法務局で自分で相続登記をする流れ!必要書類・費用・メリット・デメリットを解説
2025.04.15

相続登記は、亡くなった人の不動産を相続人名義に変更する手続きです。
2024年4月から義務化され、3年以内に手続きをしないと過料の対象となる可能性があります。司法書士に依頼すると費用がかかりますが、自分で行えば数万円以上の節約が可能です。
本記事では、法務局での相続登記概要から注意点などわかりやすく解説します。
目次
2024年から義務化|相続登記とは

相続登記とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義を相続人に変更する手続きです。これまで相続登記は任意でしたが、未登記の不動産が増加し、所有者不明の土地や建物が社会問題となっていました。この問題を解消するため、2024年4月1日から相続登記が義務化されたのです。
これにより、相続した不動産は相続を知った日から3年以内に登記を完了させる必要があります。正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。義務化により、不動産の適正な管理と流通が促進されることが期待されています。
法務局で自分で相続登記をするメリット・デメリット

相続登記は自分で行うことも可能ですが、手続きを進める上でメリットとデメリットがあります。専門家に依頼しないことで費用を抑えられる一方で、登記漏れのリスクや手続きにかかる時間と手間が課題です。
費用を節約するか、確実かつスムーズに進めるか、それぞれの特徴を理解した上で判断しましょう。
メリット①費用が抑えられる
相続登記を自分で行う最大のメリットは、専門家に依頼する費用を節約できることです。相続登記には、登録免許税や戸籍謄本の取得費用などの実費がかかり、司法書士に依頼すると報酬が発生します。報酬は5〜15万円程度で、自分で手続きを行えばこの費用は不要です。
デメリット①登記漏れの恐れがある
相続登記を自分で行う際に注意しなければならないのが、登記漏れのリスクです。
例えば、一戸建てを相続した場合、建物や敷地だけではなく、私道の持分やセットバック部分(道路の幅を確保するために敷地の一部を後退させた部分)も対象となることがあります。また、マンションの場合、専有部分の他に集会所や設備スペースの持分も登記対象になっていることが多い傾向です。
しかし、相続人がこれらの所有権を見落としてしまうと、登記が漏れてしまい、後々の売却や建て替え時に問題が発生する可能性があります。法務局は申請された物件のみ登記を行うため、亡くなった人の所有していた不動産を正確に把握することが重要です。
デメリット②時間と手間がかかる
相続登記の手続きは決して簡単ではなく、必要書類の準備や申請書の作成に時間と手間がかかります。登記に必要な書類は、戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書、固定資産評価証明書など多岐にわたり、それぞれ取得するのは手間がかかります。
また、申請書の記載ミスや必要書類の不足があれば、法務局での修正や再提出が必要になり、手続きが長引くことも。特に、相続人が多い場合や遺産分割協議が必要なケースでは、複雑になりがちです。こうした負担を考慮し、時間的な余裕がない場合は専門家への依頼が推奨されます。
法務局で自分で相続登記をする際の流れ

相続登記を自分で行うには、必要なやり方を理解し、正確に進めることが重要です。スムーズに進めるために、各ステップをしっかり押さえておきましょう。
①相続登記の準備をする
まず、相続登記の流れを理解し、必要な作業を整理することが大切です。登記対象となる不動産を確認し、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して正確な情報を把握しましょう。
また、相続の方法によって手続きが異なるため、「法定相続」なのか「遺産分割協議による相続」なのかを明確にしておく必要があります。相続人同士で話し合いが必要な場合は、円滑に進められるよう早めに準備を整えることが重要です。
②相続登記に必要な書類を収集する
相続登記には、各種証明書を含む多くの書類が必要です。主な書類として、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)、相続人全員の戸籍謄本・住民票、固定資産評価証明書などがあります。
さらに、遺産分割協議が必要な場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書も準備しましょう。これらの書類は市区町村役場や法務局で取得できますが、発行までに時間がかかることもあるため、早めに取り掛かることが大切です。
③相続登記の申請書を作成する
収集した書類をもとに、法務局に提出する登記申請書を作成します。申請書のひな形は法務局のホームページでダウンロードできるため、記入例を確認しながら慎重に作成しましょう。
相続登記申請書には、不動産の詳細や相続内容を正確に記入する必要があり、誤記入や不備があると再申請が必要になるため注意が必要です。また、登録免許税の計算を行い、必要な額の収入印紙を準備することも忘れずに。
相続した不動産を売却するときにかかる税金はいくら?特別控除や注意点をチェック
④法務局へ相続登記を申請する
相続登記の申請は、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。申請方法は、窓口申請・郵送申請・オンライン申請の3種類があり、自身の状況に合わせて選びましょう。
窓口申請では、その場で書類の確認を受けられるため、ミスを防ぎやすくおすすめです。一方、郵送申請の場合は、記載ミスや必要書類の不足があると手続きが遅れるため、送付前に入念なチェックが必要。
また、オンライン申請も可能ですが、電子署名や電子証明書が必要となるため、事前の準備が必要です。
⑤登記完了後の書類を確認する
登記申請後、法務局の審査が完了すると、正式に相続登記が完了します。申請時に登記完了予定日を確認し、手続きが完了したら必要な書類を受け取ることが重要です。
登記完了後に取得すべき書類には、登記識別情報(登記済証)や登記事項証明書があります。これらの書類は、不動産を売却する際やローンを組む際に必要となるため、紛失しないよう大切に保管してください。
また、登記内容が正しく反映されているかを確認することも重要です。万が一、誤りがあった場合は、法務局に早めに問い合わせて対応しましょう。
自分で相続登記をする際の費用

相続登記を自分で行う場合、主に登録免許税と必要書類の取得費用がかかります。
登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」で計算され、例えば不動産の評価額が1,000万円の場合は4万円が必要になります。この費用は登記申請時に納付しなければなりません。
また、必要書類の取得費用も発生します。戸籍謄本(450円/1通)、除籍謄本(750円/1通)、住民票(200~300円/1通)、固定資産評価証明書(300~400円/1通)などを取得する必要があります。
これらの費用は、相続人の数や被相続人の転籍履歴によって変動するため、事前に必要な金額を把握しておくことが大切です。
自分で相続登記をする際に気を付けるポイント

相続登記を自分でやった場合、手続きの正確さが求められます。スムーズに進めるためのポイントを紹介します。
遺言書がある場合は家庭裁判所で検認を受ける
自筆証書遺言がある場合、そのままでは相続登記に使用できません。法務局に申請する前に、家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。検認とは、遺言書の存在を確認し、改ざんや偽造を防ぐための手続き。
一方、公正証書遺言は検認不要で、そのまま登記申請が可能です。検認の申立てには戸籍謄本などの書類が必要で、手続きに1〜2ヵ月かかることもあるため、早めに準備しましょう。
書類の不備やミスを防止する
相続登記の申請では、書類の不足や記載ミスがあると法務局で受理されず、再提出が必要になります。特に、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が一通でも不足すると手続きが進まないため、注意が必要です。
また、登記申請書の不動産の地番や家屋番号を誤って記載すると、修正が必要になり手続きが長引く原因になります。これを防ぐためには、事前に法務局の無料相談窓口を活用し、必要書類や申請内容を確認しておくと安心です。
相続登記を専門家に依頼した方が良いケース

自分で相続登記を行うことは可能ですが、以下のケースでは専門家(司法書士や弁護士)に依頼した方がスムーズに手続きを進められます。
【専門家に依頼した方が良いケース】
- ・相続人が多い場合
- ・話し合いが難航している場合
- ・相続関係が複雑な場合
- ・書類を集めることに負担を感じている場合
- ・期限内に完了させたい場合
- ・登記内容に不明点がある場合
自分で相続登記を進めよう!必要なら専門家も活用

相続登記は自分で手続きすることが可能です。必要書類を揃え、正しく申請すれば費用を抑えられます。
ただし、書類の不備や登記漏れのリスク、手間や時間がかかる点には注意が必要です。相続関係が複雑な場合や期限内に完了させたい場合は、専門家への依頼がおすすめ。状況に応じて最適な方法を選び、スムーズに手続きを進めましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
