不動産査定書の基礎知識|有料と無料の違いやチェックポイントを解説
2025.09.09

不動産査定書とは、不動産の査定結果を示す書類のことです。不動産会社が作成する無料の査定書と、不動産鑑定事務所が作成する有料の査定書があります。
本記事では、不動産査定書の基本と確認すべきポイントを解説します。信頼できる不動産会社を探す鍵にもなるので、ぜひ最後までチェックしてくださいね。
目次
不動産査定書のきほん

不動産査定書には不動産の査定結果が記載されており、不動産会社は無料、不動産鑑定事務所は有料で作成依頼ができます。ここでは、不動産査定書の基本を理解していきましょう。
査定結果が記された書類
不動産査定書とは、不動産の査定結果が記されている書類のことです。売却価格の見積もりやその根拠、物件情報などが記載されています。
また不動産査定書には、不動産会社が作成する査定書と不動産鑑定事務所が作成する査定書の2種類があります。
有料と無料の違い
先述のとおり不動産査定書には2種類あり、不動産会社が作成する査定書は無料、不動産鑑定事務所が作成する査定書は有料で依頼できます。両者の主な違いは以下のとおりです。
不動産会社が作成する査定書 | 不動産鑑定事務所が作成する査定書 (不動産鑑定評価書) |
---|---|
・依頼費用:無料 ・利用目的:売却 ・作成者:誰でもよい ・公的な書類として利用不可 |
・依頼費用:有料 ・利用目的:裁判・交渉・相続・企業の不動産価値の把握等 ・作成者:不動産鑑定士 ・公的な書類として利用可能 |
なお、不動産鑑定事務所で売却利用のみの査定書を作成してもらうことも可能です。その場合は不動産鑑定評価書よりも割安で作成できます。とはいえ、一般的な不動産売却では、無料の不動産査定書で問題ありません。
記載項目
誰でも作成できる不動産査定書には規定の様式はありませんが、主に以下の項目が記載されています。
- ・不動産情報:土地面積や建物の種類など
- ・査定価格
- ・査定価格の根拠:築年数・リフォーム状況・耐震性など
- ・査定価格の算出方法
- ・補足情報:不動産市況や類似物件事例など
不動産会社に査定を依頼するには?

不動産査定の依頼方法は、机上査定と訪問査定の2種類あります。査定は最寄りの不動産会社に訪問するか、電話やインターネットからも申し込みが可能。
机上査定は不動産情報だけで査定額を算出する方法で、簡易的なため査定額はあくまで目安となります。一方、訪問査定は担当者が実際に現地に出向き、物件を調査したうえで算出する方法です。机上査定よりも詳しい査定結果を知りたい場合に有効といえます。
なお複数の不動産会社を比較する場合は、一括査定サイトを利用すると便利です。
不動産の査定に必要な書類

不動産の査定では、主に以下の書類をあらかじめ準備しておくと依頼しやすくなります。
- ・登記簿謄本
- ・登記済権利証または登記識別情報通知書
- ・リフォームや修繕履歴がわかる書類
- ・確定測量図
- ・身分証明書
- ・不動産購入時のパンフレット等
リフォーム履歴やパンフレットなどは、不動産の価値を高める要素として有効です。
なお、必ずしも上記書類が揃っていなくても、不動産の査定依頼はできます。特にインターネットによる一括査定は、物件のおおまかな面積や間取り、築年数などがわかれば査定結果を出してもらえます。
不動産査定書のチェックポイント5つ

不動産査定書を受け取ったら、正しく情報が記載されているか、根拠のある適正な査定額に設定されているかなど細かくチェックすることが大切です。ここでは、不動産査定書で確認すべきポイントを5つ解説します。
1.不動産の基本情報に誤りはないか
まずは査定対象となる不動産の住所、面積、築年数などの基本情報に間違いがないかを確認しましょう。査定額の根拠となる重要な情報のため、記載ミスがあると正しい評価がされない可能性も。
特に、相続した物件や長年空き家だった物件は、登記内容と実際の状況に相違があるケースもあるため注意が必要です。
2.査定額が適正であるか
複数の不動産会社に査定を依頼している場合は、それぞれの査定額を比較し、相場と照らし合わせて適正であるかをチェックするのがポイントです。価格に大きな差がある場合は、その根拠や背景を確認しましょう。
極端に高い査定額の場合、契約を取るために現実離れした金額を提示している可能性もあるので要注意。またローンが残っている場合は、一番低い査定額でも返済が可能か確認しておくと安心です。
3.査定額に根拠はあるか
査定額がなぜその価格になったのか、根拠が明記されていることも重要です。根拠がなければ、実際に売却を進めても査定額どおりに手続きできない可能性があります。
築年数やリフォーム履歴、周辺環境など、査定に影響する要素の評価を確認しましょう。実際に近隣で成約した類似物件の事例を提示してもらうのも有効です。
4.書面が見やすいか
不動産査定書の見やすさは、不動産会社の対応姿勢に直結します。レイアウトが見やすいか、情報が整理されているか、専門用語がきちんと説明されているかどうかをチェックしてみてください。
逆に内容が雑だったり、テンプレ感が強かったりする場合は、買主への説明にも不安が残り、売却活動に支障が出る可能性があります。
5.査定担当者のコメントは丁寧か
査定担当者からのコメント欄も大切なチェックポイントです。物件の強みや注意点、売却戦略に触れているかどうかで、対応の丁寧さを図れます。リフォーム済みの物件であれば査定額に反映されているかや、売り出し価格の提案などがあると理想的。
一方、リスクやマイナス面を全く書いていない場合は要注意です。メリット・デメリットの両方を伝えてくれる会社なら信頼できるでしょう。
不動産査定書についてよくある質問

ここでは、不動産査定書についてよくある質問に回答します。
1.不動産査定書はどこでもらえる?
不動産査定書は、不動産会社もしくは不動産鑑定事務所からもらえます。前述のとおり、売却目的で無料の査定書であれば不動産会社が作成してくれます。相続や裁判手続きに必要な公的な査定書の作成は、不動産鑑定事務所の役割です。
なお、宅建協会(全国宅地建物取引業協会)は、全国各地に事務所を持つ不動産団体ですが、不動産査定書は作成してもらえません。
2.不動産査定書の依頼はなぜ無料でできるの?
不動産査定書を無料で作成してもらえるのは、不動産会社にとって査定が「売却活動を任せてもらうための営業活動」の一環だからです。不動産会社は査定をきっかけに、仲介や買取の依頼につながることを期待しています。
また法律でも、不動産会社は売買契約後に仲介手数料をもらう規定になっているため、査定のみの費用は請求できない仕組みになっています。
3.不動産査定書は作成ツールやエクセルで自分でも作れる?
売却のみで利用する不動産査定書には決まった様式がないため、エクセルや作成ツールを利用して自由に作れます。
ただし、不動産情報を整理して自分で作成するのは難しいことも。不動産会社に依頼すれば無料で作成してもらえるので、プロに依頼するのが安心です。
不動産査定書について理解を深め、売買手続きに役立てよう

不動産の査定結果が記載されているのが不動産査定書です。不動産売買のみで取得したい場合は、査定を担当した不動産会社が無料で作成してくれます。査定額や記載内容をよく確認して信頼できる会社を見極め、適切に売買手続きを進めましょう。
相続した不動産の売却を検討している方は、住栄都市サービスまでお気軽にご相談ください。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
