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相続した土地の売却に伴う税金とは?土地の売却までの流れや注意点を解説

2025.09.09

親から相続した土地について、「使う予定がない」「管理が負担になる」といった理由で売却を検討する方は少なくありません。しかし、相続した土地を手放す際には、税金の種類や売却の進め方、タイミングなど、事前に押さえておくべきポイントがあります。

この記事では、相続した土地を売却する際に発生する主な税金、売却までの手順、そして注意点についてわかりやすく解説します。

相続した土地を売却するとかかる税金とは

相続した土地を売却すると、いくつかの税金が発生します。主な税金は次のとおりです。

相続税

相続税は、土地や建物、現金などの財産を相続した際に課税される税金です。課税額は、相続する財産の総額や相続人の人数などによって異なります。土地の売却前に発生し、相続開始から10ヶ月以内に申告と納税が必要です。

相続税の計算方法を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

譲渡所得税

相続した土地を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その金額に応じて課税されるのが譲渡所得税です。ただし、譲渡所得がマイナスであれば課税されません。

譲渡所得=土地の売却価格―(土地の取得費用+譲渡費用)
譲渡所得税=譲渡所得×税率(所有期間によって異なる)

税率の所有期間の判定は、売却した年の1月1日時点での年数で決まります。例えば、相続した土地を5年以内に売却すると「短期譲渡所得」に該当します。

区分 土地の所有期間 所得税 住民税
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年を超える 15% 5%

登録免許税

登録免許税は、相続登記などで土地の名義を変更する際に課税されます。計算式は以下のとおりです。

登録免許税=固定資産税評価額×税率(0.4%)

固定資産税評価額は、固定資産税納税通知書で確認できます。

印紙税

土地の売買時には、印紙税が発生します。土地の売買契約の際に必要な売買契約書に、印紙を貼ることで納付します。印紙代は、契約書に記載された売買価格に応じて変動するので注意しましょう。

以下の記事では、不動産の売却時にかかる税金について、シミュレーションをしています。ぜひ参考にしてみてください。

相続した土地を売るタイミングはいつがいい?

土地を相続した後、すぐに売却した方が良いケースと、様子を見た方が良いケースがあります。それぞれのケースについて詳しく説明していきます。

すぐに売却した方が良いケース

次のようなケースでは、できるだけ早めの売却を検討した方が良いでしょう。

1.相続税の納付が必要
相続税の納付が必要な場合、相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に売却するなど、一定の要件を満たせば「取得費加算の特例」を適用できる場合があります。この特例を使えば、税負担を軽減できます。

2.納税資金が不足している
相続税を現金で納める必要があるときは、土地を売却して現金化するのが有効な方法です。

3.土地を活用する予定がない
土地を所有していると毎年固定資産税や維持費などの費用がかかってきます。そのため、使わない土地は早めに手放すのがおすすめです。

4.遺産分割が難航している
複数人で土地を相続する場合には、すぐに売却する方が良い場合があります。分割が難しい土地を現金化することで、遺産分割をよりスムーズに進めることが可能です。

すぐに売却しなくて良いケース

次のような状況であれば、すぐに売却しないで様子を見ても良いかもしれません。

1.相続税がかからない
相続税が発生しない場合には、取得費加算の特例を利用できません。そのため、土地の売却時期に制限はありません。

2.土地を活用する予定がある
将来的に土地の活用を考えている場合は、土地を所有したままでも問題ないでしょう。地価の上昇が見込めるなら、少し待つことでより高く売れるかもしれません。

3.遺産分割が円滑に進んでいる
遺産分割がスムーズに進み、トラブルの心配がない場合、焦って土地を売る必要はありません。あなたにとって一番良いタイミングで売却を進めましょう。

土地の相続から売却までの流れ

相続した土地を売却するまでの流れを説明します。

1.遺言書を確認する

遺産相続が発生したら、まずは遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合、原則はその内容に従って相続の手続きを進めます。遺言書がなく、相続人が複数人いる場合には、後述する遺産分割協議を行います。

2.相続財産・相続人を確定する

相続手続きを進めるためには、被相続人が残した財産の内容と相続人をはっきりさせる必要があります。土地や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も調べ、遺産総額を把握します。また、被相続人の戸籍謄本を取得することで、法定相続人の人数を確定できます。

3.遺産分割協議を実施する

複数人の相続人がいる場合、相続人全員で「誰がどの財産を受け継ぐか」を話し合います。これを遺産分割協議と呼びます。協議の内容がまとまったら、その結果を遺産分割協議書にまとめます。

4.相続登記・相続税を申告する

遺産分割が決まったら、相続した土地の名義を変更する相続登記を行います。2024年4月からは相続登記が義務化され、相続開始から3年以内に手続きを完了する必要があります。

また、相続税が課税される場合は、相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行わなければなりません。

5.相続した土地を売却する

土地の名義変更が完了したら、不動産会社に査定を依頼するなど、売却に向けた準備を始めましょう。売却の流れは、一般的な不動産取引と同じで、価格交渉・契約・引渡しの手順を踏みます。

6.売却後に確定申告をする

土地を売却して利益が出た場合は、確定申告が必要です。売却した翌年の2月16日から3月15日の間に申告を済ませましょう。特別控除などの税制優遇を受けるためにも、忘れずに申告してください。

相続した土地を売却する際の注意点

土地の売却をスムーズに進めるために、次のポイントを押さえておきましょう。

売却前の相続登記は必須

相続した土地が被相続人名義のままでは、売却できません。相続登記の手続きには時間がかかるため、早めに着手しましょう。相続登記の期日を過ぎてしまうと過料の対象となることがあるので注意が必要です。

共有名義の場合は全員の同意が必要となる

土地を兄弟などと共有名義で相続した場合、共同名義人全員の同意がなければ売却できません。一人でも反対すると手続きが進まず、トラブルに発展することもあります。

そのため、可能であれば共有名義での相続は避け、すでに共有名義の場合は単独名義への変更を検討しましょう。

相続から3年以内の売却で利用できる特例がある

相続した土地を3年以内に売却する場合は、以下の2つの特例を利用できる場合があります。

1)相続税が課税されている場合、「取得費加算の特例」
2)空き家を取り壊して売却する場合、「相続空き家の3,000万円特別控除の特例」

いずれも適用にはいくつかの要件があるため、事前に専門家に相談することをおすすめします。詳しくは以下の記事をチェックしてみてください。

土地の売却前に、税金について知り、節税になる売却タイミングを知っておこう

相続した土地の売却時には、相続税・譲渡所得税・登録免許税・印紙税など、複数の税金が関わってきます。土地の売却時期によっては税額や適用できる特例が変わるため、節税につながる売却のタイミングを見極めることが重要です。

不明点や不安がある場合は、専門家への相談も検討してみてください。事前に情報を整理し、計画的に売却を進めていきましょう。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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