相続不動産

JOURNAL

相続ジャーナル

お客様のお役に立つ情報を随時配信しています

遺産相続手続きでやることは?流れ・期限・必要書類・費用を徹底解説

2025.07.13

 

相続手続きにはさまざまなやるべきことがあり、何から始めたらよいのか戸惑うこともあるでしょう。自分でも手続きできますが、複雑なケースや難しいと感じる場合は専門家に頼るのも一つです。

本記事では、相続手続きの全体像をつかめるよう、やることとその流れを解説します。期限や必要書類、費用についても紹介しているので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

相続手続きでやることは?まずは流れを理解しよう

相続手続きではまず遺言書の有無を確認し、相続人・相続財産を調査したうえで行います。そのうえで相続人間で遺産分割協議を行って正式に遺産を分け合い、必要に応じて相続税の申告・納付、相続登記を行いましょう。

1,遺言書の有無を確認する

相続手続きで最初にやることは、遺言書の有無を確認することです。遺言書がある場合、遺産分割は遺言書の内容に従って行うことになります。

遺言書には、遺言者が自ら書く自筆証書遺言のほか、内容を秘密にしておく秘密証書遺言、公証人が作成する公正証書遺言があります。自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要なため、早めに確認しましょう。

2.相続人・相続財産を調査する

次に、誰が法定相続人(被相続人の財産を相続できる人)で、相続財産がどのくらいあるのかを調査します。相続人を確認するには、亡くなった方と相続人全員の戸籍謄本を取り寄せる必要があります。相続財産のうち預貯金については、通帳の内容から確認するとよいでしょう。

そのほか、有価証券や所有不動産の内容、借金やローンの未返済がないかも調査します。遺産の種類が多い場合は、全体像を把握するために財産目録を作成するのも一つです。

3.相続するかどうか決定する

相続人と相続財産が確定したら、遺産を相続するかどうかを決めましょう。遺産相続には次の3つの方法があります。

  • ・単純承認:プラスもマイナスも含めて財産を受け継ぐ
  • ・限定承認:プラスの財産の範囲に応じてマイナスの財産も引き継ぐ
  • ・相続放棄:プラスもマイナスの財産もすべて引き継がない

なお、限定承認には相続人全員の同意が必要です。また限定承認と相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申請を行わなければなりません。

4.遺産分割協議を行う

遺言書がない場合や遺言書と異なる分割をする場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどのくらい遺産を相続するかを決めます。協議内容がまとまったら、遺産分割協議書を作成しましょう。

話し合いが難航する場合は、家庭裁判所で調停による分割か審判による分割で決定することになります。

5.相続税の申告・納付をする

遺産を相続後、必要に応じて相続税の申告と納付を行います。相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内。申告が必要なのは、相続財産が以下の基礎控除を上回る場合です。

基礎控除=3,000万円+法定相続人の数×600万円

上記を下回る場合申告は不要ですが、遺産が複雑で判断しにくい場合は税理士に相談するとよいでしょう。相続税の詳しい情報は、以下の記事を参考にしてみてください。

6.相続登記を行う

相続した遺産に家や土地などの不動産がある場合は、相続登記の手続きが必要です。相続登記とは、不動産の名義を相続によって変更することで、2024年4月1日より義務化されました。

相続登記の期限は、不動産の取得を知った日から3年以内。正当な理由なく手続きを怠った場合は罰則が課される可能性もあるため、早めに対応しましょう。

相続手続きの期限

相続手続きには、以下のようにいくつか期限が設けられているものがあります。

手続き 期限 やること
相続放棄・限定承認 相続開始を知ってから3ヶ月以内 家庭裁判所に申請する
準確定申告 被相続人の死亡日翌日から4ヶ月以内 被相続人が生前に個人事業主等で確定申告をしていた場合、
亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得税申告を行う
相続税の申告・納付 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内 相続税の課税対象となる場合は、
被相続人の住所地を管轄する税務署に申告・納付する
遺留分侵害請求 相続開始を知った日から1年以内 遺言によって法定相続人が最低限取得できる遺産の割合が、
侵害されたときに請求する
相続登記 不動産の取得を知った日から3年以内 不動産の名義変更を法務局に申請する

期限に遅れないよう、早めに手続きを開始することが大切です。

相続手続きに必要な書類

相続手続きには、主に以下の書類が必要です。

手続き 必要書類
遺産分割協議書の作成 ・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・不動産を相続する人の住民票
・相続人全員の戸籍謄本・印鑑登録証明書
・財産目録など
相続税の申告 ・被相続人の戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・印鑑登録証明書
・相続税の申告書など
相続登記 ・遺言書または遺産分割協議書
・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・不動産を相続する人の住民票
・相続人全員の印鑑登録証明書
・固定資産評価証明書など

 

必要書類は手続きの内容や状況によって異なります。自分で取り寄せが難しい場合は、専門家に相談しましょう。

相続手続きにかかる費用

相続手続きには、主に以下の書類を取得する際に費用がかかります。

書類 費用
戸籍謄本 1通450円
戸籍の附票 1通300円
住民票・住民票除票の写し 1通200〜400円
印鑑登録証明書 1通200〜300円
登記簿謄本 1通600円
固定資産評価証明書 1通200〜300円

相続手続きは自分でできる?誰に頼めばいい?

相続が複雑でない場合は、自分で手続きすることも可能です。ただしやるべきことが多いため、時間が取れない人や遺産の種類が多い人は弁護士や司法書士など、依頼したい内容に応じた専門家の力を借りましょう。

シンプルなケースなら自分でも可能

相続手続きは、自分で行うことも可能です。自分で手続きをすると専門家の依頼費用を抑えられ、節約につながります。ただし時間と労力がかかるため、状況によって判断しましょう。

以下のような場合は、自分でも比較的手続きしやすいでしょう。

  • ・時間に余裕があり、平日に手続きを行える
  • ・遺産の種類や相続人が少ない
  • ・相続人同士でのトラブルがない

難しい場合は専門家を頼ろう

相続手続きはやるべきことが多く、忙しくて時間が取れない場合や相続人・遺産の種類が多い場合などに自分で手続きするのは困難です。

なかでも、以下の手続きには期限があったり複雑だったりするケースが多いため、専門家に依頼するのが無難。

  • ・弁護士:相続人間のトラブル対応・遺留分侵害請求の手続き
  • ・司法書士:相続登記
  • ・税理士:相続税の申告

相続手続きをしなかったらどうなる?

相続手続きには前述のとおり期限が設けられているものもあり、期限内に手続きをしなければ罰則や延滞税などのペナルティが科される可能性があります。そのほか、以下のような不利益が生じる場合も。

  • ・被相続人の口座凍結により払戻金が受け取れない
  • ・株主としての権利が行使できない
  • ・相続人が増えることで権利関係が複雑になり、手間が増える
  • ・遺留分侵害請求権など相続人としての権利を失う

相続手続きは放置せず、専門家を頼りながらなるべく早めに進めていきましょう。

相続手続きの流れを理解し、必要に応じて専門家に相談しながら進めよう

相続手続きは、遺言書の有無を確認し、法定相続人と遺産内容を確認するところから始まります。やることが多く、期限のある手続きもあるため、早めに着手しましょう。自分で手続きすることも可能ですが、適宜専門家に依頼すると安心して進められます。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

TOP