内縁の妻は遺産を相続できない?引き継ぐ5つの方法や注意点を解説
2025.11.11

内縁の妻は法定相続人に含まれないため、遺産を相続できません。ただし、生前に対策をすることで遺産を渡す方法はあります。
本記事では、内縁の妻に関する相続権と遺産の引き継ぎ方法を解説します。注意点もまとめているので、内縁関係でも財産を遺したいと考えている方は参考にしてみてくださいね。
目次
内縁の妻は遺産を相続できない?

内縁の妻は法定相続人にはなれないため、パートナーの遺産を相続できません。内縁の妻との間に子どもがいる場合は、被相続人である父親が認知することで、その子どもには相続権が発生します。ここでは内縁の妻とその子の相続権について見ていきましょう。
相続権はない
内縁の妻には相続権がありません。内縁関係とは、婚姻届を出していないものの、夫婦のように生活している男女のこと。事実婚とも呼ばれますが、法律上は正式な婚姻とは認められません。
たとえ長年一緒に暮らして財産を築いていたり、子どもがいたりしても、内縁の関係は法定相続人には含まれないため、死亡したパートナーの財産を自動的には受け取れないのです。また、婚姻関係にある配偶者が受けられる控除や特例などの優遇措置も適用されません。
内縁の妻の子には相続権がある
内縁の妻との間に生まれた子どもも、原則として相続人にはなれません。ただし被相続人である父親がその子どもを「認知」すれば、正式な子どもとして相続権が認められます。
認知されると実子と同じ立場で相続でき、相続分も変わりません。認知の方法は、役所への認知届や遺言による遺言認知があります。
内縁の妻に遺産を引き継ぐ5つの方法

内縁の妻は相続人にはなれませんが、生前に対策をすることで遺産を受け取ることは可能です。ここでは内縁の妻に遺産を引き継ぐ方法を解説します。
1.生前贈与をする
内縁の妻に財産を渡す方法の一つが生前贈与です。贈与は、法律上の婚姻関係や相続権の有無に関わらず誰にでも行えるので、内縁関係にあっても遺産を引き継げます。
ただし贈与した金額が年間110万円を超える場合は、贈与税の申告が必要です。また贈与しきれなかった分を、相続として内縁の妻が受け取ることはできないため注意しましょう。
2.遺言書によって遺贈する
遺贈も内縁の妻に財産を渡す方法の一つです。遺贈とは、相続人でない人に対して、遺言によって財産を無償で譲ること。遺言書を作成する際は、自筆遺言よりも公正証書遺言として公証人の立ち会いのもとで作成すると、内容の不備で無効になるリスクを減らせます。
ただし、財産を譲る場合は法定相続人の最低取り分である遺留分を侵害しないように注意しなければなりません。詳細は後述します。
3.特別縁故者と認められる
内縁の妻が遺産を受け取る方法の一つに、特別縁故者として認められる手段があります。これは、被相続人に法定相続人がいない場合に限り、特別に親しい関係にあった人が遺産を受け取れる制度です。
特別縁故者として認められるには、以下のような条件を満たす必要があります。
- ・被相続人と生計を共にしていた
- ・被相続人の療養・看護を無償で行っていた
- ・そのほか、特別な縁故がある
認定を受けるには家庭裁判所への申し立てが必要です。
4.生命保険の受取人に設定する
内縁の妻に財産を残す方法として、生命保険の活用もあります。生命保険の受取人に内縁の妻を指定しておくと、被保険者が亡くなった際に保険金を直接受け取れます。
保険金は相続税の対象にはなりますが、受取人固有の財産として扱われるため、遺留分の請求対象にならない点がメリットです。
5.婚姻関係を結ぶ
内縁の妻に遺産を確実に引き継ぐ方法は、婚姻届を提出して法律上の配偶者になることです。内縁の状態では相続権は認められないため、いくら長年一緒に暮らしていても財産は受け取れません。
亡くなる前に正式な夫婦になれば、たとえ婚姻期間が短くても配偶者として扱われ、相続権が発生します。内縁関係を続ける理由はさまざまですが、遺産相続を考えるなら法律婚にするのが有利です。
内縁の妻が遺産を引き継ぐ際の注意点

内縁の妻が遺産を引き継ぐ場合、内縁関係であることを証明できるようにしておきましょう。また法律上の配偶者と異なり、税負担が大きくなることには注意。遺留分についても理解しておくことが大切です。
1.内縁関係にあることがわかる書類を用意する
内縁の妻が財産を引き継ぐ際は、内縁関係にあったことを証明できるようにしておくと手続きがスムーズです。特別縁故者として財産を受け取る場合や、遺族年金を請求する場合などに必要となることがあります。
方法としては、役所に届け出をして住民票に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載してもらい、同一世帯として登録しておくと内縁関係を書面で確認できます。
2.相続税負担が2割増える
相続税には、法律上の配偶者と一親等の親族以外の者が遺産を受け取る場合に、通常より2割多く課税される仕組みがあります。内縁の妻は戸籍上の配偶者ではないため、この2割加算の対象に。
ちなみに、法律上の配偶者なら配偶者控除が受けられるため、一定額までは相続税がかかりません。内縁関係では、思った以上に税金がかかってしまうケースがあるので注意が必要です。
3.相続税の控除や特例は対象外となる
法律上の配偶者には、相続税を大幅に軽減できる制度がいくつか用意されています。しかし内縁の妻は法定相続人とは認められないため、制度の適用は受けられません。
代表的な優遇措置には以下のようなものがあります。
- ・相続税の基礎控除
- ・配偶者控除
- ・小規模住宅地等の特例
- ・障害者控除
内縁の妻は前述の2割加算同様、税負担が大きくなりやすいでしょう。
4.遺留分の侵害に気をつける
内縁の妻が遺贈や生前贈与で財産を受け取る際、遺留分に注意が必要です。遺留分とは、民法で規定されている「相続人が最低限受け取れる取り分」のこと。
内縁の妻への遺贈や贈与によって、他の相続人の遺留分を侵害してしまった場合、遺留分侵害額請求をされ費用負担が発生する可能性があります。なお、内縁の妻自身には相続権も遺留分も認められないため、遺留分の主張はできません。
内縁の妻の相続についてよくある質問

ここでは相続に関連して、内縁の妻についてよくある質問に回答します。
内縁の妻の定義は?何年暮らせば認められる?
内縁の妻という言葉には、法律上の明確な定義はありません。また何年暮らせば内縁関係を認められるといった定めもなく、何年生活をともにしたとしても相続権が発生することはありません。
内縁の妻でも遺族年金を受け取れるって本当?
内縁の妻でも遺族年金を受け取れる可能性があります。遺族年金は、被保険者(夫)が亡くなったときにその収入で生活していた遺族に支給される制度です。
本来は法律上の配偶者が対象ですが、次のような条件を満たせば受給が認められることもあります。
- ・内縁関係にあったことを証明できること
- ・亡くなったパートナーの収入によって生計を維持していたことを示せること
内縁の妻に配偶者居住権は認められる?
2020年4月の民法改正で「配偶者居住権」や「配偶者短期居住権」が導入され、亡くなった夫名義の自宅に妻が引き続き住めるようになりました。しかし、この制度は法律上の配偶者のみが対象です。
内縁の妻には適用されないため、内縁の夫が亡くなった場合は夫の相続人から退去を求められる可能性があります。安心して住み続けるには、遺言書や贈与など事前に対策しておきましょう。
内縁の妻には相続権がないが、遺産を受け取る方法はある

内縁の妻は法定相続人としては認められないため、相続権はありません。
ただし、生前贈与や遺言書による遺贈、生命保険金の受取人指定などにより遺産を受け取ることは可能です。その際は内縁関係を証明できるようにしましょう。また、税負担が大きくなること、遺留分の侵害に注意しましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。


