家の名義を亡くなった人のままにするのは危険|リスクやできること、相続登記の流れを解説
2025.11.11

家の名義を亡くなった人のまま放置すると、過料や相続人同士のトラブルなど、さまざまなリスクが発生します。2024年4月から相続登記は義務化されているため、迅速に手続きを行いましょう。
本記事では、家の名義を亡くなった人のままにしておくことのリスクや、できることとできないこと、相続登記の流れや費用、よくある疑問について解説します。
目次
家の名義を亡くなった人のままにしておくとどうなる?

「親が死亡してから、家の名義変更をしないとどうなる」など、相続した家の名義を変更せずに放置していることが心配という人も多くいます。まずは、家の名義を亡くなった人のままにしておくリスクを解説します。
相続登記の義務化で過料の対象になる
相続登記は2024年4月から義務化されているため、放置すると過料の対象になる可能性があります。これまで不動産の相続登記は任意でしたが、所有者が不明な土地問題の解消を目的として義務化されました。
不動産を取得したと知った日から3年以内に登記申請が必要となり、正当な理由がないのに申請を怠った場合は10万円以下の過料が科されます。この制度は2024年4月以前に発生した相続にも適用されます。
売却や担保設定ができなくなる
名義が故人のままだと、不動産の売却や担保利用ができません。不動産を売却したり、家を担保にローンを組んだりする際には、登記簿上の所有者と契約者が一致している必要があります。
名義が故人のままだと法的な所有者が不明確な状態とみなされるため、所有権移転登記等ができず、売買や融資の契約が結べません。手続きを進めるには名義変更が必須になるので、早めに対応しておく必要があります。
相続人が増えて合意形成が困難になる
長い年月放置しているうちに、相続人が増えるといった事態も考えられます。相続人が増えるほど遺産分割協議に時間がかかり、意見の対立も起こりやすい傾向。
対立で話し合いが停滞し、名義変更がさらに遅れると、時間だけではなく費用も増えてしまいます。
固定資産税や維持管理の負担が不明確になる
誰が代表して固定資産税や修繕費を負担するのかなど、税金や維持費の分担が不明確になるケースも考えられます。一部の相続人だけが税を払っていても、正式に所有権を持っているわけではないのでトラブルに発展してしまうかもしれません。
早期の名義整理は、家計管理や親族間の信頼関係を維持するためにも欠かせないと言えるでしょう。
家の名義が亡くなった人のままでもできること・できないこと

亡くなった人の名義のままの家に関して、できることとできないことははっきりと分かれています。
居住・家の解体はできる
亡くなった親の家に住むといったように、故人名義の家に相続人が住み続けることは可能です。固定資産税の納付書も通常どおり届くので、支払いも問題なくできます。
また、建物の解体も可能です。老朽化した家をそのままにすると倒壊リスクがあるため、安全管理のための取り壊しは妨げられません。ただし、業者との契約や行政手続きで相続関係の証明書提出が求められるので、相続人全員の合意が必要になります。
売却・担保設定・建て替えはできない
家や土地は、亡くなった人の名義のままだと売却・担保設定ができません。登記簿上の所有者が故人のままということは、法的に取引の主体となる人物が存在しない状態に該当するためです。売却や担保設定には法的な所有者である証明が必要なので、名義変更は必須になります。
また、将来的に所有者不明土地となり、制約やトラブルが発生するリスクがあるため、建て替えも同様に原則不可能です。
相続登記(名義変更)の流れ

亡くなった人の家の名義変更をするには、法務局に法的効力のある書類を提出して相続登記を行う必要があります。相続登記の流れとポイントを見ていきましょう。
1.相続人の特定と不動産の確認
相続登記を始めるには、相続人全員と対象の不動産を確認する事前準備が必要です。誰が相続する権利を持ち、どの財産が登記の対象であるかを確定しなければ次のステップには進めません。
まずは被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集して、相続人を特定しましょう。同時に、登記簿謄本や固定資産税の通知書などで不動産情報を確認しておきます。遺言書の有無もこのタイミングで確認しておくとスムーズです。
2.遺産分割協議と協議書の作成
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行って協議書を作成します。不動産の名義を変更するには、相続人全員の合意か、被相続人が生前に残した遺言書が必須です。
遺言書がある場合は、その内容に従います。遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、内容をまとめた協議書を作成して合意を証明しましょう。協議書には相続人全員が署名押印し、印鑑証明書を添付して相続人全員の意思の確認をする必要があります。
3.登記申請書と必要書類の作成
権利者が確定したら、法務局に提出するための登記申請書と必要書類を作成します。登記は法的手続きなので、申請書には正確な情報と証拠書類を添付し、内容の正当性を証明しなくてはいけません。
申請書に加え、収集した戸籍謄本、遺産分割協議書(または遺言書)、そして登録免許税の算出に必要な不動産の固定資産評価証明書などを揃えましょう。書類に不備があると申請が受理されないので、記載事項と添付書類の確認は漏れのないよう慎重に行うのがポイントです。
また、代理人に依頼する場合は委任状も必要です。
4.法務局への申請書提出
作成した書類一式を管轄の法務局に申請し、登記を完了させます。申請は窓口・郵送・オンラインで可能です。審査を経て登記が完了すると、新しい所有者に登記識別情報通知書が交付されます。
1から4の流れを完了することで、初めて相続人名義が正式に反映されて売却や担保設定などが可能になります。
家の名義を亡くなった人から変更するのに必要な費用

相続登記には主に3種類の費用がかかります。相続人の人数や司法書士への依頼有無によって金額が変わるため、事前に目安を把握しておくと安心です。
登録免許税
相続登記には登録免許税が必ず発生します。登録免許税は不動産の名義を法的に書き換えることに対する税金であり、納付しないと申請を受理してもらえません。
税額は、原則として対象となる不動産の固定資産評価額に対して0.4%を乗じた金額で算出されます。税額のベースとなる固定資産評価額を確認するために、事前に評価証明書を準備するのがおすすめです。
必要書類の取得費用
戸籍や住民票、印鑑証明書の取得にも費用がかかります。公的書類の発行手数料は地域によっても異なりますが、1通数百円程度です。ただし、相続人が多いと合計で1万円以上になる場合も考えられます。
| 書類 | 1通あたりの目安 |
|---|---|
| 戸籍謄本 | 450円 |
| 除籍謄本・原戸籍謄本 | 750円 |
| 住民票 | 200~300円 |
| 印鑑証明書 | 200~300円 |
| 固定資産評価証明書 | 300円前後 |
公正証書で遺産分割協議書を作成する場合は、上記に加えて3~10万円ほどかかります。
司法書士報酬
司法書士に手続きを代行してもらう場合は、報酬が必要です。報酬額は依頼する不動産の数や評価額、相続人の人数、手続きの複雑さなどで変動しますが、一般的に数万円から数十万円程度が目安と言われています。
自分で対応するのが難しいときは、専門家報酬を見込んで予算を組むと良いでしょう。
亡くなった人の家の名義変更に関するよくある疑問

相続登記の期限や専門家に依頼した方が良いのか迷うなど、家の名義変更に関する疑問はさまざま。名義変更に関してよくある疑問を紹介します。
家の名義変更は死亡からいつまでにすれば良い?
2024年4月1日以降、相続登記(名義変更)には「相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内」という申請期限が設けられ、義務化されています。
以前は期限の定めがありませんでしたが、所有者不明の土地が増加する社会問題の解決を図るために不動産登記法が改正されました。
例えば親が亡くなった場合、死亡を知った日から3年以内に登記をする必要があります。遺言や遺産分割協議によって不動産の取得が決まった場合も、権利が確定した日から登記の申請義務が発生します。
正当な理由がないまま期限を過ぎてしまうと、10万円以下の過料が科される可能性があるので迅速に手続きをしましょう。
専門家に依頼した方が良いケースは?
手続きが複雑になることが予想される以下のような場合は、弁護士や司法書士などの専門家への依頼を検討してみましょう。
- ・必要書類が膨大で取り寄せに時間がかかる場合
- ・遺産分割協議が複雑で合意形成が難しい場合
- ・不動産が遠方で、法務局へ出向くのが難しい場合
- ・不動産を早急に売却したい場合
専門家は、法的な知識と経験に基づいて正確かつ迅速に手続きを進めてくれます。精神的・時間的な負担を避けたかったり、手続きに不安を感じたりするなら専門家を頼るのがおすすめです。
名義変更前でも売却の相談はできる?
売却自体は名義変更を行わないとできませんが、相談だけであれば亡くなった人の名義のままでも可能です。査定額や売却にあたっての問題があるかなど、気になる場合は相談依頼をしてみると良いでしょう。
また、名義変更の手続きを代行してくれる不動産会社も存在します。住栄都市サービスでは、相続登記や名義変更などに必要な書類の収集や登記申請の代行も可能です。相続に関するトラブルや権利についても専門弁護士に相談ができるので、ぜひ一度お問い合わせください。
相続した不動産の相談は住栄都市サービスへ
家の名義は亡くなった人のままにせず相続登記を

家の名義を亡くなった人のまま放置すると、不動産の活用や将来の相続手続きが大きく滞ります。相続登記を早めに進めれば、売却や担保設定などがスムーズに行えるため、選択肢が広がるでしょう。
相続登記の流れを理解し、必要であれば専門家に相談するなど、早めに名義変更することをおすすめします。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
