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特別受益とは?不動産相続で知っておきたい具体例と判断基準、計算方法を解説

2026.01.22

親から金銭的な援助を受けていた相続人と、そうでない相続人がいる場合、遺産分割で不公平を感じることがあります。

特別受益とは、生前に受け取った利益を相続財産に持ち戻して計算する制度です。

しかし、何が特別受益にあたるのか、どう対処すればよいかわからず悩む方は少なくありません。

本記事では、特別受益の基本から具体例、不公平を感じたときの判断基準や解決方法まで詳しく解説します。

特別受益とは?相続でまず知っておきたい基礎知識

相続の場面でよく問題になる特別受益について、法律上の意味や目的を理解しておく必要があります。

まずは基本的な定義と、なぜ相続で重要になるのかを見ていきましょう。

特別受益とは

特別受益とは、相続人が生前に受けた一定の援助を相続の計算で遺産に持ち戻して計算する制度です。

生前に高額な援助を受けた相続人と、そうでない相続人との間で生じる不公平を調整することが目的です。

たとえば、遺産が2,000万円で、長男が生前に1,000万円の援助を受けていた場合、計算上の遺産総額は3,000万円として扱います。

特別受益に該当しやすい援助の具体例

特別受益に該当しやすいのは、生活基盤を形成する高額な援助です。

代表例は次のとおりです。

  • ・住宅購入の頭金
  • ・建築資金・リフォーム費用
  • ・結婚式費用・嫁入り道具・持参金
  • ・私立大学や留学など高額な教育費
  • ・起業資金・店舗の開業費用

これらの支援は金額が大きく、家族間で負担に差が出やすいため、相続時の調整対象となる可能性が高い点が特徴です。

特別受益に該当しない援助の具体例

一般的には「通常の親の扶養範囲」と判断される支援は特別受益に含まれません。

例としては以下が代表的です。

  • ・日常生活費の補助
  • ・医療費の一部負担
  • ・冠婚葬祭の一般的な援助
  • ・義務教育や一般的な進学に伴う教育費
  • ・同居中の生活費の負担

金額が比較的少額の場合や、親として自然な支援とみなされるものは対象外となる傾向があります。

特別受益と寄与分の違い

特別受益と寄与分はよく混同されますが、目的がまったく異なります。

制度 説明
特別受益 生前にもらった援助を遺産に加算し、相続分を公平に調整する制度
寄与分 被相続人の財産維持・増加に貢献した相続人をプラス評価する制度

たとえば、ある相続人が長期にわたり被相続人を介護した場合や、事業を手伝って財産を増やした場合には寄与分の問題になります。

不動産が特別受益になるケースと判断のポイント

不動産に関する援助は金額が大きいため、特別受益として扱われることが多く、相続トラブルの主要因にもなりやすい分野です。

建て替え費用を親が負担した場合

親名義の家を子が住む目的で建て替え、親が費用を全額負担した場合、特別受益に該当する可能性があります。

ただし、以下の点を考慮して判断します。

  • ・建て替え費用の出どころ
  • ・誰名義で登記しているか
  • ・子どもがどの程度費用を負担したか

親が全額負担し、家が子ども名義であれば、特別受益と判断されやすくなります。

住宅購入の頭金・取得資金の援助がある場合

住宅購入の頭金や取得資金の援助は、特別受益の中でも代表的なケースです。

特に頭金として数百万円以上の援助があった場合は、相続時に調整の対象になることがほとんどです。

たとえば2,000万円の住宅購入時に親が500万円を援助したなら、相続財産に持ち戻して計算されます。

なお、住宅取得資金贈与の非課税制度を利用していたとしても、「税務上は非課税で問題がないこと」と「相続上特別受益と判断されること」は別問題です。

親の家に無償で住んでいたときの扱い

親所有の不動産に無償で住んでいた場合、単なる同居なら特別受益には該当しません。

しかし、以下のケースでは家賃相当額が特別受益として扱われるケースもあります。

  • ・同居期間が非常に長い
  • ・家賃相当額が高額
  • ・一人だけが恩恵を受けている

地域の家賃相場や同居の事情、介護の有無など個別状況で結論が異なるため、慎重な判断が必要です。

後から判明した生前贈与への対応方法

相続が始まってから、一部の相続人だけが生前贈与を受けていたと判明するケースも少なくありません。

この場合は次の資料が重要になります。

  • ・振込履歴
  • ・贈与契約書
  • ・住宅ローン控除の書類
  • ・売買契約書・領収書

事実関係を整理したうえで遺産分割を進めないと、相続人同士の不信感につながるため、早めの確認が必要です。

特別受益の金額はどう決まる?計算と不動産評価の基本

特別受益があるとわかった場合、具体的にいくらで計算するかが問題になります。

不動産の評価額は時期や評価方法によって大きく変わるため、正確な知識が求められます。

相続人間で納得できる評価方法を選ぶことが、トラブル回避の秘訣です。

特別受益の持ち戻し計算の手順

特別受益を考慮した相続分計算の流れは次のとおりです。

  1. 1.相続開始時点の遺産額を把握する
  2. 2.特別受益と判断された金額を遺産に「持ち戻す」
  3. 3.持ち戻し後の総額×法定相続分=各相続人の取り分

たとえば、遺産総額2,000万円で長男の特別受益が1,000万円なら、持ち戻し後は3,000万円です。

遺言がない場合、法定相続分が2分の1ですから、1,500万円が本来の取り分となり、長男は500万円を相続します。

計算自体は簡単ですが、「特別受益額の判断」が難しいため、専門家による裏付けが重要です。

不動産の価値が変わりやすい要因

不動産の評価額は、以下の条件で大きく変わります。

  • ・間口が狭い・奥行きが長い(旗竿地)
  • ・道路に接していない・接道幅が狭い
  • ・傾斜地・高低差のある土地
  • ・不整形地、がけ地、高圧線下の土地

実際に売れる市場価格と相続税評価額の差が大きい土地も注意が必要です。

評価額の違いで相続税がどれくらい変わる?

不動産評価は算定方法によって大きく変動します。

経験の浅い税理士や一般的な不動産査定では、土地の形状や接道状況といった個性が十分に反映されず、本来より高い評価になる場合もあるでしょう。

評価額の違いは相続税にも直結し、数百万円単位で納税額が変わる場合も珍しくありません。

相続に強い税理士に依頼すれば、適正な評価と節税が期待できます。

相続後に不動産を売る場合の注意点

相続時の評価額が3,000万円でも、実際の売却価格が2,500万円になったり、逆に3,500万円になったりする場合もあります。

特に不動産が特別受益の対象だった場合、評価額と売却額の差が争点になりやすくなります。

売却の予定がある場合は、早い段階で相続に詳しい税理士や弁護士に相談しましょう。

特別受益に不満や不公平を感じたときの対処法

特別受益は、兄弟間で「不公平ではないか」と感じやすいテーマです。

不動産の援助や生前贈与が絡むと、金額の大きさや認識の違いから、話し合いが難航するケースも少なくありません。

状況に応じた解決手段を知っておきましょう。

生前贈与や支援内容を整理する

特別受益がありそうな場合は、まず事実を客観的に確認しましょう。

整理する際は、次のような資料が手がかりになります。

  • ・通帳の振込履歴
  • ・贈与契約書・受領書
  • ・家計簿やメモ
  • ・住宅購入時の書類(売買契約書、ローン契約書、非課税制度の書類など)

これらの資料を可能な範囲でそろえれば、「援助があった・なかった」 「特別受益に該当する金額はどれか」 を冷静に判断しやすくなります。

家族間の話し合いをスムーズに進める工夫をする

話し合いを円滑に進めるためには、次のような工夫が有効です。

  • ・事実と推測を切り分ける
  • ・当日突然話すのではなく、議題を事前に共有する
  • ・感情的になりやすい場合は第三者(専門家がおすすめ)に同席してもらう
  • ・発言内容は記録に残す

感情的な対立を避け、事実に基づいた話し合いを心がけてください。

それでも意見がまとまらない場合は、早めに専門家に相談することで、冷静な判断と円満な解決につながるでしょう。

不動産相続に強い専門家に相談する

特別受益は、法律(民法)、税務(相続税)、不動産評価の3つが重なる難しいテーマです。

迷ったときは、問題の性質に応じて専門家のサポートを受けましょう。

  • ・税理士:不動産評価、相続税の計算
  • ・弁護士:相続トラブル、法的判断が必要な場面
  • ・司法書士:遺産分割協議書の作成、相続登記

住栄都市サービスでは、不動産の適正評価、相続税対策、売却相談まで一貫してご相談いただけます。

特別受益に関連する不動産の扱いについて不安な方は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

特別受益とは、相続人が生前に受けた援助を相続財産に持ち戻して計算する制度で、相続人間の公平性を保つことが目的です。

住宅購入資金や事業開業資金など、生活基盤の形成に関わる高額な援助が該当しやすくなります。

不公平を感じたときは、通帳の振込履歴や贈与契約書などで客観的な事実を整理し、家族間で冷静に話し合いましょう。

特別受益は法律・税務・不動産評価の専門知識が必要な分野のため、相続に強い専門家への相談が解決への近道となります。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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