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遺言書があっても遺留分は請求可能?不動産相続のポイント

2025.12.26

親族が亡くなり、遺言書が見つかったものの、自分の取り分が極端に少ない、あるいはゼロだったという状況に直面していませんか。

相続人には法律で守られた最低限の権利があります。

遺言書の内容に納得できない場合、遺留分侵害額請求という制度を使えば、法定相続分の一部を取り戻せる場合があります。

本記事では、遺言書がある相続における遺留分の基礎知識から、具体的な請求方法、不動産が絡む場合の注意点まで詳しく解説します。

遺言書があっても遺留分は請求できる

遺言書で「全財産を特定の相続人に相続させる」と記載されていても、他の相続人には法律で保証された最低限の取り分である「遺留分」があります。

まずは、この遺留分制度の仕組みを理解しましょう。

遺留分とは相続人に保障された最低限の権利

遺留分とは、一定の法定相続人に対して法律で保障された最低限の相続分です。

被相続人の財産処分の自由と、相続人の生活保障のバランスを取るために設けられています。

遺留分が認められるのは、配偶者・子・直系尊属(父母や祖父母)です。兄弟姉妹には遺留分はありません。

割合は、一般的には法定相続分の2分の1ですが、直系尊属のみが相続人の場合は3分の1になります。

遺留分を侵害しても遺言書は有効

遺言書の内容が遺留分を侵害していたとしても、遺言書そのものは法的に有効であり、基本的には遺言書の内容が優先されます。

ただし法定相続人には、最低限の遺産分割が認められる遺留分という権利が保障されているため、泣き寝入りする必要はありません。

遺言書で定められた遺産の内容が遺留分を下回る場合、相続人は遺留分侵害額請求を行うことで、不足分を金銭で取り戻せる仕組みになっています。

つまり遺言書は有効なまま、侵害された遺留分だけを別途請求できるわけです。

遺留分侵害額請求には期限(時効)がある

遺留分侵害額請求には法律で定められた期限(時効)があり、期限を過ぎると権利が消滅してしまうため注意が必要です。

  • ・相続開始および遺留分侵害を知った時から1年以内
  • ・または相続開始から10年以内

遺言書の内容に疑問がある場合は早めに専門家に相談し、期限内に手続きを進めましょう。

不動産が含まれる相続で遺留分トラブルが起きやすい理由

遺産に不動産が含まれていると、現金や預貯金だけの相続に比べて遺留分をめぐるトラブルが発生しやすくなります。

不動産特有の性質が、相続人間の対立を生む原因となるケースが少なくありません。

不動産は分割しにくいため公平性を保ちにくい

不動産は現金や預貯金と違って物理的に分割できないため、相続人間で公平な分配が難しくなります。

たとえば長男が自宅を相続し、次男が遺留分を侵害された場合、長男は次男に金銭でバランスをとる必要があるでしょう。

こうした調整に使われる金銭を代償金と呼びますが、不動産を相続した人の手元に現金が少ないケースでは、代償金の支払いが困難になりがちです。

結果として「払いたくても払えない」状況が生まれ、相続人同士の関係が悪化する原因となってしまいます。

不動産の評価額が計算を左右するため揉めやすい

不動産は、評価方法によって金額が大きく変動します。たとえば次のような基準があります。

  • ・相続税評価額(路線価等)
  • ・固定資産税評価額
  • ・時価(実勢価格)

この評価差が遺留分侵害額の金額に直結するため、相続人同士がそれぞれ有利な評価方法を主張し、対立が生じやすくなります。

評価額が確定しなければ遺留分侵害額も計算できず、話し合いが長期化することも珍しくありません。

代償金の支払いが滞る可能性がある

不動産を相続した側に十分な現金がない場合、遺留分に相当する代償金の支払いが難しくなる可能性があります。

  • ・自宅不動産が遺産の大半
  • ・預貯金が少ない
  • ・売却すると住めなくなる

このような状況では代償金の支払いが難しく、相続人間の関係がさらに悪化したり、法的な紛争に発展したりするリスクが高まります。

生前贈与が遺留分の計算に影響しやすい

生前贈与された財産は、一定期間内の贈与であれば遺留分の計算基礎に加算されます。
特に不動産の生前贈与がある場合、その評価額が高額になるため、遺留分に大きく影響します。

  • ・相続人への贈与:相続開始前10年以内
  • ・相続人以外への贈与:相続開始前1年以内

贈与財産を見落とすと、遺留分の計算を誤ってしまい、相続人間の交渉がこじれる原因にもなりかねません。

遺留分侵害額を請求する手続きと流れ

遺留分が侵害されていると感じた場合は、「遺留分侵害額請求」を行うことで最低限の取り分を確保できます。

ここでは、遺留分侵害額請求の基本的な流れと、各段階で注意すべきポイントを解説します。

遺留分侵害額を計算する

まずは遺留分がどの程度侵害されているかを算出します。

実際の計算は、不動産評価や生前贈与の加算、債務控除など複数要素が絡むため複雑です。

弁護士や税理士など専門家に依頼して計算してもらうと確実でしょう。

内容証明郵便で請求意思を伝える

遺留分侵害額請求は、相手方に対して請求意思を示すことによって成立します

確実に証拠として残すため、内容証明郵便で通知するのが一般的です。

内容証明郵便を使えば、いつ・誰が・どのような内容を相手に送ったか郵便局が証明してくれるでしょう。

時効が迫っている場合でも、内容証明郵便の発送日が請求日として認められるため、権利を守る重要な手段になります。

交渉がまとまらない場合は調停・訴訟へ

内容証明郵便を送っても相手が支払いに応じない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。

調停でも解決に至らなければ、調停は不成立となり、訴訟に移行して裁判所が法的な判断を下す流れになります。

訴訟では証拠に基づいて遺留分侵害額が認定され、判決が確定すれば相手は支払い義務を負うため、法的強制力を持った解決が可能です。

遺留分を請求する前に確認すべき不動産相続の注意点

遺留分侵害額請求を実際に行う前に、不動産が含まれる相続では確認しておくべき重要なポイントがいくつかあります。

請求後のトラブルを避けるためにも、事前にしっかりと把握しておきましょう。

不動産の評価額を正確に把握する

不動産が遺産に含まれる場合、どの程度の価値とみなすかによって遺留分の計算が大きく変わります

評価の誤りは相続人同士の食い違いにつながるため、請求前に確かな評価額を整理しておくことが大切です。

必要に応じて専門家のサポートを受けながら、適正な評価を確認しましょう。

不動産の名義状況を確認する

遺留分を請求する際に意外と見落とされるのが「名義」の問題です。

不動産が生前に贈与されていた場合や共有名義になっている場合、遺留分の計算に影響する可能性があります。

登記事項証明書を取得すれば、現在の名義人や過去の名義変更履歴を調べられます。

特に注意したいのは、以下のようなケースです。

  • ・被相続人が生前に子どもへ不動産を贈与していた
  • ・共有名義になっている不動産がある
  • ・名義変更がされないまま使われていた物件がある
  • ・敷地と建物の名義人が異なる

たとえ生前贈与されていた不動産であっても、一定期間内の贈与は遺留分の基礎財産に含まれます。

つまり、名義が相続の時点で被相続人ではなくても、評価額を含めて遺留分計算に影響するというわけです。

名義が複雑な場合は、早めに専門家へ相談し、権利関係を整理することをおすすめします。

代償金の支払いの可能性を見極める

遺留分請求は金銭での支払いが原則となるため、相手方に代償金を支払う能力があるかどうかを事前に見極めておく必要があります。

以下のような状況は特にトラブルにつながりやすいため、事前に把握しておくことが重要です。

  • ・不動産以外の財産が少なく、現金が手元にほとんどない
  • ・相続した不動産が自宅で、住み続けたいため売却しにくい
  • ・不動産を担保に融資を受けないと支払えない
  • ・代償金支払いのために、望まない売却を余儀なくされる

相手方が支払える状況にないと判断した場合、請求額の調整や分割払いの提案など、柔軟な方法も検討すべきでしょう。

生前贈与の影響を整理する

被相続人が生前に行った贈与も、一定のルールで遺留分計算の基礎に加算されるため、事前に整理しておく必要があります。

以下の点を事前に整理しておきましょう。

  • ・贈与の有無
  • ・贈与を受けた人
  • ・贈与の時期
  • ・贈与財産の評価額

特に不動産の生前贈与は評価額が大きくなりやすいため、贈与当時の時価を調べておくことが重要です。

まとめ

遺言書で自分の取り分が少なくても、法定相続人には遺留分という最低限の権利が保障されており、遺留分侵害額請求によって金銭で取り戻せます

ただし相続開始および遺留分侵害を知った時から1年以内に請求しなければ権利が消滅するため、早めの行動が不可欠です。

住栄都市サービスでは、相続に詳しい士業とも連携し、不動産評価や権利関係の整理を含めて総合的にサポートしています。

「遺留分を請求できるのか知りたい」「不動産の評価をどう扱えばよいかわからない」といった場合は、お気軽にご相談ください。

お客様の状況を整理し、適切な解決方法をご提案します。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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