不動産の相続で養子縁組はできる?節税・売却・トラブル防止のポイントを解説
2026.01.05

不動産を相続するとき、「養子縁組をすれば相続税が安くなる」と聞いたことがある方も多いでしょう。
相続税の負担が大きいケースでは、「養子縁組を活用して相続人を増やす」という方法に注目が集まっています。
ただし、目的や手続きを誤ると、節税どころかトラブルの原因になることもあります。
本記事では、不動産相続における養子縁組の仕組みや活用方法、円満な相続を実現するための具体的なポイントを解説します。
目次
養子縁組が相続人や税金に与える影響とは

養子縁組を行うことで、相続人の数や法定相続分が変わり、相続税の負担にも影響が生じます。
ここでは、養子縁組の種類や、養子縁組が相続に与える影響を見ていきましょう。
普通養子縁組と特別養子縁組の違い
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つの制度があります。
| 種類 | 概要 | 相続・税務への影響 |
| 普通養子縁組 | 実親との関係を残したまま、養親との関係を追加 | 実親・養親どちらにも相続権が発生。節税目的で活用されるのは主にこちら |
| 特別養子縁組 | 実親との関係を完全に断ち、養親の子としてのみ扱う | 子の福祉目的であり、節税や相続対策には適さない |
普通養子縁組と特別養子縁組は、目的も法的効果も大きく異なります。
不動産相続や節税対策を目的とする場合は、実親との関係を維持できる普通養子縁組を選ぶのが一般的です。
ただし、どちらの制度を選ぶ場合も、家族の状況や将来の相続方針を踏まえて慎重に判断しましょう。
実際に養子縁組を進める際には、次の点を事前に整理しておきましょう。
- ・養子縁組を行う目的が家族関係の維持・支援にもつながっているか
- ・養子になる人が成年か未成年か、またその生活実態や扶養関係があるか
- ・養子縁組後の戸籍・姓の変更、扶養控除、保険・年金などの影響を把握しているか
- ・養子縁組により、遺留分(最低限の取り分)を持つ相続人が増えることへの対応策を考えているか
これらを確認したうえで、家族の合意を得ながら進めることが大切です。
なお、養子縁組の届け出後は戸籍に反映されるため、税務や登記など各種手続きの変更届も必要です。
専門家に相談して全体のスケジュールを整理すると、安心して相続準備を進められるでしょう。
相続人を増やして節税する
養子縁組を行うと、養子は法律上の「子」として扱われるため、相続人の数が増えます。
相続税の基礎控除は以下の式で計算されます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば、配偶者と実子1人の家庭では控除額が4,200万円ですが、養子を1人迎えると4,800万円まで拡大します。
ただし、節税だけを目的とした養子縁組は認められない場合があるため、注意が必要です。
基礎控除を計算して効果を確認する
養子縁組による節税効果を確認するには、相続税の基礎控除額を試算しておくことが重要です。
基礎控除は相続人が増えるほど控除額も大きくなる仕組みですが、税務上カウントできる養子の人数には上限があります。
- ・実子がいる場合:養子1人まで
- ・実子がいない場合:養子2人まで
上限を超えた養子は控除の対象外となるため注意が必要です。
相続人が増えるリスクを把握する
養子縁組によって相続人が増えると、次のような問題が起きることがあります。
- ・遺産分割協議に参加する人数が増え、話し合いが長期化する
- ・相続割合をめぐって意見が対立する
- ・不動産のように分けにくい資産で不満が生じやすい
節税効果だけを目的とせず、家族関係のバランスを考えたうえで慎重に進めましょう。
不動産を相続するときに養子縁組で節税を狙う方法

不動産の相続では、相続税の負担が大きくなるケースもあります。
養子縁組を上手に活用すれば、相続人の数を増やして基礎控除額を広げることで節税につなげることが可能です。
仕組みを正しく理解し、無理のない方法で活用することが大切です。
不動産の評価を見直して税額を抑える
相続税は、財産の評価額によって大きく変わります。
なかでも不動産は評価方法による差が出やすく、条件次第では数百万円から数千万円の違いが生じることもあります。
不動産評価額の見直しのポイントは次のとおりです。
- ・路線価や地価公示を確認する
- ・土地の形状・利用状況を再評価する
- ・建物の老朽化・用途変更を考慮する
住栄都市サービスでは、不動産相続に強い税理士・不動産鑑定士と連携し、評価額の見直しから節税シミュレーションまでトータルでサポートしています。
形式的な養子縁組を避ける
形式的な養子縁組は、税務署から「節税のみを目的とした行為」と判断されるおそれがあります。
次のようなケースは、税務署から否認される可能性があります。
- ・同居や扶養の実態がない
- ・養子との関係が書類上のみ
- ・節税目的が明らか
否認されると、養子が相続人として認められず、基礎控除の対象外になります。
養子縁組は家族としての絆を築く意思が前提であり、形式だけの手続きでは節税の効果を得られない可能性があります。
相続対策を進める際は、家庭の事情や人間関係を考慮し、専門家の助言を受けながら慎重に行いましょう。
実子と養子の取り分を調整する
養子縁組を行うと、養子は法律上の「子」として実子と同じ相続権を持ちます。
遺産の取り分が変化し、実子が「自分の取り分が減った」と感じてトラブルに発展するケースもあります。
相続人の間で不満が生じると、遺産分割協議が長引き、解決までに時間を要する場合も少なくありません。
トラブルを避けるためには、次のような対策がおすすめです。
- ・養子縁組の目的を家族全員で共有する
- ・遺言書で取り分を明確にする
- ・公正証書遺言など、法的に有効な形で残す
事前に専門家へ相談し、法的な観点からも無理のない相続計画を立てましょう。
養子がいる場合の相続不動産をスムーズに売却するポイント

養子を含む相続では、相続人の人数が増えることで売却の同意や手続きが複雑になります。
売却をスムーズに進めるための3つのポイントを押さえておきましょう。
相続登記を行って所有権を移す
不動産を相続した場合、最初に行うべき手続きは「相続登記」です。
相続登記とは、亡くなった人の名義を相続人の名義へ正式に移す手続きであり、登記を終えなければ不動産の売却や活用ができません。
2024年4月から義務化され、相続開始から3年以内に完了しないと10万円以下の過料が発生します。
相続登記は不動産を円滑に売却するための第一歩であり、早めの対応がトラブルを防ぐ鍵となります。
手続きに不安がある場合は、司法書士など専門家への相談を検討しましょう。
相続人全員から売却に必要な同意を得る
共有で相続登記された不動産を売却するには、相続人全員の同意が必須です。
一人でも反対すると契約は無効になります。
同意形成を円滑に進めるコツは次の3つです。
- ・早い段階で意向を確認する
- ・共有関係を維持するメリットとデメリットを説明する
- ・売却後の資金使途を明確にする
住栄都市サービスでは、売却時の合意形成から契約サポートまで、専門家が伴走します。
売却益を分配して税金を整理する
不動産を相続して売却した際には、売却で得た利益に対して譲渡所得税が課されます。
計算式は次のとおりです。
譲渡所得=売却価格−(取得費+譲渡費用)
各相続人の持分に応じて申告が必要になるため、割合を明確にしておきましょう。
税理士に相談して、相続税と譲渡所得税の両方を整理しておくと安心です。
また、売却後の資金運用にも注意が必要です。
不動産売却によって得た資金は、相続人それぞれの名義で管理されることになります。
共有口座や一時的な代表管理はトラブルの原因となるため、売却代金の振込先や使途を明確に決めておきましょう。
売却後の資金を再投資する場合は、名義や契約書類を明確にしておくと税務上のトラブルを防げます。
家族トラブルを回避しながら安心して相続を進めるには

相続は、家族の信頼関係を保ちながら進めることが何より重要です。
ここでは、トラブルを未然に防ぐ3つの方法を紹介します。
遺言書で不動産の分け方を決める
不動産は現金のように分けにくく、相続トラブルの原因になりやすい資産です。
複数の相続人がいる場合、どの不動産を誰が相続するかを巡って意見が食い違い、話し合いが長引くこともあります。
円満な相続を実現するためには、遺言書を作成して不動産の分け方を明確に示しておくことが大切です。
遺言書に記載すべき内容例を紹介します。
- ・誰がどの不動産を相続するか
- ・共有名義にする場合の管理方法
- ・相続後の固定資産税や修繕費の分担方法
遺言書を作成しておけば、相続人同士の誤解や争いを防ぎやすくなります。
家族信託を利用して管理を任せる
親の高齢化に伴い、判断力が低下すると不動産の売却や管理が困難になる場合があります。
判断力の低下によって手続きが滞るリスクに備える方法として有効なのが「家族信託」です。
家族信託の主なメリットは次の3つです。
- ・財産の管理・運用を信頼できる家族に任せられる
- ・認知症発症後も、売却や修繕をスムーズに進められる
- ・成年後見制度より柔軟に設計できる
契約内容を設計する際は、弁護士や司法書士など専門家に相談しましょう。
不動産相続の専門家に相談する
不動産相続では、税務・登記・売却など複数の手続きが必要です。
専門家のサポートを受けることで、誤りを防ぎ、手続きを効率化できます。
まとめ
不動産の相続における養子縁組は、節税と家族の円満を両立するための有効な方法です。
ただし、節税のみを目的とした形式的な養子縁組や実子と養子との間の不公平な配分がトラブルの原因になることがあります。
養子縁組で基礎控除を拡大しつつ、実子と養子の取り分を事前に話し合い、納得のいく形で整理しましょう。
また、相続登記や不動産の売却、税申告などは複雑な手続きが伴うため、早い段階から専門家に相談して正確に進めることが安心につながります。
住栄都市サービスでは、節税対策・不動産評価・売却支援までワンストップで対応しています。
不動産相続に不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
