遺産相続における「期限」とは?知らないと損する期限一覧と過ぎた時のデメリットを解説
2025.06.16

遺産相続の手続きには「期限」があることを知っていますか?その期限を過ぎてしまうと、思わぬ負担がかかってしまうことも。あらかじめどのような手続きがあり、いつまでにするべきかを知っておけば安心です。
この記事では、遺産相続における手続きの期限や、期限を過ぎた時のデメリットについて解説します。
目次
遺産相続とは

遺産相続とは、亡くなった方の財産を、配偶者や子どもなどが引き継ぐことです。相続では、亡くなった方を「被相続人」、財産を引き継ぐ方を「相続人」と呼びます。
財産は預貯金や土地などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産も含まれます。遺産を相続するためには、様々な手続きが必要です。
期限のある遺産相続の手続き

人が亡くなると、遺産相続の手続きが始まります。この手続きには「期限があるもの」と「期限がないもの」があります。通常、相続手続きの起点になるのは「相続の開始を知った日」か「被相続人が亡くなった日」です。
遺産相続の手続きには、亡くなってからすぐに対応が必要なものから、6ヶ月以内に対応すればいいものなど様々です。そのため手続きの内容と期限を確認し、計画的に進めていきましょう。以下では、期限が定められている主な相続の手続きを紹介します。
相続に関する手続きの期限一覧
期限 | 内容 |
---|---|
7日以内 | 死亡診断書・死亡届・火葬許可申請書の提出 |
14日以内 | 年金受給停止、世帯主の名義変更 |
3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認 |
4ヶ月以内 | 準確定申告 |
10ヶ月以内 | 相続税の申告・納付 |
1年以内 | 遺留分侵害額請求 |
3年以内 | 相続登記・生命保険金請求 |
【7日以内】死亡診断書・死亡届・火葬許可申請書の提出
人が亡くなったら、まずは医師から「死亡診断書」と「死亡届」を受け取ります。基本的に病院で用意してくれるので、いつもらえるのか心配する必要はありません。
死亡届に必要事項を記入後、死後7日以内に自治体の役所に提出します。提出と同時に「火葬許可申請書」も提出し、火葬許可書を発行してもらいましょう。これらの書類は親族が提出しますが、葬儀会社が代行してくれることもあります。
【14日以内】年金受給停止、世帯主の名義変更の手続き
被相続人が年金を受け取っていた場合、「受給権者死亡届」を年金事務所に提出します。国民年金なら死後14日以内、厚生年金なら死後10日以内が期限です。
被相続人が住民票上の世帯主だった場合も、手続きが必要です。世帯主が変更された日から14日以内に、自治体の役所に届け出をしましょう。
【3ヶ月以内】相続放棄・限定承認の手続き
相続人は、「単純承認」「相続放棄」「限定承認」の3つから財産の相続方法を決めます。期限は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。それぞれの相続方法について解説します。
単純承認
相続人が被相続人のすべての財産を相続することで、特に手続きは不要です。3ヶ月以内に相続放棄か限定承認の手続きをしなかった場合、単純承認したとみなされます。
相続放棄
相続人が被相続人のすべての財産(資産も負債も)を一切相続しないことです。一度相続放棄すると、負債だけでなく資産も受け取れなくなるので注意しましょう。
限定承認
資産の範囲で負債を相続することです。資産から負債分を差し引いて残りがあれば相続しますが、負債額が多い場合は相続しないことになります。
【4ヶ月以内】準確定申告
準確定申告とは、相続人が被相続人の代わりに確定申告することです。被相続人に収入があり、その年の確定申告が必要な際に行います。準確定申告は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に済ませましょう。被相続人に申告義務がない場合は、準確定申告は不要です。
【10ヶ月以内】相続税の申告・納付
相続税が課される場合、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告と納付が必要です。相続税は、相続財産の総額が基礎控除額を超えた財産に課税されます。基礎控除額は次の式で計算します。
3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
相続税については以下の記事で詳しく紹介しています。
【1年以内】遺留分侵害額請求
遺留分とは、一定の法定相続人が最低限受け取れる割合を、法律で保障した権利のことです。遺言などによって遺留分が侵害されている場合、侵害された相続人が「遺留分侵害額請求」を行うことで遺留分を取り戻すことが可能です。
請求の期限は、相続開始と遺留分侵害を受けていることを知った日から1年以内です。遺留分侵害額請求を行う際は期間内に必ず行ってください。遺留分が侵害されていることを知らなくても、相続が開始してから10年経過すると、請求権が消滅するので注意しましょう。
【3年以内】相続登記
令和6年4月1日から、相続登記は義務化されています。そのため不動産の所有権を取得したら、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を済ませましょう。
なお、義務化前に相続した不動産も対象です。正当な理由なく相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科されることもあります。
相続登記について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
【3年以内】生命保険金請求
多くの保険会社では保険金の請求に期限を定めており、死後3年が経過すると時効となってしまいます。しかし、状況によっては時効が適用されず、請求できる場合もあるので、まずは保険会社に相談してみましょう。
期限のない遺産相続手続き

期限のない遺産相続の手続きもあります。ここでは期限のない3つの手続きについて解説します。
遺言書
遺言書の有無と内容の確認に期限はありませんが、早めに確認するのが良いでしょう。名義変更や解約などの手続き完了後に遺言書が見つかってしまうと、遺産分割の内容が変更になる場合も考えられます。そのため、まずは遺言書があるか確認し、速やかに内容を確認してください。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、遺言書がなく、複数人の相続人がいる場合に相続人全員で財産の分配を話し合うことです。遺産分割協議に期限はありませんが、協議がまとまらずに長期化することもあります。その間に相続税の申告期限が来てしまったりする可能性もあるので、早めに協議を行い、「遺産分割協議書」を作成するのが良いでしょう。相続税申告期限までに協議ができないときは、法定相続分に応じた相続税申告をすることになります。遺産分割協議ができた後に相続税の修正申告をすることになります。
銀行口座の名義変更・解約
銀行口座などの名義変更や解約に期限はありません。しかし、10年経過してしまうと「休眠預金」扱いとなるので注意しましょう。
期限を過ぎたらどうなる?

遺産相続手続きの期限を過ぎてしまった場合、いくつかデメリットがあります。具体的なデメリットを3つ紹介します。
相続税の軽減制度などが受けられない
10ヶ月以内に相続税の申告・納付をしなかった場合、受けられるはずだった控除などが適用されなくなります。例えば配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などが受けられず、本来より多くの相続税を支払うことになるかもしれません。
延滞税や加算税が発生する
相続税の納税や相続登記の期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税などが課されてしまいます。そのまま放置していると、財産を差し押さえられるリスクもあります。相続税や相続登記は期限内に手続きを済ませましょう。
借金を相続してしまう
被相続人に多額の借金などがある場合に相続放棄の期限を過ぎると、単純承認とみなされ、負債を相続しなければなりません。生前に財産状況を調査しておき、相続発生後すぐに手続きができるように準備しておきましょう。
遺産相続は手続きの期限を把握し、事前に準備しておこう

遺産相続の手続きには、期限が定められているものがあります。期限を過ぎると借金の相続や、延滞税の発生など、あなたの負担が増えてしまう可能性もあります。
遺産相続する際は、「いつまでに何をしなければならないのか」をしっかりと意識し、早めに準備や情報収集を始めておくことが大切です。手続きなどに不安がある場合は、専門家に相談することも検討しましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
