相続登記とは?義務化の内容と不動産の名義変更をしない場合のリスクを徹底解説
2025.08.11

相続登記とは、亡くなった方が所有していた不動産の名義を相続人に変更する手続きです。2024年4月からの義務化に伴い、登記を放置すると過料の対象となる可能性があります。
相続トラブルや不動産の売却不能を防ぐためにも、早めの対応が重要です。本記事では、相続登記の基礎知識や手続きの流れ、必要書類についてわかりやすく解説します。
目次
2024年4月1日より義務化|相続登記とは

2024年から相続登記が法律で義務化されました。これまでは任意だった不動産の名義変更が、期限内に行われない場合には過料の対象となる重要な手続きへと変更。ここでは、相続登記とは何か、義務化の内容や影響について解説します。
相続した不動産の名義を変更する手続き
相続登記とは、亡くなった方の名義になっている不動産を、相続人の名義に変更するための手続きです。
土地や建物の所有者情報は法務局の登記簿で管理されています。相続によって所有者が変わった場合は「相続を原因とする所有権移転登記」の手続きが必要です。例えば、親名義の自宅を子が引き継ぐ場合、相続人はその不動産の所在地を管轄する法務局に名義変更の申請を行う必要があります。
相続登記しないと過料の対象になる可能性がある
相続登記は2024年4月1日から義務化され、正当な理由なく3年以内に手続きしないと、10万円以下の過料が科される可能性があり注意が必要です。
その背景には、登記が放置された結果「所有者不明土地」が増え、公共事業の妨げや不法占有・投棄といった社会問題が深刻化していることが挙げられます。相続登記は、不動産管理だけではなく地域全体の安全にもつながる重要な手続きです。
なお、「相続人が多く書類収集に時間がかかる」「遺言の有効性を争っている」などの事情があれば、正当な理由とみなされる可能性もあります。期限を守ることで過料のリスクは回避できるため、早めの準備が重要です。
相続登記の期限について詳しく知りたい人は以下をチェックしてください。
過去に相続した不動産も登記義務の対象に
2024年4月1日の義務化以前に発生した相続でも、登記が未了のままなら法律の適用対象となります。
猶予期間は2027年3月31日までとされていますが、それまでに正当な理由なく手続きを行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要。放置していた不動産が思わぬリスクになる前に、早めに状況を確認し対応を進めることが大切です。
相続登記はなぜ必要?しない場合の相続人のリスク

相続登記を行わないと、不動産の権利関係が複雑化し、売却や担保提供が困難になるリスクがあります。ここでは、相続登記の必要性を3つの視点から解説します。
1.手続きが複雑になる
相続登記を放置すると、手続きがどんどん複雑になってしまいます。
時間が経つにつれて相続人が増え、権利関係が複雑化し、話し合いや登記手続きが困難になる可能性があります。相続人の一人が亡くなると、その子や孫も新たな相続人となり関係者が増えることで、協議がまとまりにくくなりトラブルに発展するケースも。早めに相続登記を行うことが、スムーズな相続とトラブル回避につながります。
2.不動産売却ができなくなる
相続登記をしていない不動産は、売却できません。登記簿上の所有者が故人のままでは、法的に売買契約を結べないからです。名義を相続人に変更しない限り、売却も担保提供も不可能となります。
「今は売る予定がないから」と放置していると、いざ売却したいときに他の相続人と連絡が取れなかったり、協議がまとまらなかったりしてしまいます。スムーズに進められない可能性があるので注意しましょう。
3.持分が勝手に処分される可能性がある
相続登記をしないと、不動産の差押えや第三者への持分売却のリスクがあります。
例えば、借金を抱えた相続人がいる場合、その人の持分が債権者に差し押さえられたり、その相続人が自分の持分を他人に売ってしまったりする可能性が出てきます。
また、遺産分割協議で合意しても、相続登記をしていなければ権利を第三者に対して主張できません。確実に自分の権利を守るためにも相続登記は重要な手続きです。
相続登記の流れ

相続登記は以下の流れで行います。
ステップ1:戸籍の証明書等の取得
ステップ2:遺産分割協議・協議書の作成
相続で不動産を引き継ぐ際、遺言書があればその指示に従い、遺言がなければ相続人全員で遺産分割協議を行います。
ステップ3:登記申請書の作成
登記申請書は、法務局ホームページから様式をダウンロードして作成可能です。記載例を参考にしながら、漏れのないよう記載しましょう。
ステップ4:登記申請書の提出
対象不動産の所在地を管轄する法務局へ登記申請書と添付書類を提出します。
提出方法は、法務局の窓口に持参する方法と郵送する方法の2つ。郵送の場合は、封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載の上、書留郵便により送付します。
ステップ5:登記完了
法務局での登記が完了すると、登記完了証及び登記識別情報通知書が交付されます。受領することで全ての手続きが完了。手続きの期間は1ヶ月~1ヶ月半程度が目安です。
相続登記に必要な書類

法定相続分で分割する場合や遺言がある場合など、パターンに応じて必要書類は異なります。
【相続登記の共通必要書類一覧】
書類名 |
---|
登記申請書 |
被相続人の戸籍謄本 |
被相続人の住民票の除票 |
相続人の戸籍謄本 |
相続人の住民票 |
固定資産評価証明書 |
【相続登記の必要書類一覧(パターン別)】
パターン | 追加で必要な書類 |
---|---|
遺言がある場合 | 1.遺言書(公正証書遺言、または検認済みの自筆証書遺言) |
遺産分割協議で分割する場合 | 1.遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印) 2.印鑑証明書(相続人全員分) |
法定相続分通りに分割する場合 | 特になし |
戸籍謄本の原本を返してもらいたい場合は、上記に加え相続関係説明図を添付すると簡単に還付請求できます。また、固定資産評価証明書や特定の戸籍には期限があるため、注意が必要です。
必要書類を詳しく知りたい人は以下をチェックしてください。
すぐに相続登記できない場合に活用できる制度「相続人申告登記」

相続登記が間に合わない場合は、「相続人申告登記」で義務を果たすことが可能です。
2024年4月に新設されたこの制度は、連絡が取れない相続人がいる場合や、戸籍収集に時間がかかるケースなどで活用できます。申請は相続人1人だけで行え、オンライン申請にも対応。
ただし、この手続きでは所有権の移転はされないため、不動産の売却や担保利用には正式な相続登記が必要になります。過料を避けるための暫定措置として有効な手続きです。
相続登記のよくある質問

この章では、相続登記に関して多くの方が疑問に思うポイントをわかりやすく解説します。
相続登記の費用はどのくらいかかるの?
相続登記には、登録免許税と証明書の発行手数料がかかります。
登録免許税は不動産の固定資産評価額の0.4%で、評価額が1,000万円なら4万円です。これに加えて、戸籍や住民票などの書類取得にも数千円程度の手数料が必要。
また、専門家へ依頼する場合は報酬も必要になります。例えば、司法書士に依頼すれば、報酬は数万〜10万円前後が相場です。
相続登記は自分で手続きすることも可能ですが、費用と手間を比較して判断しましょう。
相続登記をすると相続税はかかりますか?
相続登記と相続税は直接関係はありません。相続登記をしてもしなくても、一定の遺産総額を超える場合には相続税が課税され、申告も必要となるため注意しましょう。
相続放棄をしたら相続登記はしなくていいの?
相続放棄をした場合、相続登記の義務はなくなります。
ただし、次順位の相続人には相続登記の義務が生じるため、放棄後も注意が必要。相続放棄後は、次順位の相続人の動向を確認し、適切に手続きを進めましょう。
相続登記を自分でするのが不安な場合は専門家に相談がおすすめ

相続登記に不安があるなら、司法書士など専門家への相談がおすすめです。
登記は自分でも可能ですが、書類の不備や手続き漏れのリスクがあります。司法書士は登記のプロで、不動産の名義変更手続きをスムーズに代行可能です。弁護士でも対応できますが、相続人同士の争いがない限りは、登記に特化した司法書士の方が適しています。
登記後に不動産を売却する場合は、住栄都市サービスへのご相談もご検討ください。
期間内の相続登記で相続人の権利を守ろう

相続登記は、亡くなった人の不動産を相続人名義に変更する大切な手続きです。不動産の名義変更を放置すると、将来の売却や権利主張が難しくなるリスクがあります。期限内の手続きが求められる今、相続登記で大切な財産をしっかり守りましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
