相続した土地と現金はどう分割する?4つの分け方とメリット・デメリット
2025.11.18

相続した土地と現金の分け方は、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。特に土地は現金のように均等に分けられないため、分割方法を誤ると相続人同士のトラブルに発展することも。
本記事では、相続した土地や現金の分け方・メリットとデメリット、起こりやすいトラブルなどを紹介します。
目次
相続した土地・現金の分け方とメリット

相続財産には、主に4つの分け方があります。土地や現金、預貯金など、財産の性質や相続人の希望によって適した方法は異なります。ここでは、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つの方法と、それぞれのメリットを見ていきましょう。
現物分割|そのままの形で分ける方法
現物分割とは、土地や預金、現金などの遺産をそのままの形で相続人に分ける方法です。
例えば、預貯金を長男が、不動産を次男が相続するなど、財産を実物のまま引き継ぎます。名義変更だけで手続きが完了するため、シンプルで一般的な分割方法といえるでしょう。思い出の詰まった家をそのまま残したい場合にも適しています。
ただし、土地など形や価値が異なる財産を扱う場合は、公平性を保つために専門家の助言を得ながら進めることが大切です。
代償分割|1人が取得し、他の相続人に代償金を支払う方法
代償分割とは、特定の相続人が不動産などの財産を相続し、その代わりに他の相続人へ金銭(代償金)を支払う方法です。
例えば、3,000万円の土地を長男が相続し、次男へ1,500万円を支払うといった形で、公平な分割を実現します。同居していた実家や事業用地を残したい場合に有効で、売却せずに財産を維持できるのがメリットです。家業継続や小規模宅地の特例が適用できるケースもあります。
ただし、代償金を支払うための資金が必要となるため、現金の用意や評価額の算定は慎重に行うことが求められます。
換価分割|売却して現金化し分配する方法
換価分割とは、相続した土地などを売却し、その売却代金を相続人で分け合う方法です。現物では分けにくい財産を現金化することで、公平な分割ができる点がメリット。
例えば、2人の相続人で3,000万円の不動産を売却した場合、それぞれ1,500万円ずつ分配するといった形になります。不動産を手放す必要がありますが、売却によって相続人全員が納得しやすく、手続きも明確に進めやすい方法です。相続人全員の合意を得たうえで進めることがポイント。
共有分割|複数人で共同所有する方法
共有分割とは、相続した不動産を相続人全員で共有する分割方法です。各相続人の法定相続分に応じて持ち分を設定するため、公平に分けられるのが特徴。特定の相続人に譲りたくない場合や、売却が難しい土地をそのまま残したい場合に有効な方法といえます。
短期的にはトラブルを避けやすい一方、将来的に売却や建て替えを行う際には全員の同意が必要になるなど、意思の統一が求められます。そのため、共有後の管理方針を明確にしておくことが重要です。
相続した土地・現金の分け方のデメリット

土地や現金の分割方法にはそれぞれメリットがありますが、一方で注意すべきデメリットも存在します。特に、不動産を含む相続では、評価額の違いや資金力の差、相続人同士の意見の食い違いからトラブルに発展するケースも少なくありません。
ここでは、4つの分割方法における主なデメリットを詳しくみていきましょう。
現物分割では評価の不均衡が生じやすい
現物分割は財産をそのままの形で分けられる方法ですが、土地の場合は区画ごとに価値の差が出やすい点が課題です。
同じ敷地でも日当たりや形状、接道状況によって評価額が大きく変わります。整形地や道路に面した土地は価値が高く、奥まった不整形地は資産価値が下がる傾向があります。そのため「誰がどの区画を相続するか」「どっちが得か」を巡って不公平感が生じ、相続人同士のトラブルに発展するケースも。
公平な分割を行うには、専門家による客観的な不動産評価をもとに検討することが大切です。
代償分割では代償金額や支払い能力で揉めやすい
代償分割では、不動産の評価額や代償金の支払い能力をめぐってトラブルになることが多い傾向にあります。
遺産分割時の不動産評価には、路線価評価・固定資産税評価・不動産鑑定評価などがありますが、一般的には「時価評価(実勢価格)」が用いられます。これは「相続した不動産を実際に売却するとどの程度の金額になるか」を基準にすることで、相続人全員にとって公平とされるため。
ただし、相続税の計算では「相続税評価額」が採用されるのが原則であり、「時価」との間に差が生じることも少なくありません。どちらの基準を採用するかで認識が食い違うと、代償金の金額設定に不満が生じやすくなります。
また、現金がない相続人が代償金を払えないケースもあり、不満や対立につながりがち。公平な分割を実現するためには、専門家の助言を受けつつ評価基準を明確にすることが重要です。
換価分割では売却価格や時期でトラブルになりやすい
換価分割は公平に分けやすい一方で、売却価格や時期をめぐって意見が対立しやすいのが難点です。「もっと高く売りたい」「早く現金化したい」など相続人の希望が一致しないと、売却手続きが進まないこともあります。
さらに、売却には全員の同意が必要なため、ひとりでも反対すれば換価分割自体が成立しません。価格交渉や買い手選定に時間がかかることも多く、長期化すれば地価の変動リスクも高まります。
トラブルを避けるには、複数の不動産会社に査定を依頼し、客観的な相場をもとに話し合うことが重要です。
共有分割では将来の売却・管理で意見が対立しやすい
共有分割は一時的な解決策としては有効ですが、長期的にはトラブルを招きやすい方法です。
土地を相続人全員で共有するため、売却・賃貸・リフォームなどを行う際には全員の同意が必要になります。「売りたい」「貸したい」「残したい」と意見が分かれると話し合いが進まず、土地が放置されるケースも少なくありません。
さらに、共有者の一人が亡くなると持ち分が次世代に引き継がれ、所有者が増えて権利関係が複雑化します。その結果、「所有者不明土地」となるリスクもあるため、早めに共有状態を解消し、他の分割方法を検討することが重要です。
相続財産が土地の場合は現物と現金どちらが良い?

相続した土地を「そのまま所有する」か「売却して現金化する」かは、今後の利用目的と家族の状況によって判断が分かれます。
土地のまま残せば、将来的に活用できる可能性や思い出を引き継げるというメリットがありますが、固定資産税や維持費などの負担が続く点がデメリットです。
一方、現金化すれば相続人間で平等に分けやすく、トラブルを防ぎやすい反面、土地の売却時期や価格によって手取り額が変動します。感情面と経済面の両方を考慮し、「残す理由」と「手放すリスク」を比較して判断することが大切です。
土地や現金を相続する際に起きやすい6つのトラブルと回避方法

相続では、財産そのものよりも「人間関係」が原因でトラブルに発展することが多くあります。特に、土地といった分け方の難しい財産は、相続人の思惑や事情が絡み合い、話し合いが長期化するケースも少なくありません。
ここでは、遺産分割の際に起きやすい代表的な6つのトラブルと、その回避方法を紹介します。
1.遺言がないと相続人同士の合意形成が難航しやすい
遺言がない場合、遺産の分け方は相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決める必要があります。
相続人の意見が食い違えば合意に至らず、協議が長期化したり、家庭裁判所の調停に発展したりすることも少なくありません。特に、兄弟姉妹が多い、前妻との間に子がいるなど、相続人の範囲が複雑なケースでは、話し合いそのものが進まなくなることもあります。
こうした事態を防ぐには、生前に遺言書を作成し、財産の分け方を明確にしておくことが有効な対策です。遺言があれば、相続人間の主張や感情の対立を最小限に抑え、手続きをスムーズに進められます。
2.不動産ばかりで現金が少ないと不公平感を生む
遺産の大半が不動産で現金が少ないと、「取り分の不公平感」からトラブルが生じやすくなります。不動産は均等に分けるのが難しいため、現金化する換価分割と、不動産を取得した相続人が他の相続人へ金銭を補填する代償分割で公平性を確保しましょう。
また、相続発生後に納税や代償金の原資に困らないよう、被相続人が生前に死亡保険金や預金などの流動資金を確保しておくことが有効です。これにより、不動産の急な売却による安値での処分を防げます。
3.生前贈与・特別受益で揉める
特定の相続人だけが生前に多額の贈与を受けていた場合、他の相続人から「特別受益の持戻し」を巡って不満が噴出します。
トラブル回避のためには、まず贈与の有無、理由を家族間で包み隠さず開示し、遺産に持ち戻して計算するのかどうか(持戻し免除の意思があるか)を文書で明確にしておきましょう。
なお、特別受益や寄与分の主張には時効があるため、相続開始後は早めに検討・着手することが肝心です。
4.寄与分では介護や貢献度をめぐって争いが起きやすい
寄与分は、被相続人の介護や事業手伝いなどで財産の維持・増加に貢献した人に、法定相続分より多くの取り分を認める制度です。
しかし「どの程度の貢献を寄与とみなすか」「いくら上乗せすべきか」という判断は主観的になりやすく、相続人同士の意見が対立しやすいポイント。特に同居して介護を担った相続人と、離れて暮らす相続人の間で「当然の世話か特別な貢献か」という線引きが揉め事の火種になります。
公平に評価するためには、介護や支援の実績を記録に残し、必要に応じて第三者(専門家)を交えて話し合うことが有効です。また、被相続人が遺言書で寄与分を考慮した分割方針を示しておくと、トラブルを大幅に防げます。
5.相続人の範囲が複雑・連絡不能の場合に遺産分割協議が停滞する
相続人の範囲が複雑な場合や、相続人で連絡が取れない人がいる場合、遺産分割協議が停滞しやすくなります。
例えば、被相続人に前妻との間の子どもがいるケースでは、相続権は他の子どもと同じように認められます。しかし疎遠になっていることが多く、連絡先の特定に時間がかかることも。戸籍の附票を取得すれば住所を調べることは可能ですが、調査には手間と期間を要します。
また、面識のない相続人同士で合意形成を図るのは容易ではありません。こうした事態を防ぐには、被相続人が生前に遺言書を作成し、誰にどの財産を相続させるかを明確にしておくことが重要です。
6.判断能力の低下・認知症がある
相続人に認知症などで判断能力の問題があると、有効な意思表示ができず、遺産分割協議は法的に成立しません。既に問題が発生している場合は、家庭裁判所に成年後見人の選定を申し立て、選任された後見人が代理権をもって手続きを進めます。
将来の相続停滞を防ぐための備えとしては、故人が元気なうちに、任意後見契約や財産管理等委任契約を結んでおくのが最善。将来に向けて代理人の権限や報酬を明確に取り決めておくと、判断能力が低下しても、本人の意思に沿った手続きが可能になります。
相続した土地・現金を相続する手続きの流れ

相続は感情的な問題だけではなく、法的な手続きも多く発生します。スムーズに進めるためには、全体の流れを把握しておくことが大切です。遺言書の確認から名義変更までの一連の流れを解説します
1.遺言書の有無を確認する
相続手続きの第一歩は、遺言書があるかどうかを確認することです。遺言書があれば、その内容が法定相続分よりも優先されます。
主な種類は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つで、保管場所が異なります。遺言書が見つかった場合は勝手に開封せず、家庭裁判所で検認を受けてから内容を確認しましょう。遺言書の有無を早めに把握することで、相続手続き全体の方針が明確になります。
| 種類 | 特徴 | 保管場所 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 本人が自筆で作成 | 自宅または法務局 |
| 公正証書遺言 | 公証人が作成 | 公証役場 |
| 秘密証書遺言 | 署名・押印のみ本人で代筆可 | 自宅など本人保管 |
2.相続人と財産を正確に確定する
相続をスムーズに進めるためには、まず「誰が相続人なのか」「どんな財産があるのか」を正確に把握することが欠かせません。
相続人の確定には、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得して、法定相続人を漏れなく確認する必要があります。また、相続財産には土地や現金だけではなく、借金やローンなどの負債も含まれるため、プラスとマイナスの両方を把握しておくことが重要です。
土地の評価額を知りたい場合は、以下の方法で確認できます。
| 確認方法 | 概要 |
|---|---|
| 固定資産税課税明細書 | 毎年送付される |
| 固定資産課税台帳の閲覧 | 市区町村役場で確認できる |
| 固定資産税評価証明書 | 役所で発行を申請して取得 |
3.遺産分割協議をする
遺産分割協議は相続人全員が集まって、土地や現金などの財産をどのように分けるかを話し合う重要な手続きです。
全員の合意が得られたら、その内容を正式に記した遺産分割協議書を作成し、すべての相続人が署名・押印(実印)します。協議書は登記申請や預貯金の名義変更など、後の手続きでも必要になるため、内容の正確性が大事です。
一方で、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停や審判を申し立てることもできます。弁護士や司法書士などの専門家に相談すれば、感情的な対立を避けながら、法的に有効な形で手続きを進めることが可能です。
4.不動産の名義を変更する(相続登記)
遺産分割が完了したら、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する相続登記を行います。
2024年4月から相続登記が義務化されていて、相続を知った日から3年以内に手続きを完了させなければなりません。登記を怠ると最大10万円の過料が科される可能性があります。
書類作成や確認に不安がある場合は、司法書士に依頼するのがおすすめです。報酬費用がかかりますが、手続きの手間や時間を取れない場合や難しい場合にはスムーズに正しく手続きが進みます。
相続をスムーズに進めるためのポイント

相続のトラブルを避けるには、事前の準備と冷静な対応が欠かせません。費用負担や評価額を明確にし、早めに話し合いを進めることが大切です。ここでは、円滑に手続きを進めるための実践的なポイントを紹介します。
相続税や登記費用などの負担を事前に確認する
相続では、不動産の評価額によって相続税や登記費用が大きく変わります。基礎控除額によっては相続税がかからないことも考えられますので、「いくらまで無税になるのか」を早めに把握しておくことも重要なポイント。
手続きを進める前に、税理士や司法書士に相談しておおよその費用を把握しておくと安心です。予算感を共有しておくことで、分割の方針を決めやすくなり、想定外の支出によるトラブルも防げます。
専門家に相談して公平な評価を行う
不動産の価値は地域や立地条件によって変動するため、相続人同士の話し合いだけで判断するのは危険です。
不動産鑑定士や税理士など、第三者の専門家に依頼することで、客観的で公平な評価が得られます。感情的な対立を防ぎ、納得感のある相続を実現するためにも有効です。
早めに協議を始め、感情的な対立を避ける
相続問題は時間が経つほど複雑化し、感情のすれ違いが起きやすくなります。特に不動産を含む相続では、相続登記や税の申告期限もあるため、早めの話し合いが重要です。
冷静なうちに協議を進め、必要に応じて専門家を交えながら、全員が納得できる形を目指しましょう。
土地と現金の相続は分け方が重要!早めの準備と話し合いで円満に進めよう

土地と現金の相続は、資産や相続人の状況によって最適な分け方が異なります。
特に土地は分割が難しく、不公平感や対立を招きやすい点が悩みどころ。だからこそ、早めに専門家へ相談し、評価方法や負担のバランスを踏まえた方針を決めることが重要です。
遺言書の準備や家族間の話し合いが進んでいれば、トラブルを防ぎ、公平で納得のいく分割が実現しやすくなります。円満な相続のために、事前準備をしっかり整えておきましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

