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相続した土地の名義変更とは?5つの手順と必要書類・費用をやさしく解説

2025.06.10

 

土地を相続した場合、所有者を変更する「名義変更」が必要です。この手続きは2024年4月から義務化されていて、期限内に対応しなければなりません。

本記事では相続した土地の変更について、5つの手順や必要書類、費用などをやさしく解説します。まずは基本を押さえて、不安なく手続きを進められるように備えておきましょう。

相続した土地の名義変更とは

相続した土地は、所有者が変わるため名義変更の手続きが必要です。ここでは、相続と名義変更の違い、2024年4月からの義務化について解説します。

相続と名義変更の違い

相続と名義変更は混同されがちですが、意味や役割が異なります。相続とは、亡くなった人の財産や権利を相続人が引き継ぐこと。相続によって不動産の名義を変更することを相続登記といいます。

一方で名義変更とは、所有者を変更する手続きのことです。相続以外に結婚や生前贈与などでも行われます。

2024年4月から義務化

相続した土地の名義変更(=相続登記)は、2024年4月1日より義務化されました。これにより、土地の相続を知った日から3年以内の手続きが必要です。

特別な理由なく手続きを怠った場合、10万円以下の罰則が科せられることも。土地を相続したら、早めに手続きを済ませましょう。相続登記の義務化について詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

相続した土地を名義変更する5つの手順

土地を相続後に名義変更するには、いくつかのステップがあります。ここでは5つの手順にわけて解説していきましょう。

1.土地の名義と相続人を確認する

土地の名義変更を行うには、現在の所有者と相続人の把握が必要です。法務局で登記事項証明書を取得すると所有者を確認できます。なかには相続登記がされておらず、親名義ではなかったというケースもあるので注意。

遺言書がない場合、被相続人の戸籍謄本をもとに相続人を確認しましょう。相続人の範囲と順位は民法で決められています。詳しくは以下の記事を見てみてください。

2.必要に応じて遺産分割協議をする

遺言書がなく、相続人が複数いる場合は、誰がどの遺産を相続するかを話し合う遺産分割協議が必要です。話し合いで相続人全員の合意が得られたら、内容を遺産分割協議書にまとめます。

なお、土地を共有名義にするとトラブルにつながることもあるため、できるだけ単独名義にするとよいでしょう。協議が難航した場合は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。遺産分割協議書の書き方については、以下の記事を参考にしてください。

3.名義変更に必要な書類をそろえる

名義変更では、法務局に複数の書類を提出する必要があります。例えば、被相続人の戸籍謄本や相続人全員の住民票などです。書類は原則「原本」を提出しますが、原本還付の手続きをすれば返却も可能。手続きに時間がかかる場合もあるため、早めに準備しましょう。

なお、2024年3月からは本籍地以外でも戸籍謄本が取得できる「広域交付制度」が始まり、書類が取得しやすくなりました。

4.登記申請書を作成する

必要書類がそろったら、法務局に提出するための登記申請書を作成します。申請書の様式は法務局のホームページで確認可能です。

記載内容は、遺言による相続や遺産分割協議による相続など、方法によって異なるため注意しましょう。

5.法務局に申請して名義を変更する

登記申請書と必要書類をあわせて、法務局に名義変更を申請します。申請後、法務局で審査が行われ、問題なければ1〜2週間で手続きは完了です。

登記申請はオンライン対応もしていますが、必要書類は窓口または郵送で提出する必要がある点に注意。登記完了後、登記完了証・登記識別情報通知書が交付されるため、確実に受け取りましょう。

相続した土地の名義変更に必要な書類

相続した土地の名義変更を行うには、いくつか書類の取得や作成が必要です。代表的な必要書類は以下のとおり。

  • ・被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • ・相続人全員の現在の戸籍謄本
  • ・不動産を取得する相続人の住民票
  • ・不動産の固定資産評価証明書
  • ・登記申請書、収入印紙、返信用封筒など

遺産分割協議や遺言書による相続の場合は、遺産分割協議書や印鑑証明書、遺言書も必要です。

相続した土地の名義変更にかかる費用

土地の名義変更にかかる費用は、登録免許税・書類取得費用・司法書士報酬です。それぞれ解説します。

登録免許税

不動産の名義変更をする際、登録免許税を支払う必要があります。税額は土地の固定資産評価額に基づいて計算され、税率は0.4%です。例えば、土地の評価額が1,000万円の場合、支払う税額は4万円となります。

ただし100万円の土地は非課税になるため税金はかかりません。また特定の条件下では課税が免除される場合もあります。

書類の取得費用

名義変更に必要な書類を集めるには、費用がかかります。戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書などを役所で取得する場合の取得費用は、1通あたり数百円〜1,000円程度です。

書類の発行場所によって費用が変動することもありますが、すべてそろえても1万円以内で収まることがほとんどです。

司法書士報酬

名義変更を司法書士に依頼する場合、その報酬が必要です。司法書士への報酬は10万円前後が相場で、複雑な案件や不動産が複数ある場合は費用が増えることもあります。依頼前に無料相談を活用し、見積もりをしてもらうと安心です。

土地を相続すると相続税がかかる?

土地を相続すると、名義変更費用だけでなく相続税が発生することもあります。とはいえ、すべての相続で税金がかかるわけではありません。相続税には基礎控除があり、3,000万円に法定相続人一人あたり600万円を加えた金額が控除対象となります。

例えば、配偶者と子ども3人の計4名が相続人の場合、控除額は3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円。遺産総額がこの金額内に収まる場合、相続税の申告は不要です。

なお、相続税の申告期限は相続の開始を知った日から10ヶ月以内です。期限を過ぎてしまうと、延滞税や無申告加算税などの負担が増えるおそれがあるため注意しましょう。

相続した土地の名義変更は自分でできる?

土地の名義変更は自分で手続きすることも可能です。特に、相続人同士の関係が良好で、遺産の内容がシンプルな場合は自力でも手続きしやすいでしょう。

ただし手続きには書類の準備や確認、作成などが多く時間と根気が必要です。平日に役所にいけない人や戸籍の取り寄せが難しいと感じる人は、司法書士に依頼するとスムーズに安心して手続きを進められるのでおすすめです。

相続した土地の名義変更をしないとどうなる?

土地の名義変更をせずにそのままにしていると、以下のようにさまざまなトラブルや不都合が起こる可能性があります。

  • ・10万円以下の過料が科せられる
  • ・相続人が増えて権利関係が複雑になる
  • ・土地の売却や賃貸ができない
  • ・他の相続人の相続分が差し押さえられるリスクがある
  • ・融資の担保として活用できない

土地の名義変更は「いつかやろう」と放置しがちですが、後回しにすると手間とリスクが増えることに。将来のトラブルを防ぐためにも、早めに手続きを進めておくことが大切です。

土地を相続したら名義変更が必要!基本を理解してスムーズに手続きしよう

土地を相続した場合、所有者の名義変更(=相続登記)を行わなければなりません。自分での手続きが難しい場合は、専門家に頼ると安心です。放置するとトラブルにもなりかねないため、手順を理解して早めに手続きを済ませましょう。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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