遺産相続の基本を知ろう|相続の種類や税金、手続きをわかりやすく解説
2025.05.13

親や兄弟が亡くなると、大切な財産を相続することになります。しかし、遺産を相続するにはどんな方法があり、どのように手続きを踏めばよいのかわからない方も多いでしょう。
遺産相続の不安を解消し、無理なくスムーズに手続きを進められるよう、遺産相続の基本から税金、期限別の手続きについてわかりやすく解説します。
目次
遺産相続とは|相続人や相続分を理解しよう

遺産相続とは、亡くなった人の財産を相続人が引き継ぐことです。ここでは相続の定義や種類、相続人の範囲と順位、法定相続分、相続の対象となる財産について基本を確認しましょう。
相続の定義
相続とは、亡くなった人の財産や権利・義務を家族や親族など一定の関係にある人が受け継ぐ制度のことです。亡くなった人を被相続人、財産を受け継ぐ人を相続人といいます。どのように財産を引き継ぐかは、相続法によってルールが定められています。
相続の種類
相続には、主に法定相続・遺言相続・遺産分割協議による相続の3つがあり、遺言書がある場合はその内容が優先されます。遺言書がなく、遺産分割協議で話がまとまらない場合は、家庭裁判所にて遺産分割調停を行います。
相続の種類 | 概要 |
---|---|
法定相続 | 民法で定められた相続人が、決められた割合で財産を受け継ぐ |
遺言相続 | 被相続人が残した遺言書にしたがって、相続が行われる |
遺産分割協議による相続 | 相続人全員で話し合って財産の分配方法を決定する |
遺産分割調停による相続 | 協議がまとまらない場合、家庭裁判所で調停を行う |
相続人の範囲と順位
法定相続において、配偶者は常に相続人になります。ただし、法律上の配偶者のみで、事実婚や内縁関係者は含まれません。
血縁者には民法で定められた順位があり、上位の相続人がいる場合、下位の相続人は財産を引き継げません。相続人の範囲と順位は以下のとおりです。
順位 | 相続人 | 備考 |
---|---|---|
第1位 | 子ども | すでに亡くなっている場合は孫が相続 |
第2位 | 父母や祖父母 | 子どもや孫がいない場合に相続 |
第3位 | 兄弟姉妹 | 子や親がいない場合に相続 兄弟姉妹もいない場合はその子(姪・甥)が相続 |
なお、本来相続人である人が亡くなっている場合、その子どもが代わりに相続する制度を代襲相続といいます。
相続人の法定相続分
法定相続人(配偶者と被相続人の血縁者)が遺産を引き継ぐ割合は、以下のとおり民法で定められています。
相続人 | 法定相続分 |
---|---|
配偶者のみ | 配偶者:すべて |
配偶者と子ども | 配偶者:2分の1・子ども2分の1 |
配偶者と父母 | 配偶者3分の2・父母:3分の1 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3分の4・兄弟姉妹4分の1 |
なお、遺言書がある場合は指定相続分が優先されます。法定相続分は目安であり、遺産分割協議で合意すれば割合は自由に決めてかまいません。
相続の対象となる財産
相続対象となる財産には、プラスとマイナスの両方が含まれます。
プラスの財産:現金・預貯金・貴金属・自動車・不動産など
マイナスの財産:借金・未払金など
生命保険金や死亡退職金は、法律上は相続対象にはあたりません。ただし、遺族が受け取る性質上、みなし相続財産として一部相続税の課税対象となります。
遺産相続の方法3つ|単純承認・限定承認・相続放棄

遺産相続には、単純承認・限定承認・相続放棄の3つの方法があります。先に述べたとおり、相続には負債などマイナスの財産も含まれます。そのため、相続人は遺産をすべて引き継ぐかどうか自由に選択できるのです。
1.単純承認
単純承認は、被相続人の財産をすべて引き継ぐ方法です。プラスもマイナスも合わせて継承することになります。想定外の借金に慌てないよう、あらかじめ相続財産の内容を把握しておきましょう。
2.限定承認
限定承認は、相続によって得たプラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐ方法です。相続した財産を超える借金を負担する必要がないため、財産状況が不明な場合に有効といえます。限定承認を行うには、相続人全員が合意し、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
3.相続放棄
相続放棄は、プラス・マイナスの財産をすべて引き継がない方法です。相続人が単独で選択できます。限定承認同様、相続開始を知った日から3ヶ月以内の申述が必要です。負債が多い場合は効果的ですが、一切の財産を受け取れない点に注意しましょう。
【遺産相続の注意点】遺留分を知っておこう

遺留分とは、特定の法定相続人が最低限確保できる相続財産の割合のことです。たとえ被相続人が遺言で他者に全財産を譲ろうとしても、遺留分を侵害された相続人は財産を受け取った者に対し、以下の割合で金銭を請求できます。
【遺留分の割合】
配偶者や子ども:相続財産の2分の1
両親や祖父母:相続財産の3分の1
なお、兄弟姉妹には遺留分の権利がありません。請求期限は相続開始を知った日から1年以内のため、早めの対応が必要です。
【基本】相続をすると税金がかかる?かからないのはどんなとき?

相続をすると、相続税がかかる場合があります。相続税の申告には期限が決まっているため、早めに手続きしましょう。
相続税が発生するケース
相続や遺贈により財産を引き継ぐと、相続税が発生します。ただし、必ず税金を納めなければならないわけではありません。相続税の課税対象額が、基礎控除額を上回った場合に課税義務が生じます。
遺産のうち、相続税の課税対象となる財産は以下のとおりです。
- ・相続財産
- ・みなし相続財産(生命保険金や死亡退職金など)
- ・生前に贈与を受けた財産
上記から非課税財産である、債務や葬式費用、生命保険金や死亡退職金などの一部を差し引いた金額が、相続税の課税対象額となります。また、基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の人数で求められます。
相続税の納付が必要か知りたい方は、国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」を利用してみるのもよいでしょう。
相続税の申告期限
相続税がかかる場合、相続の開始を知ってから10ヶ月以内に申告し、納付する必要があります。申告・納付先は被相続人の住所地を管轄する税務署です。
期限内に申告・納税を行わなかった場合、延滞税や無申告加算税が課されるリスクがあるため注意しましょう。相続税に関する詳しい内容は、以下の記事も参考にしてみてください。
遺産相続の手続き一覧|期限別に解説

遺産を相続するには、被相続人が亡くなってからさまざまな手続きが必要です。ここでは、期限別に各手続きを解説します。
【遺産相続の手続き一覧】
期限 | 手続き |
---|---|
2週間以内 | 各書類の提出
|
3ヶ月以内 | 遺言書の有無の確認 相続財産調査 相続方法の選択 限定承認や相続放棄の家庭裁判所への申述 故人が契約していたサービスの解約 遺族年金の申請 |
4ヶ月以内 | 被相続人の所得税の準確定申告・納税 |
10ヶ月以内 | 相続税の申告・納税 遺産分割協議書の作成 |
2週間以内にやる手続き
遺産相続に関して、故人の死後2週間以内に進める手続きは、下記書類の提出です。
- ・死亡届
- ・死体火葬許可申請書
- ・公的年金の資格損失届
- ・健康保険の資格損失届
- ・世帯主変更届
- ・住民票の抹消届
なお、期限はありませんが、死亡保険金の請求手続きや公共料金等の引き落とし口座の変更は早めに済ませておきましょう。
3ヶ月以内にやる手続き
3ヶ月以内に進めるべき手続きは、相続方法を選択し、必要に応じて家庭裁判所に申述することです。単純承認を選択した場合の手続きは不要ですが、限定承認または相続放棄を行う場合は申し出が必要です。
相続方法を選択するために、遺言書の有無の確認や相続財産調査は早めに着手しておくと安心です。そのほか、故人が生前契約していたサービス等の解約や遺族年金の申請なども行いましょう。
4ヶ月以内にやる手続き
4ヶ月以内にやらなければならないのは、被相続人の所得税の申告・納税です。故人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得を計算し、相続人が代わりに申告する必要があります。これを、準確定申告といいます。
10ヶ月以内にやる手続き
10ヶ月以内にやる手続きは、相続税の申告・納税です。前述のとおり、期限を過ぎると罰則が科せられる可能性があるため、該当する場合は必ず手続きを済ませましょう。
そのほか、遺産分割協議書の作成や不動産の名義変更なども必要です。
遺産相続の基本を理解し、無理なく手続きを進めよう

遺産相続とは、故人の財産を相続人が引き継ぐこと。相続方法は遺言書や遺産分割協議によって決定します。相続後、場合によっては相続税が発生する可能性もあります。
遺産を相続するにはさまざまな手続きが必要で、期限が設けられているものもあるため、早めに着手すると安心です。不安な場合は弁護士や司法書士など専門家の力を借り、無理なく手続きを進めましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
