なるため、事前に複数の事務所から見積もりを取り比較することが大切です。多少の費用はかかりますが、複雑な手続きを正確に進められるため、安心感を重視するなら専門家に依頼するのが現実的な選択肢といえるでしょう。
土地の名義変更は誰が費用を払う?

土地の名義変更にかかる費用は、原則として新たな名義人が負担します。売買ではメリットを受ける買主が支払うのが一般的で、贈与や財産分与では当事者間の合意で決められることもあります。
相続登記では法律で決まりはなく、相続人同士の話し合いで分担方法を決定します。司法書士に依頼する場合は依頼者が報酬を支払いますが、実務上は不動産を取得する相続人が負担するケースが多いでしょう。
土地の名義変更は自分でできる?

土地の名義変更は、法務局で必要書類を揃えて申請すれば自分でも可能です。
司法書士に依頼するより費用を大きく抑えられる点がメリットですが、必要書類の収集、申請書の作成など専門知識を要する場面が多く、ミスがあれば修正や再提出が必要になります。
特に相続人が多い場合や書類が複雑なケースでは、時間や労力の負担が大きくなる傾向にあります。コストを抑えたい場合は自分での手続きも検討できますが、正確性を求めるなら専門家に依頼する方が安心です。
相続で土地の名義変更を自分でする際は次の記事も参考にしてください。
名義変更の費用を抑える方法

土地の名義変更には税金や書類取得費用、司法書士への報酬などが発生しますが、工夫次第で負担を軽減できます。免税制度の利用や書類取得の工夫、司法書士への依頼範囲の調整、自分での手続きなど、状況に合わせた方法を選ぶことが節約のポイントです。
登録免許税の免税措置を活用する
土地の名義変更で必ず発生するのが登録免許税ですが、条件によっては免税を受けられるケースがあります。
「被相続人が相続登記をせずに亡くなった場合」と「固定資産評価額が100万円以下の土地を相続する場合」は免税措置が適用されます(令和9年3月末まで)。売買での免税措置もあり、本来2.0%なのが1.5%に税率が軽減されます(令和8年3月末まで)。
制度を知っていれば余計な税負担を減らせるため、適用条件に当てはまるか確認しておくことが重要です。
必要書類の取得方法を工夫する
書類の取得費用は少額でも積み重なると数千円以上になるため、工夫次第で節約可能です。例えば、令和6年3月から始まった戸籍の広域交付制度を利用すれば、遠方の役所まで行かずに最寄りの窓口で全国の戸籍謄本をまとめて取得できます。
また、マイナンバーカードを使ったコンビニ交付サービスを利用すれば、役所よりも安く証明書を手に入れられることもあります。取得方法を工夫するだけで、時間と費用の両方を節約できるでしょう。
法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
司法書士への依頼範囲を限定する
司法書士に依頼する際も、すべてを任せず一部の作業を自分で進めれば費用を抑えられます。例えば、戸籍謄本や住民票などの書類収集を自分で行い、申請書の作成や法務局への提出だけを司法書士に依頼する方法です。
事務所によっては部分依頼を受け付けない場合もありますが、対応してくれるところなら報酬が軽減される可能性があります。自分でできる範囲を見極め、必要な部分だけ専門家に任せることが賢いコスト削減につながります。
自分で手続きを行う
司法書士に依頼せず、自分で名義変更の申請を行えば、報酬分の費用を大幅に抑えることが可能です。必要書類を収集し、登記申請書を作成して法務局に提出する流れ自体は誰でも挑戦できます。
ただし、相続人が多いケースや遺産分割協議書が必要な場合などは作業が複雑になり、書類不備でやり直しになるリスクも高まります。時間と労力を惜しまない人に向いている方法ですが、正確さを重視するなら部分的に司法書士を頼むのも現実的な選択です。
土地の名義変更は必要?放置するリスクとは

土地の名義変更を怠ると、過料の対象になるだけではなく、売却や相続の際に大きな支障が生じます。令和6年4月から相続登記が義務化され、相続から3年以内に手続きをしなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、登記名義人でなければ売却できないため、相続しても名義を変えていないと財産を自由に処分できません。
さらに、相続が重なると、権利者が増えて連絡が取れない相続人が出るなど、協議が複雑化します。場合によっては持分の差押えや第三者への売却リスクも発生し、思わぬトラブルを招きかねません。
土地を活用する予定がなくても、取得後は速やかに名義変更を済ませておくことが安全策といえます。
土地の名義変更は理由と費用を理解し、早めに手続きを進めよう

土地の名義変更は、相続・売買・贈与など理由によって必要な費用や税金が異なります。放置すれば過料やトラブルの原因となるため、早めに手続きを進めることが重要です。
登録免許税や司法書士報酬などのコストは工夫次第で抑えられるため、制度や免税措置を確認し、自身の状況に合った方法を選びましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。


