相続登記に必要な書類とは?取得方法や有効期限、ポイントをやさしく解説
2025.07.18

相続登記に必要な書類は、相続のケースによって異なります。そのため、手続きを進めようとしても「必要な書類はどれ?」「どこで取得すればいいの?」と戸惑う方も少なくありません。
本記事では、相続登記に必要な書類を5つのケースに分けて解説。取得方法や有効期限についても紹介しているので、早めの準備に役立ててくださいね。
目次
相続登記の必要書類一覧|5つのケース

相続登記と一口に言っても、必要な書類はケースごとに異なります。ここでは5つのケース別に必要書類を解説していきます。
ケース1.法定相続分による相続
法定相続分とは、民法で定められた相続割合のことです。遺言書がない場合や、遺産分割協議が成立しなかった場合に適用します。
法定相続分によって、不動産を相続した場合の相続登記に必要な書類は、以下のとおりです。
- ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- ・相続人全員の戸籍謄本(抄本)
- ・相続人全員の住民票
- ・固定資産評価証明書
- ・登記申請書
ケース2.遺言書による相続
遺言書がある場合、その内容にしたがって相続手続きを行います。遺言書のとおりに相続登記を行う場合に必要な書類は以下のとおりです。
- ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- ・不動産を取得する相続人の戸籍謄本(抄本)
- ・不動産を取得する相続人の住民票
- ・固定資産評価証明書
- ・登記申請書
- ・遺言書
なお、遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があり、自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きを受ける必要があります。
ケース3.遺産分割協議による相続
相続人全員が集まって「誰がどの遺産を引き継ぐか」を話し合うことを遺産分割協議といい、全員が合意したら遺産分割協議書を作成します。
話し合いによって不動産を取得した場合の相続登記に必要な書類は、以下のとおりです。
【必要書類一覧】
- ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- ・相続人全員の戸籍謄本(抄本)
- ・相続人全員の印鑑証明書
- ・不動産を取得する相続人の住民票
- ・固定資産評価証明書
- ・登記申請書
- ・遺産分割協議書
ケース4.法定相続人以外による相続(遺贈)
被相続人は遺言書によって、法定相続人以外の第三者に不動産を譲ることも可能です。これを遺贈といいます。遺贈によって不動産を取得する場合の相続登記に必要な書類は、遺言執行者(遺言の実現のために代表して手続きする人)の有無で異なります。
【遺言執行者がいる場合】
- 1.被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 2.被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 3.相続人全員の戸籍謄本(抄本)
- 4.不動産を取得する人の住民票
- 5.登記申請書
- 6.遺言書
・遺言執行者と受遺者の印鑑登録証明書
【遺言執行者がいない場合】
- ・上記1〜6は同様
- ・相続人全員の印鑑登録証明書
ケース5.相続人が1人のみの相続
相続人が1人の場合の相続登記に必要な書類は以下のとおりです。
- ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- ・相続人の戸籍謄本
- ・不動産を取得する人の住民票
- ・固定資産評価証明書
- ・登記申請書
相続人が1人のとき、相続人が複数人いる場合に必要な印鑑登録証明書や遺産分割協議書などは不要です。なお、他の相続人が相続放棄したことで1人になった場合は、相続放棄を証明する書類を用意しましょう。
相続登記に必要な書類はどこでもらえる?取得方法を紹介

書類のほとんどは市区町村窓口で取り寄せできます。一方、自分で作成が必要な書類もあるため、あわせて確認しておきましょう。
市区町村窓口で取り寄せるもの
市区町村の窓口で取り寄せる書類は、以下のとおりです。
- ・戸籍謄本
- ・住民票
- ・印鑑登録証明書
- ・固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、窓口に出向いて取得するほか、申請書と手数料を送付して郵送で取得することも可能です。
自分で作成するもの
自分で作成が必要な書類は以下のとおりです。
- ・登記申請書:法務局のホームページに様式あり
- ・遺産分割協議書:遺産分割協議を行った場合
- ・委任状:代理人に依頼する場合
なお、法定相続情報一覧図も作成すれば、戸籍謄本の収集負担を軽減できます。法定相続情報一覧図について、詳しくは後述しています。
相続登記に必要な書類に有効期限はある?

相続登記の必要書類には、有効期限はありません。ただし、戸籍謄本は必ず被相続人の死亡後に取得する必要があります。被相続人が亡くなったときに、相続人が生存していたことを証明するためです。
また固定資産税評価証明書は、最新のものを提出しなければなりません。評価額は毎年変動するため、古いものだと相続登記にかかる登録免許税を正しく計算できないからです。このように書類の有効期限はないものの、取得時期には注意が必要です。
相続登記の必要書類におけるポイント2つ

相続登記の必要書類は種類や枚数が多く、収集負担がかかりやすいもの。その負担を軽減する方法として、法定相続情報一覧図の活用が挙げられます。
また提出した書類は原本還付を受けておくことも大切です。ここでは、相続登記の必要書類におけるポイントを2つ解説します。
1.法定相続情報一覧図を活用すれば書類の収集負担を軽減できる
複数の相続登記が必要な場合は、法定相続情報一覧図を活用するのがおすすめです。法定相続情報一覧図とは、被相続人と相続人の関係性を一覧でわかるようにした公的証明書のこと。
本来であれば被相続人の生まれから死亡までの戸籍謄本一式を提出しなければならないところ、法定相続情報一覧図があれば1枚で済みます。戸籍謄本の収集には時間や労力がかかる場合も多いため、検討してみてはいかがでしょうか。
2.提出した書類は原本還付してもらう
相続登記の書類は、原本を提出後に「原本還付」の手続きをするのが基本です。原本は法務局に預けるため、そのままだと返却されません。相続登記以外の手続きでも同じ戸籍などが必要になる場合が多く、原本が手元にないと再取得の手間がかかってしまいます。
戸籍謄本・除籍謄本などは、相続関係説明図を添付すればコピーを取らなくても原本還付が可能です。また先述のとおり、法定相続情報一覧図を使用すれば、そもそも戸籍謄本を提出せずに手続きできます。スムーズに手続きを進めるためにも、原本還付は忘れずに行っておきましょう。
相続登記の必要書類の綴じ方

相続登記の必要書類は、適切な順番に並べてホチキスで止めます。以下は原本還付を受ける場合の並べ方例です。
1.登記申請書
2.収入印紙貼付台紙
--ここでホチキス
3.委任状
4.相続関係説明図
5.遺産分割協議書・遺言書(コピー)
6.印鑑証明書(コピー)
7.被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(コピー)
8.不動産を取得した人の住民票(コピー)
9.固定資産評価証明書(コピー)
--ここでホチキス
10.被相続人の生まれ〜死亡までの戸籍謄本等、相続人の戸籍謄本(原本)
11.遺産分割協議書・遺言書(原本)
12.印鑑証明書(原本)
13.被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(原本)
14.不動産を取得した人の住民票(原本)
15.固定資産評価証明書(原本)
--ここでホチキス
上記のように3つに分けて止め、最後にまとめてホチキスで綴じ、バラバラにならないよう大きめのクリップでとめて提出します。
相続登記は自分でできる?司法書士に頼むといくらかかるの?

相続登記は自分で行うことも可能です。ただし書類の収集や作成に時間と労力がかかります。忙しい人や平日に時間が取りにくい人は、司法書士に手続きを依頼するのも一つです。
司法書士へ依頼した場合の報酬相場は、事務所によって異なりますが、10万円前後が目安。手間と費用を考慮して自分に合った方法を選択しましょう。
なお、住栄都市サービスでは提携している司法書士がいるため、一般的な相場より安く対応することが可能です。お気軽にご相談くださいね。
相続登記の必要書類を知って、早めに収集に取りかかろう

相続登記に必要な書類はケース別に異なります。自身の状況に合わせて、適切な書類の収集を早めに始めることが大切です。
また必要に応じて、法定相続一覧情報図の活用や原本還付を利用し、手続きを簡潔化させることもポイント。困ったときは専門家の力を借りながら、落ち着いて手続きを進めましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
