遺贈とは?不動産を含む相続との違い、手続き・税金を完全ガイド
2025.11.03

遺言書を目にしたとき、「遺贈」という言葉に戸惑う方は少なくありません。
「相続と何が違うのか」「税金はどうなるのか」と疑問を感じる人も多いでしょう。
遺贈とは、故人が遺言によって財産を譲る制度です。
相続と似ていますが、法律上の扱いや手続きには大きな違いがあります。
特に不動産が含まれる場合は、登記や税金の負担が重くなるため注意が必要です。
本記事では、遺贈の基本的な仕組みから相続との違い、具体的な手続き、かかる税金まで詳しく解説します。
大切な方の意思を正しく受け取るために、ぜひ参考にしてください。
目次
遺贈とは

まずは遺贈の基本を押さえましょう。
言葉の意味や法律上の位置づけを理解すると、相続との違いがはっきり見えてきます。
ここでは遺贈の定義と種類について解説していきます。
遺贈とはどんな制度?
遺贈とは、遺言によって特定の相手に財産を引き継がせる制度です。
相続との大きな違いは、財産を受け取る相手に制限がない点にあります。
相続では法定相続人(配偶者・子・親・兄弟姉妹)しか財産を受け取れませんが、遺贈なら血縁関係のない友人や世話になった方、さらにはNPO法人や学校などの団体にも財産を譲れます。
なお、遺言者の意思だけで成立するため、受け取る側の事前の合意は必要ありません。
財産を残す人を「遺贈者(いぞうしゃ)」、受け取る人を「受遺者(じゅいしゃ)」と呼びます。
遺贈と相続・贈与の違い
遺贈と相続・贈与との最大の違いは、財産を受け取れる相手の範囲にあります。
以下の表で、特徴を整理して比較してみましょう。
| 比較項目 | 遺贈 | 相続 | 贈与 |
| 基礎 | 遺言で譲る | 法律に基づいて自動的に承継される | 生前に契約で渡す |
| 受取人の範囲 | 制限なし(第三者・団体も可) | 法定相続人のみ | 制限なし |
| 同意の必要性 | 不要 | 不要 | 双方の合意が必要 |
| 主な税目 | 相続税 | 相続税 | 贈与税 |
| 不動産登記 | 相続人と受遺者で共同申請が原則 | 相続人の単独申請可 | 受贈者側で申請 |
| 放棄の可否 | 特定遺贈:可(意思表示)/包括遺贈:3か月以内に家庭裁判所 | 3か月以内に家庭裁判所 | 契約後は原則不可 |
| 備考 | 死因贈与は相続税課税だが契約のため放棄不可 |
遺贈は、相続より自由度が高い反面、不動産の登記や税負担が大きくなる傾向があります。
どの方法が適しているかは、財産の内容や目的に応じて専門家に確認すると安心です。
遺贈には「包括遺贈」「特定遺贈」の2種類がある

遺贈には財産の指定方法によって2つの種類があります。
それぞれ手続きや受遺者の負担が大きく異なるため、違いを理解しておきましょう。
財産の一部をまとめて渡す「包括遺贈」
包括遺贈とは、遺産全体やその一部の割合をまとめて譲る方法です。
「全財産の2分の1を〇〇学校に」といった形で指定できます。
相続に近い性質を持ち、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も同じ割合で引き継ぐ点が特徴です。
受遺者は遺産分割協議に参加する必要があり、負債が多い場合は相続放棄も選択できます。
ただし、放棄の手続きは自分が包括遺贈を受けたと知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てが必要です。
期限を過ぎると原則として放棄できません。
特定の財産を指定して渡す「特定遺贈」
特定遺贈とは、「この不動産を長男に」「この預金口座を孫の〇〇に」といったように、具体的な財産を指定して渡す方法です。
包括遺贈とは異なり、マイナスの財産(借金など)を引き継ぐ必要がなく、指定された財産のみを受け取れます。
受遺者は遺産分割協議に参加する必要がなく、手続きも比較的シンプルです。
放棄したい場合も家庭裁判所への申し立ては不要で、相続人に対して受け取らない意思を伝えるだけで済みます。
なお、「負担付遺贈」と呼ばれる形式もあります。
「財産を渡す代わりに一定の義務(例:ペットやお墓の管理など)を果たす」という条件を付ける方法です。
しかし、一般的には利用頻度が少なく、内容が複雑になりやすいため、専門家と相談して慎重に判断する必要があります。
遺贈の手続きはどう進む?基本の流れを解説

遺贈を実現するためには、遺言書の準備から登記・税金の申告まで、複数の段階があります。
ここでは、遺言書の確認から財産の受け取りまで、基本的な流れを順に説明します。
STEP1:遺言書の作成と保管
遺贈を行うには、法的に有効な遺言書の作成が必須です。
遺言書には、主に次の2つの形式があります。
自筆証書遺言
自分で全文を書き、日付・署名・押印が必要です。形式を誤ると無効になることがあるため、法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用すると安心です。
公正証書遺言
公証人が作成・保管する方式です。形式不備や紛失の心配がなく、確実性が高いため、不動産や高額な財産を遺贈する場合におすすめです。
目的や財産の内容に合わせて、確実に実現できる形式を選びましょう。
STEP2:遺言書の開示/検認
遺言者が亡くなると遺言の効力が発生します。
自筆証書遺言(法務局保管分を除く)の場合、開封前に家庭裁判所で検認手続きが必要ですが、公正証書遺言は検認不要です。
STEP3:受遺者(財産を受け継ぐ人)の意思確認
遺言書の内容を受遺者に通知し、遺贈を受けるか放棄するかの意思を確認します。
包括遺贈の場合は3か月以内に決定する必要があります。
STEP4:遺言執行者による手続き
遺言執行者が指定されている場合、その者が相続人を代表して不動産登記の名義変更や金融機関の対応を行います。
遺言執行者がいない場合は、家庭裁判所に選任を申し立てることもあります。
STEP5:所有権移転登記(不動産の場合)
不動産を遺贈する際は、法務局で所有権移転登記を申請します。
登記しないと権利を第三者に主張できません。
令和5年4月以降、相続人への遺贈は単独で登記申請が可能になりました。
STEP6:税務申告・納付
相続税の申告が必要な場合、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に税務署へ申告し、納税します。
遺贈にかかる税金は?知っておきたい3つの注意点

遺贈を受ける際には、相続税をはじめとしたさまざまな税金が発生します。
特に不動産を含む場合は、評価額の算定によって支払う税金が大きく変わるため注意が必要です。
相続税がかかる
遺贈で取得した財産は、相続と同様に相続税の課税対象となります。
注意点は、相続人以外が財産を受け取る場合、相続税額が2割加算される仕組みになっていることです。
たとえば、親しい友人や団体などへの遺贈では、思っていた以上に税額が増えるケースもあります。
不動産評価が税額を左右する
不動産を遺贈で受け取る場合、不動産の評価額が税金を決定する最も重要な要素です。
評価額が高ければ相続税も増えるため、専門家の査定を受けることをおすすめします。
不動産取得税や登録免許税などの負担がある
不動産を遺贈された場合、登記手続き時に「登録免許税」がかかります。
相続人への遺贈なら0.4%ですが、相続人以外なら2%です。
さらに、相続人以外が遺贈を受けた場合は「不動産取得税」も課税されるため、事前に把握しておきましょう。
遺贈を行うときに注意したいトラブルと対策法

遺贈は相続人以外にも財産を残せる便利な制度ですが、使い方を誤るとトラブルの原因になります。
ここでは主なトラブル事例と、それを防ぐための対策を紹介します。
遺言書が無効にならないように備える
遺言書に形式上の不備があると、遺贈そのものが無効になってしまいます。
自筆証書遺言では日付の記載漏れや押印忘れ、財産の特定が不明確といった理由で無効となるケースが少なくありません。
確実に遺贈を実現するには、公証人が作成する公正証書遺言を選ぶとよいでしょう。
遺留分トラブルを防ぐ
相続人の遺留分を侵害するような遺贈を行うと、侵害された相続人から「遺留分侵害額請求」を受けるおそれがあります。
遺留分侵害額請求とは、金銭での賠償を求める権利で、受遺者や他の相続人が支払い義務を負います。
遺留分トラブルを防ぎたい場合は、弁護士などの専門家に相談して遺留分に配慮した遺言書を作成することをおすすめします。
不動産の評価や名義変更で失敗しないようにする
不動産を遺贈する場合、評価誤差や登記の遅れによって税務申告が遅れや売却ができなくなることもあります。
2024年4月から相続登記が義務化されており、3年以内に手続きしないと過料の対象となる点にも注意が必要です。
不動産を遺贈するときの主な3つのポイント

不動産は高額な財産であり、遺贈する際には特有の注意点があります。
トラブルを避け、確実に遺贈を実現するため、押さえておくべき重要なポイントを解説します。
不動産の評価を見直す
不動産の評価額は土地の形状や立地条件などにより複雑で、専門家によって評価が異なる場合があります。
評価方法を誤ると本来より高い相続税を支払うことになりかねません。
評価減の特例や土地形状による調整など、節税につながる見直しを行うことが重要です。
遺贈の手続きを専門家と連携して進める
不動産の遺贈では、登記・相続税申告・遺言書作成など複数の専門手続きが必要です。
司法書士・税理士・弁護士といった不動産に精通した士業と連携することで、手続きのミスや漏れを防げます。
特に相続税申告は期限があるため、早めに相談しましょう。
売却を検討するときは税制を確認する
遺贈された不動産を売却する際は、譲渡所得税や特例の有無を確認しましょう。
「相続財産の譲渡所得の特別控除」を活用すれば、最大3,000万円の控除を受けられる場合もあります。
売却のタイミングや方法によって税負担が変わるため、税理士などの専門家へ相談がお勧めです。
まとめ
遺贈は、自分の意思で財産を誰にどのように引き継ぐかを決められる制度です。
相続人以外の人にも渡せますが、税金や手続きが複雑なため、正確な知識が欠かせません。
特に不動産を遺贈する場合は、評価方法や申告の仕方によって税額が大きく変わります。
専門家のサポートを受け、節税や円滑な手続きを進めましょう。
住栄都市サービスでは、不動産評価に強い税理士・司法書士・弁護士が連携し、節税や活用、売却のご相談までワンストップで対応します。
不動産の遺贈・相続でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
あなたの想いを確実に次の世代へつなげるお手伝いをいたします。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。




