不動産相続にかかる税金はいくら?計算方法・節税対策・注意点をわかりやすく解説
2025.12.26

親が亡くなり不動産を相続する場合、「税金はいくらかかるのか」「何から手をつければいいのか」と不安を感じる人は多いでしょう。
不動産相続では、相続税だけでなく登録免許税や譲渡所得税など、複数の税金が発生する場合があります。
しかし、正しい評価方法を知った上で手続きを踏めば、税負担を大きく減らせる可能性もあります。
本記事では、不動産相続にかかる税金の種類から、損をしないための評価のポイント、具体的な手続きまでをわかりやすく解説します。
不動産相続で発生する税金の基礎知識

不動産相続では、複数の税金が異なるタイミングで発生します。
以下に主な税金を一覧でまとめました。
| 税金の種類 | 発生タイミング | 主な内容 |
| 相続税 | 相続開始から10か月以内 | 遺産総額が基礎控除額を超えた場合に課税 |
| 登録免許税 | 不動産の名義変更時 | 固定資産税評価額の0.4%を納付 |
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年1月1日時点 | 不動産を保有している限り毎年課税 |
| 譲渡所得税 | 相続不動産を売却時 | 売却益が出た場合に課税 |
相続発生時にかかる「相続税」
相続税は、亡くなった人から財産を受け継いだときに課される税金で、遺産総額が基礎控除額を超えた場合にのみ納税義務が生じます。
基礎控除額の計算式は以下のとおりです。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人なら、基礎控除額は4,800万円です。
遺産総額が5,000万円の場合、超過分の200万円に対して相続税が課税されます。
申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内で、期限を過ぎると延滞税が発生するため注意が必要です。
相続登記で必要となる「登録免許税」
登録免許税は、相続した不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する際に必要な税金です。
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続を知ってから3年以内に手続きが必要です。
計算式は以下のとおりです。
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%
たとえば、固定資産税評価額が3,000万円の土地なら、登録免許税は12万円(3,000万円 × 0.4%)となります。
固定資産税評価額は、毎年送られてくる納税通知書で確認できます。
不動産売却時にかかる「譲渡所得税」
譲渡所得税は、相続した不動産を売却して利益が出た場合に課される税金で、所得税と住民税が含まれます。
計算式は以下のとおりです。
譲渡所得 = 売却価格 − (取得費 + 譲渡費用)
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
税率は所有期間で異なり、5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%です。
以下の特例を使うと税負担を軽減できる場合があります。
- ・相続税の取得費加算の特例:相続税の一部を取得費に加算
- ・3,000万円特別控除:マイホーム売却時に利用可能
- ・長期譲渡所得の軽減税率:10年超所有したマイホームに適用
適用条件によって税額が大きく変わるため、売却前に確認しておきましょう。
不動産保有中に継続して発生する「固定資産税・都市計画税」
固定資産税と都市計画税は、不動産を保有している限り毎年課される税金で、毎年1月1日時点の所有者に納税義務が生じます。
相続後に空き家状態で放置すると、以下のリスクが発生します。
- ・管理コストの増加:定期的な清掃や修繕費用がかかる
- ・老朽化による倒壊リスク:近隣に損害を与える可能性
- ・特定空家に指定:固定資産税が最大6倍に増える
空き家を相続した場合は、早めに利用または売却を検討しましょう。
不動産の評価で相続税額が変わる理由と計算方法

相続税は、不動産の評価額によって納税額が大きく変わります。
評価方法を正しく理解して計算すると、税負担を軽減できる可能性があります。
ここでは、不動産評価の基本的な仕組みと計算方法を見ていきましょう。
土地評価の基礎「路線価方式」と「倍率方式」
土地の相続税評価額は、路線価方式または倍率方式で算出されます。
路線価方式(市街地で採用)
路線価とは、道路に面した土地1㎡あたりの評価額です。
評価額 = 路線価 × 土地面積 × 補正率
路線価30万円/㎡で100㎡の土地なら、評価額は3,000万円です。
倍率方式(路線価がない地域)
郊外や農村部では、固定資産税評価額に倍率をかけて計算します。
評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
国税庁のWebサイトで確認できます。
建物評価の基礎「固定資産税評価額」
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額をそのまま使用します。
固定資産税評価額は、市区町村が3年ごとに見直しを行い、建築費や経年劣化を考慮して算定されます。
毎年送られてくる納税通知書に記載されており、時価の約70%程度です。
たとえば、固定資産税評価額が1,500万円の建物なら、相続税評価額も1,500万円となります。
不動産評価額が大きく変わる要因
不動産の相続税評価額は、土地の形状・面積・利用状況などによって大きく変わります。
同じ広さや立地の土地でも、評価の仕方次第で数百万円から数千万円もの差が出る場合があります。
以下の項目が、評価額に影響しやすい主な要因です。
間口・奥行きのバランス
間口が狭く奥行きが長い土地や、逆に間口が広すぎる土地は利用価値が下がるため、補正によって評価額が減額されます。
接道状況(幅員・位置)
道路に接している幅が狭い、または接道していない土地は建築制限がかかるため、評価額が低くなります。
地形の不利(傾斜・高低差)
傾斜地や高低差がある土地は、造成費用がかかるため評価額が下がる可能性があります。
用途地域や建築ルール
用途地域によって建築できる建物の種類や高さが制限されるため、評価額に影響します。
敷地の広さ(地積規模による補正)
一定規模以上の広大な土地は、戸建分譲などで減価要因があるため、評価額が減額されます。
土地の形状や接道、利用状況を十分に検討せずに申告すると、本来より高い税額を負担するリスクがあります。
不動産の評価を誤ると過大申告になるおそれがあるため、専門家に相談して評価を受けることが大切です。
不動産相続の税金を減らすために活用できる制度と対策

不動産相続では、特例や控除制度を利用すると税負担を大幅に軽減できる場合があります。
適用要件を満たせば、相続税がゼロになるケースも珍しくありません。
ここでは、知っておくべき主な制度と対策を紹介していきます。
小規模宅地等の特例を使って評価額を大きく下げる
小規模宅地等の特例は、相続した宅地の評価額を大幅に減額できる制度で、相続税の負担を軽減できる制度です。
減額幅は土地の用途によって異なります。
- ・住宅用地(特定居住用宅地):最大80%減(330㎡まで)
- ・事業用地:最大80%減(400㎡まで)
- ・貸付事業用地:最大50%減(200㎡まで)
たとえば、評価額5,000万円の自宅用地なら、評価額が1,000万円まで下がります。
要件を満たさないと適用できないため、事前準備が重要です。
配偶者控除などの軽減制度を組み合わせて負担を抑える
相続税には、基礎控除以外にも軽減制度があり、組み合わせて利用すれば税負担を抑えられます。
代表的な控除制度は次の4つです。
- ・配偶者の税額軽減:法定相続分または1億6,000万円以下なら非課税
- ・未成年者控除:相続人が未成年の場合に控除
- ・障害者控除:相続人が障害者の場合に控除
- ・相次相続控除:短期間に続けて相続が起こった場合の軽減制度
配偶者控除は節税効果が大きい制度の一つですが、次の相続で税負担が重くなる場合があります。
将来を見据えた財産配分を検討しましょう。
不動産評価を見直して適正額に調整する
評価額が高いと感じる場合は、専門家による現地調査や再評価を依頼すると、適正な評価額に調整できる可能性があります。
以下のような見直しを行います。
- ・現地調査で土地の状況を把握
- ・接道・地形など不利条件を評価に反映
- ・用途地域・建築制限を確認
- ・「地積規模の大きな宅地の特例」の適用可否を検証
正しく評価できれば、大幅な節税につながることもあります。
生前の準備を進めて相続時の税負担を軽くする
生前から計画的に準備しておくと、相続時の税負担を軽減できます。
代表的な生前対策は以下のとおりです。
- ・暦年贈与:年110万円まで非課税で贈与できる
- ・相続時精算課税制度の利用:2,500万円まで贈与税が非課税
- ・遺言書の作成:円滑な遺産分割で争いを防ぐ
- ・不動産の整理や売却準備:使う予定のない不動産を早めに処分
ただし、生前贈与は受け取り方によっては逆に税負担が増える場合もあるため、専門家に相談しながら進めましょう。
不動産相続の税金で失敗しないための注意点

不動産相続では、手続きの遅れや評価のミスによって、思わぬ税負担が発生する場合があります。
事前に注意点を押さえておくことで、トラブルを防ぎ、スムーズな相続手続きができるでしょう。
ここでは、失敗しないために知っておくべきポイントを解説します。
相続税の申告期限を意識して準備を進める
相続税の申告期限は「相続開始から10か月」と定められていますが、不動産は現地確認や補正項目の検討が必要なため、評価に時間がかかります。
さらに、遺産分割協議が長引くと、気づいたら期限が迫っていたというケースも少なくありません。
相続開始の早い段階で準備を始めると、余裕を持って手続きを進められます。
納税資金を確保する方法を検討する
相続税は原則として現金で納付する必要があるため、資金不足に備えましょう。
納税資金を確保する主な方法は以下のとおりです。
- ・預貯金や生命保険金を利用
- ・相続した不動産を売却
- ・延納制度を利用(分割払い)
- ・物納制度を利用(不動産で納付)
延納や物納には厳しい要件があるため、早めに相談しましょう。
不動産に強い専門家へ相談してリスクを防ぐ
不動産の相続税評価は、土地の形状や接道状況などによって大きく変わるため、専門的な知識が必要です。
自己判断で申告すると、減額措置を見逃したり、評価額を高く申告したりするリスクがあります。
特に以下のようなケースでは、専門家への相談が欠かせません。
- ・土地の形状が複雑で補正が必要な場合
- ・小規模宅地等の特例の適用を検討している場合
- ・遺産分割で意見が分かれている場合
評価の誤りや特例の見落としを防ぐため、不動産の扱いに詳しい税理士や司法書士のサポートを受けましょう。
まとめ
不動産相続では、相続税・登録免許税・譲渡所得税・固定資産税など複数の税金が発生します。
なかでも相続税は、不動産の評価方法や特例の使い方によって税額が大きく変わるため、正確な評価と制度の理解が欠かせません。
申告期限である10か月を意識しながら早めに準備を進め、専門家のサポートを活用することが、負担を抑えるための最善策となります。
住栄都市サービスでは、不動産評価の見直しや特例適用の可否判断など、相続に必要な手続きを一貫してサポートしています。
相続に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。



