相続権とは?法定相続人の範囲や優先順位、割合など徹底解説
2025.11.07

相続権とは、亡くなった人の財産を法律に基づいて受け継ぐ権利のことです。民法では、誰が相続人になるか、優先順位が定められています。
本記事では、相続権の基本となる法定相続人の範囲や優先順位、具体的な相続割合についてわかりやすく解説します。相続トラブルを避けるためにも、正しい知識を身につけておきましょう。
目次
相続権とは?まずは基礎知識をおさえよう

相続権は、亡くなった方の財産や債務を受け継ぐ法律上の権利です。まずは基礎知識を押さえ、スムーズな相続につなげましょう。
亡くなった方の財産を受け継ぐ権利
相続権とは、民法で定められた法定相続人が、亡くなった方の財産を引き継ぐ権利のことを指します。現金や不動産、株式などのプラスの財産だけではなく、借金や債務などマイナスの財産も引き継ぎの対象です。
トラブルを避けるためにも、相続する財産の内容を正確に把握することが欠かせません。
法定相続人の範囲は民法で定められている
法定相続人とは、民法で定められた財産を相続できる人で、配偶者と一定の血族が該当します。血族には順位や相続分のルールがあり、内縁関係や元配偶者は含まれないため注意が必要です。
万が一の相続に備え、事前に誰が相続人になるのかを正しく理解しておきましょう。次の章で詳しく説明します。
相続権はどこまである?法定相続人の範囲と順位

相続が発生したとき、「誰に相続権があるのか」は民法で明確に定められています。特に配偶者は常に相続人となりますが、それ以外の親族には優先順位があります。この章では、法定相続人の範囲と、順位ごとの基本的な考え方をわかりやすく解説します。
配偶者は常に相続権がある
被相続人と法律婚をしている配偶者であれば、必ず相続人になります。一方、内縁関係や事実婚のパートナー、離婚した元配偶者には相続権はありません。
相続権は戸籍上の婚姻関係に基づくため、法律婚かどうかが重要な判断基準となります。
配偶者以外は民法で相続順位が決まる
法定相続人は配偶者と血族が対象と民法で定められています。相続順位は以下の通りです。
| 順位 | 相続人の種類 |
|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 |
| 第1順位 | 直系卑属(子や孫、ひ孫など) |
| 第2順位 | 直系尊属(父母や祖父母、曾祖父母など) |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(亡くなっている場合には甥姪) |
上位がいれば、下位には相続権はありません。
相続人が亡くなっていた場合は、代襲相続となります。代襲相続とは、本来相続人となるはずの人が死亡していた際、その人の直系卑属が代わりに相続する制度です。例えば、子が亡くなっていれば孫が相続、兄弟姉妹が亡くなっていれば甥姪が相続します。
さらに孫が既に亡くなっている場合は、ひ孫が再代襲します。ただし甥姪が亡くなっていた場合、再代襲は認められません。割合(法定相続分)は民法で定められていますが、話し合いで変更することも可能です。
相続割合はどのくらい?ケース別の具体例

この章では、相続人の組み合わせや人数によって変わる相続割合の考え方を解説します。配偶者の有無や相続順位による割合の違いを理解し、具体例で確認しましょう。
相続人に配偶者がいる場合の相続割合
配偶者は常に相続人となり、他に誰がいるかによって、相続割合が変わります。主なケースは以下のとおりです。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の相続分 | その他相続人の相続分 |
|---|---|---|
| 配偶者+子 | 1/2 | 1/2(子で均等分割) |
| 配偶者+父母 | 2/3 | 1/3(父母で均等分割) |
| 配偶者+兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4(兄弟姉妹で均等分割) |
相続人に配偶者がいない場合の相続割合
配偶者がいない場合、相続は順位に従い分割します。
| 相続の内容 | 相続割合 |
|---|---|
| 子のみの場合 | 子が均等に分割して相続 |
| 子がいない場合 | 父母が均等に分割して相続 |
| 子・父母がいない場合 | 兄弟姉妹が均等に分割して相続 |
例えば、相続財産が1,800万円で子どもが2人いる場合、それぞれが900万円ずつを相続します。子どもがいない場合、両親が健在であれば、各900万円ずつ相続、片方のみ存命ならその親が全額を相続。両親もすでに亡くなっていて兄弟姉妹が相続人なら、例えば兄弟が3人の場合は各600万円ずつになります。
【例外】法定相続人でも相続権を持たない3つのケース

法定相続人であっても、必ずしも相続できるとは限りません。相続放棄や不正行為による相続欠格、被相続人の意思による相続廃除など、一定の条件下では相続権を失うことがあります。ここでは、相続権を持たなくなる3つのケースについて解説します。
1.相続放棄をした場合
相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったとみなされ、財産も負債も一切引き継ぎません。相続放棄の申述期間(いわゆる時効)は、原則として3か月以内です。放棄する場合は早めに家庭裁判所への申立を行い、次順位に相続権が移ります。
ちなみに、子どもが相続放棄をした場合は初めから相続権がなかったものと見なされ、孫に権利(代襲相続)は発生しません。次順位の放棄は、先順位全員の放棄が受理されてから可能になります。
2.不正行為により相続権を失い相続欠格となった場合
相続欠格とは法律で定められた制度で、重大な不正行為をした相続人が、自動的に相続権を失う制度です。
被相続人や他の相続人を故意に殺害、遺言書の偽造・変造・破棄、詐欺や強迫による遺言操作などが欠格事由にあたります。手続き不要で適用され、配偶者や子であっても例外はなく、被相続人の意思に関係なく相続できません。
3.被相続人によって相続権を剥奪され相続廃除となった場合
相続廃除されると相続権を失います。相続廃除とは、被相続人に対して虐待や重大な侮辱、著しい非行を行った推定相続人から、被相続人の意思に基づき相続権を剥奪する制度。
対象は配偶者や第1・第2順位の相続人に限られます。被相続人が生前に家庭裁判所へ申し立てるか、遺言で意思を示し遺言執行者が申し立てることで成立します。
相続権のない人へ財産の引き継ぐ4つの方法

遺言や死因贈与契約、養子縁組、特別縁故者制度など4つの方法を活用すれば、法律で定められた相続権利者以外にも財産を承継でき、希望通りの形で引き継ぎが可能です。この章では、法定相続人ではない人へ財産を引き継ぐための4つの方法を紹介します。
1.遺言書で遺贈する
遺贈は、相続人以外にも思いを込めて財産を渡せる有効な方法です。遺贈とは、遺言により法定相続人以外の人や団体へ財産を譲れる制度。内容は法定相続よりも優先されます。
これは民法964条で定められていて、遺言者は財産の全部、または一部を自由に処分できるため、友人や内縁のパートナー、孫、法人など相続人でない相手にも譲ることが可能です。
遺贈する際には、相続人の遺留分を侵害しないように注意しましょう。
2.生前に死因贈与契約を結ぶ
死因贈与とは、生前に当事者同士が合意し、贈与者の死亡を条件に財産を渡す契約です。
生前に贈与契約をしておくことで、法定相続人以外にも財産を譲ることが可能。例えば「私が亡くなったら、この土地をあなたに贈与します」と生前に約束し契約書を交わします。贈与者が単独で行うことはできず、受贈者との合意が必要です。
3.養子縁組をして法定相続人にする
養子縁組をすると、普通養子縁組でも特別養子縁組でも法律上の「子」として認められ、実子と同じ相続順位・相続割合で財産を受け取れます。
普通養子縁組は実親との関係を残すのに対し、特別養子縁組は実親との関係を断ち、養親のみが親になります。例えば、孫を養子にしたり、再婚した連れ子を養子にしたりすることが可能です。
4.特別縁故者の申し立てをする
法定相続人がいない場合に、被相続人と特別に親しい関係にあった人が財産を受け取ることが可能です。民法958条の3では、生計を共にしていた人、療養看護に努めた人、その他特別な縁故のあった人が該当すると定められています。
家庭裁判所への申立てと法定相続人が存在しないことが確認できた後、特別縁故者に確定され、債務精算を経て財産を取得できます。
相続権を正しく知って、将来の備えを始めよう

相続権は民法で決まった配偶者や血族に与えられ、プラスもマイナスも引き継ぎます。順位や割合、例外もあるので、誰が相続人になるか早めに確認し、家族の安心を守るために財産整理を始めましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
