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相続税申告が不要なのはどんなとき?必要なケースや注意点もわかりやすく解説

2025.09.12

相続税の申告が不要なのは、正味の遺産総額が基礎控除額を下回ったときです。ただし相続税がかからない場合でも、申告が必要なケースもあります。

本記事では相続税申告が不要なケースと必要なケースについて解説。申告要否を見極める際の注意点や、しなかった場合にどうなるかについても紹介しているので、最後まで読んで正しい知識を身につけましょう。

相続税申告が不要なのはどんなとき?

相続税申告が不要なのは、正味の遺産総額が基礎控除額以下だった場合です。正味の遺産総額とは、課税対象となる相続財産の総額のこと。現金や預貯金、不動産や自動車、有価証券や株などのプラスの財産から、債務や葬式費用等のマイナス財産を差し引いた金額です。

基礎控除額とは、一定の金額までであれば相続税がかからない非課税ラインのこと。「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で算出します。

例えば、相続人が配偶者と子ども2人だった場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。この家族の場合、正味の遺産総額が4,800万円以内であれば、相続税はかからず申告も必要ありません。

相続税がかからなくても申告が必要なケース

相続税がかからない場合でも、申告が不要とは限りません。ここでは、相続税が発生しなくても申告すべきケースについて詳しく解説します。

小規模宅地等の特例を適用した場合

小規模宅地等の特例を使いたいときは、相続税の申告が必要です。この特例は、亡くなった方が住んでいた土地や事業で使っていた土地を相続した場合、相続税評価額を最大80%減額できる制度です。相続税を算出する評価額を大幅に下げられるため、活用することで税金負担を軽減できます。

同特例は相続税の申告をしないと適用できません。特例を使いたい場合は、相続税の申告期限である相続開始の翌日から10ヶ月以内に必ず申告書を提出しましょう。

配偶者の税額軽減を適用した場合

配偶者の税額軽減を適用する際にも相続税の申告が必須です。配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が財産を相続した場合、「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額までは相続税がかからない制度。配偶者の税負担を大きく軽減できます。

特例を適用するには、小規模宅地等の特例同様、相続税の申告期限までに申告書を提出しましょう。

遺産分割協議が成立していない場合

遺産分割協議がまとまっていない場合でも、相続税の申告期限までに仮の申告と納税が必要です。遺産分割協議が終わっていなければ、そもそも小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などを適用できません。

このようなケースでは、一旦「法定相続分どおりに相続した」と仮定して申告書を作成し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に提出します。その後3年以内に遺産分割がまとまれば、改めて申告をやり直すことで特例の適用を受けられます。

その他に申告必要なケース

先述した特例のほか、以下の特例を適用したい場合にも相続税の申告が必要です。

農地の納税猶予の特例
被相続人から農地を取得し、農業を継続・特定貸付等を行う場合に納税が猶予・免除される

特定計画山林の特例
特定計画山林にあたる山林を相続した場合、相続税の課税価格を減額できる

財産を公益法人などに寄付した場合の特例
相続や遺贈で取得した財産を国や地方公共団体、公益法人などに寄付した際の金額は非課税となる

相続税の申告が不要か見極める際の注意点3つ

相続税の申告が必要かどうかを見極める際、財産を正確に評価できているかよく確認しましょう。また生前贈与を受けている場合、相続時精算課税制度を利用していないか、相続開始前3年以内に贈与されていないかも注意が必要です。

1.財産の正確な評価ができているか

相続税の申告が必要かどうかを判断する際、相続財産を見落としなく正確に評価できているかが大切です。適当に計算したり、家族でも知らない財産があったりすると、思いのほか遺産総額が高くなり基礎控除額を超えることも。

特に、以下のような財産には要注意です。

  • ・名義預金
  • ・みなし相続財産
  • ・不動産
  • ・非上場株
  • ・美術品

名義預金とは、被相続人が配偶者や子どもなどの名義で口座を開設し、被相続人が管理している預金のこと。みなし相続財産とは、死亡保険金や生命保険金などのことです。一見、被相続人の財産ではないと思ってしまいそうですが、忘れずに遺産に含めましょう。

2.相続時精算課税制度を利用していないか

相続時精算課税制度を利用して生前贈与を受けていた場合、たとえ相続財産が基礎控除額以下でも、相続税の申告が必要になるケースがあります。

相続時精算課税制度とは、贈与時に最大2,500万円まで贈与税を猶予しておき、相続が発生したときにその贈与分を相続財産に加えて相続税を計算する仕組みのこと。

生前贈与を含めた財産の合計が、相続税の基礎控除額を超えると、相続税の申告が必要になります。なお、相続税がかからない場合、すでに支払った贈与税が戻ってくることも。相続税精算課税制度を使った贈与がある場合は、正しく申告することが大切です。

3.相続開始前3年以内に生前贈与を受けていないか

相続開始前3年以内に生前贈与を受けていた場合、相続税の申告が必要になる可能性があります。贈与された金額も加算したうえで遺産総額を計算しなければならないからです。

例えば、亡くなった親から毎年100万円ずつ生前贈与を受けていた場合、死亡の3年以内の贈与であれば合計300万円が相続財産に持ち戻しされることに。贈与税が非課税である年110万円以下の贈与も持ち戻し対象となるため、留意しておきましょう。

なお、2023年までは「相続開始前3年以内」の贈与が対象でしたが、2024年1月1日以降に行う贈与から「相続開始前7年以内」までが対象となります。

相続税の申告が必要なのにしなかったら?起こりうるリスクとは

相続税を申告しなければならないにも関わらず、申告しなかった場合、以下のようなペナルティが課される可能性があります。

  • ・延滞税:期限から納付日までの日数に応じて課される
  • ・無申告加算税:状況に応じて相続税額の5〜20%課される
  • ・重加算税:意図的に相続財産を隠蔽した場合などに課される
  • ・過少申告加算税:本来の税額より少なく申告した場合に課される

税負担がさらに増加しないよう、期限内に正しく計算して必要に応じて申告することが重要です。申告要否の判断には、国税庁が運用する「相続税の申告要否判定コーナー」を目安として活用してみるのもよいでしょう。

不安がある場合は専門家に相談を

遺産が複雑で相続税を自分で計算するのが難しい場合や、計算に不安がある場合は、専門家に相談すると安心です。申告に誤りがあれば、先述のとおり税務署からペナルティが課される可能性があります。

税理士に相続税申告を依頼することで、適切に財産評価を行ってもらうことが可能です。控除や特例を活用し無駄な出費を抑えられるだけでなく、自分で手続きする手間も省けます。

なお、税理士に依頼した場合の報酬は、遺産総額の0.5〜1.0%が一般的。必要に応じて専門家の力を借りながら、正しく相続税申告を進めましょう。

正味の遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税の申告は不要

相続税の申告が必要なのは、正味の遺産総額が基礎控除額を上回ったときです。ただし特例を適用する場合など、一定の条件下では相続税がかからなくても申告する必要があります。

相続税申告の必要性を見極める際は、生前贈与に注意しながら遺産総額を正しく評価しましょう。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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