共有名義の不動産を売却するには?売却方法やトラブルを避ける対処方法を紹介
2025.09.29

不動産を取得した際、複数人で共有名義にするケースは珍しくありません。そうした共有名義の不動産を売却したいとき、どのような方法があるのか、トラブルを防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
この記事では共有名義の不動産について解説し、売却方法や想定されるトラブル、トラブルを避けるための対処方法について紹介します。
目次
不動産の共有名義とは

不動産の共有名義とは、土地や戸建ての家など、ひとつの不動産を複数の人が共同で所有している状態のことです。それぞれの所有者は「共有持分」と呼ばれる割合に応じて権利を所有しています。
この持分は、不動産の購入時の出資比率、相続における法定相続分、あるいは遺産分割の合意などを基に決定。各共有者は自分の持分に応じて、利用や売却などに関する一定の権利を有しています。
共有名義と単独名義の違い
単独名義の場合、不動産の売却などは所有者一人の判断で行えます。一方、共有名義では不動産全体を売却するには、原則として全員の同意が必要です。そのため、意見が合わなければ売却がスムーズに進まず、トラブルになる可能性もあります。
共有名義になる主なケース

共有名義になるケースは主に次の2つです。ここではそれぞれのケースについて詳しく紹介します。
1.相続により不動産を取得した場合
遺産相続する際に、不動産は現金のように簡単に分けられないため、相続人が複数いるときは共有名義で登記されるケースがあります。
たとえば、亡くなった親が所有していた実家をきょうだい4人で相続した場合が当てはまります。4人の相続人が平等に不動産を共有する場合、持分はそれぞれ1/4です。
2.夫婦で不動産を購入した場合
夫婦でマンションや住宅を購入する際、出資割合に応じて共有名義で登記するケースがあります。また、一人では希望する額の住宅ローンの審査が通らない場合でも、夫婦で共同名義にすることで融資を受けやすくなることもあります。
共有名義のメリット

共有名義で住宅ローンを組んだ場合、名義人それぞれが条件を満たせば、住宅ローン控除を受けられます。さらに、居住用財産を売却する際には、一定条件を満たすことで、名義人ごとに3,000万円の特別控除(居住用財産の譲渡所得の特例)を適用できる可能性があります。
これらの控除を利用するためには、必要書類を用意し、それぞれ確定申告を行うことが必要です。
共有名義の不動産を売却する方法

共有名義の不動産でも売却可能ですが、その方法は大きく4つに分かれます。それぞれについて説明していきます。
共有者全員の同意を得て売却する場合
不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が不可欠です。たとえば、きょうだい3人で共有名義になっている実家を売却したい場合、1人でも反対すれば売却はできません。相続などにより共有者の数が多いと、全員の意思確認が難しくなり、この方法による売却が困難になることもあります。
他の共有者に売却する場合
他の共有者の同意が得られない場合でも、自分の持分だけを売却することは可能です。ただし、自分の持分のみの売却は買い手が見つかりにくく、価格が下がる傾向があります。そのため、他の共有者に買い取ってもらう方法が現実的です。
なお、極端に安い価格で売ると贈与税の課税対象となる場合があるため、注意が必要です。
自分の持分を第三者に売却する場合
自分の持分を買取専門業者などに売却することも可能です。すぐに現金化したい場合や共有者との話し合いが難しい場合の選択肢となります。しかし、後々トラブルになるケースも多いため、慎重な判断が求められます。
土地を分筆し、単独名義にして売却する
共有名義の不動産が土地の場合、自分の持分の割合で分筆して単独名義にできれば、持分部分のみの売却が可能になります。ただし、分筆には測量などの手続きや費用が必要です。物理的・法的に分筆できない土地もあるので、まずは分筆が可能かどうか専門家に相談しましょう。
共有名義の不動産売却時に必要な書類

共有名義の不動産を売却する場合に必要な書類は以下のとおりです。通常の不動産売却時に必要な書類と大きな違いはありません。
必要書類一覧
- ・登記済権利証または登記識別情報通知書
- ・土地測量図・境界確認書(必要に応じて)
- ・共有者全員の身分証明書・住民票
- ・共有者全員の印鑑証明書・実印
相続や離婚により、登記内容と実際の所有者が一致していない場合があります。売却前に登記簿謄本を取得し、最新の登記情報を確認することが重要です。
共有名義で起こりやすいトラブル

共有名義の不動産は複数人が関与するため、売却する際にさまざまなトラブルが生じるリスクがあります。共有名義の不動産で起こりやすいトラブルについて、代表的な4つのケースを紹介します。
共有者と連絡が取れない
共有名義の不動産でよく起こるトラブルのひとつが、「共有者が誰かわからない」「連絡が取れない」というケースです。相続登記が長期間放置されていた場合、相続人が多数になり、所在不明や連絡不能となることがあります。このケースでは共有者全員の意思確認が困難となり、売却が難航する可能性があるでしょう。
共有者の一人が売却に反対する
共有者のうち一人でも不動産の売却に反対すれば、不動産全体の売却はできません。話し合いがこじれてしまった場合、人間関係の悪化や売却の長期化を招くおそれがあります。
買取業者による売買を持ちかけられる
共有者の一人が持分を買取業者に売却してしまった場合、その業者が新たな共有者となります。業者は投資や再販を目的としているので、他の共有者に売却などを強く求めてくることがあります。トラブルに発展する可能性もあり、慎重な対応が必要です。
共有物分割請求が起こされる
共有状態を解消するため、他の共有者に対して裁判を起こすことを共有物分割請求といいます。話し合いで解決しない場合や持分の売買が難航した場合に、共有者または買取業者がこの裁判を起こすことがあります。
裁判所の判断により、不動産の売却が強制的に実行される可能性があるため注意しましょう。
共有名義に伴うトラブルを避ける方法

共有名義に伴うトラブルを避けるために、以下の対策を検討しましょう。
遺産相続の際に共有名義を避ける
遺産相続の際に不動産を共有名義にしないことは、将来のトラブルを防ぐうえで非常に有効です。共有を避けたい場合は、次のような方法を検討するとよいでしょう。
現物分割:土地を分筆し、単独で相続する
代償分割:1人が不動産を取得し、他の相続人に代償金(現金)を支払う
換価分割:不動産を売却し、売却益を相続人で分ける
共有を避けることで、後の合意形成や売却時のトラブルを未然に防げます。
名義の共有状態を解消する
すでに共有名義になっている場合でも、話し合いにより売却や持分譲渡を進め、早めに共有状態の解消を目指しましょう。協議が難航する場合は、地方裁判所に共有物分割請求を行い、法的に解決することも可能です。
とはいえ、法的手続きに発展する前に、専門家への相談や話し合いによる解決をおすすめします。
共有名義の不動産は早めに売却・共有状態を解消しよう

共有名義の不動産は、共有者全員の同意が得られない場合でも、自分の持分だけを売却できます。ただし、通常の不動産売買とは異なり、買い手が限られる上、トラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。
できるだけリスクを避けるためにも、共有者同士で早めに話し合い、売却や名義の整理など、共有状態の解消を前向きに検討することをおすすめします。判断に迷いや不安がある場合は、専門家に相談しましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
