相続財産管理人とは|不動産相続での役割・選任手続きと費用をわかりやすく解説
2025.12.26

相続財産管理人とは、相続財産を適切に維持するために家庭裁判所が選任する「財産の管理者」です。
2023年の民法改正により、財産を保全する段階と、売却・弁済まで行う清算の段階が分けて扱われるようになりました。
しかし、初めて制度を知る方にとっては仕組みがわかりにくく、「自分のケースでどちらが必要なのか」が判断しづらい場面もあります。
本記事では、両者の違い、選任されるケース、手続きの流れ、費用、不動産が含まれる場合の注意点を整理しています。
目次
相続財産管理人とは|相続財産清算人との違いをわかりやすく整理

近年の民法改正により、相続財産の管理と清算の役割が分かれ、名称と内容がわかりにくくなりました。
ここでは、まず両者の違いを確認します。
相続財産管理人の基本的な役割
相続財産管理人は、相続人がいるが管理が不適切である場合や、管理行為を行えない場合に、相続財産の価値が下がらないように「保存・管理」を行う専門家です。
主な例は次のとおりです。
- 相続人がいるものの、誰も財産管理を行わない
- 相続人同士の話し合いが進まず、財産が放置されている
- 共有不動産の管理者が不在で、老朽化が進んでいる
就任後は、固定資産税の支払い、最低限の修繕、空き家の巡回といった財産を維持・保護するための実務を行います。
相続財産清算人との違いと2023年改正のポイント
相続財産管理人と混同されやすいのが、相続財産清算人です。
相続財産清算人は、相続人が不明あるいは存在しない場合に選任され、相続財産の売却や債権者への弁済など、財産を最終的に処分する役割を担います。
2023年4月の民法改正により、両者の役割は明確に分離されました。
- 相続財産管理人:財産の保存・管理を担当
- 相続財産清算人:財産の清算(売却・弁済・残余財産の処理)を担当
これにより、管理から清算まで一人が一貫して行う従来方式から、ステップごとに専門性の高い人材が選ばれる形へ移行しています。
相続財産管理人が関わる手続きの特徴
- 相続人や管理者を前提としない制度であること
→相続人が財産を管理する通常の手続きとは根本的に構造が異なる。 - 家庭裁判所の管理下で進むこと
→相続財産管理人の選任・業務内容・報告は裁判所の許可と監督が必要。 - 保全・清算という目的が明確に分かれていること
→「相続人間の話し合い」が前提とされていない。
つまり、相続財産管理人制度は、「相続人が主役の相続」ではなく「財産そのものを中心に扱う制度」として運用される点に大きな特徴があります。
相続財産管理人が必要となるケース|どこから相続財産清算人が必要になるのか

ここでは、相続財産管理人が必要となる典型的なケースと、どのような状態になると相続財産清算人が選任されるのかをわかりやすく整理します。
相続人の所在がわからず、手続きが完全に止まっている場合
相続人がどこにいるか不明で連絡が取れず、遺産分割も名義変更も進められないケースです。
- 海外在住で音信不通
- 戸籍上は存在するが、現住所が特定できない
- 何十年も連絡が途絶えている
この段階では、まず財産の保全が必要になるため相続財産管理人が選任されます。
最終的に相続人が見つからなければ、相続財産清算人へ移行します。
相続人はいるが、誰も管理を引き受けない場合
相続人同士の関係性や居住地の問題などにより、誰も財産管理を行えないケースです。
- 遠方で管理できない
- 相続人の関係が悪く話し合いができない
- 空き家管理の負担が大きい
- 税金や修繕費を払えない
この場合は「放置すると危険」なため相続財産管理人が選任されます。
その後、相続放棄が重なると、相続財産清算人へ移行することもあります。
相続人全員が相続放棄した場合
相続放棄がされると、相続財産を管理する人がいなくなります。
- 借金が多くて相続できない
- 空き家の管理リスクを避けたい
- 管理費・税金の負担が難しい
放棄直後は「保存のための管理」として相続財産管理人が置かれますが、最終的には相続人不存在となり、必ず相続財産清算人が必要になります。
相続財産管理人や清算人の選任手続きと費用の目安

ここでは、相続財産管理人の選任手続きと費用の目安について解説します。
誰が申立てできるのか
相続財産清算人の選任を申立てできるのは、利害関係人または検察官とされています。
つまり、「財産に直接の利害を持つ人」や「公的な立場から関わる機関」ということです。
利害関係人には、具体的に次のような方が含まれます。
- 被相続人の債権者
- 特定遺贈を受ける人
- 特別縁故者に該当する可能性がある人
- 隣接する不動産の所有者
一方、現在の相続財産管理人(保存目的)の選任についても、相続人や利害関係人などからの申立てが想定されています。
選任申立てに必要な書類と手続きの流れ
申立てにあたっては、以下の書類を準備し、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。
- 申立書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 住民票除票や戸籍附票
- 相続人がいない・または特定できないことを示す資料
- 財産目録(不動産・預貯金などの一覧)
- 利害関係を証明する資料(契約書、登記事項証明書など)
戸籍の収集や財産目録の作成には時間がかかりやすいため、不動産の調査とあわせて早めに着手しましょう。
申立て後は、家庭裁判所が書類を審査し、必要に応じて申立人から事情を聴き取ります。
そのうえで問題がなければ、相続財産清算人または相続財産管理人が選任され、その旨が官報で公告されます。
選任申立て費用と予納金の相場
申立てにかかる費用は、大きく分けて次の2種類です。
【申立てに必要な実費】
- 収入印紙代(800円)
- 連絡用の郵便切手代(裁判所ごとに数千円程度)
- 官報公告料(5,075円)
【予納金(相続財産管理人・清算人の報酬や実費の前払い分)】
50万~100万円程度が目安ですが、事案により異なります。
不動産が多い、管理に手間がかかる、債権者が多いといった場合には、より高額になることもあります。
選任後に行われる相続財産管理の流れと期間の目安
相続財産管理人が選任されると、次の流れで財産の管理が進みます。
- 官報公告で就任を知らせる
- 財産調査・現地確認
- 財産目録の作成と裁判所への報告
- 相続人の最終確認
- 固定資産税支払い・最低限の修繕などの保存行為
相続人がいない場合や相続放棄が重なる場合は、最終的に清算人の選任へつながることがあります。
期間の目安は次のとおりです。
- 財産把握・初期管理:3か月~半年
- 清算段階へ移行する場合:半年~1年以上
特に不動産は現地調査、管理費用の確保、老朽化リスクの確認などが必要なため時間がかかりやすい点に注意が必要です。
不動産を含む相続財産の管理で押さえたいポイント

相続財産のなかに不動産が含まれている場合、単に「名義人がいない」という問題にとどまらず、地域や近隣との関係も含めたリスクが生じます。
ここでは、不動産特有の注意点と、住栄都市サービスがお手伝いできるポイントをお伝えします。
空き家・土地を放置した場合のリスク
管理者がいない不動産を放置すると、次のようなトラブルにつながりやすくなります。
- 老朽化・倒壊リスク
- 不法投棄・侵入
- 雑草・害虫による近隣迷惑
- 税金滞納による差押え
ただし、現金がほとんどなく不動産だけが残っている場合、固定資産税や空き家管理の費用を賄えないことがあります。
そのため、管理に必要な費用を確保するために不動産を売却せざるを得ないケースが多くなるのです。
不動産の価値を判断するときに注意したいポイント
不動産の価値は、立地や形状、接道状況、老朽化の度合い、権利関係によって大きく変動します。
評価を誤ると、債権者や特別縁故者の取り分に影響するおそれがあります。
相続財産清算人が不動産を売却する場合は、裁判所の許可が必要となり、査定書などの客観的な根拠が求められます。
適切な判断を行うためには専門家のサポートを受け、正確な評価をしてもらいましょう。
不動産に詳しい専門家と連携するメリット
相続財産清算人や相続財産管理人が選任されているケースでは、弁護士・司法書士・税理士などの専門家が関わることが一般的です。
そこに不動産のプロが加わることで、次のようなメリットが生まれます。
- 不動産の現状把握(境界・未登記建物・賃貸借の有無など)がスムーズになる
- 売却が必要な場合、地域の市場動向を踏まえた現実的な価格で検討できる
- 相続税や譲渡所得税の見通しも含めて、手取りベースで判断しやすくなる
住栄都市サービスは、不動産相続に特化した相談窓口として、弁護士・税理士・司法書士と連携しながら、「不動産をどう扱うべきか」という実務的な視点からサポートします。
相続財産管理人や相続財産清算人の手続きが必要か迷っている段階でも、お気軽にご相談いただけます。
まとめ
相続財産清算人や相続財産管理人は、相続人が不在・不明な場合や、誰も財産管理を行えない状況で財産を保全するための制度です。
不動産が含まれると、老朽化や近隣トラブル、売却の判断など専門的な対応が必要になります。
状況によって相続財産清算人へ移行することもあり、早めに手続きと費用の見通しを把握しておくことが重要です。
不動産の評価や管理に迷いがある場合は、住栄都市サービスが状況に応じた現実的な選択肢をご提案します。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。




