借地権は相続できる!基礎知識から相続税評価、手続きまで解説
2025.10.31

借地権は土地を所有せずに利用できる権利で、相続の対象にもなります。しかし、譲渡や建て替えには地主の承諾が必要になるなど、独特のルールがあるため注意が必要です。
本記事では、借地権を相続する際に知っておきたい基礎知識や相続税評価の方法、スムーズに進めるための手続きの流れをわかりやすく解説します。
目次
借地権とは|まずは基礎知識をおさえよう

借地権は「土地を借りて建物を建てる権利」であり、相続や税金にも深く関わる大切な制度です。普通借地権と定期借地権の違いを理解し、相続設計に役立つ知識として押さえておきましょう。
借地権とは土地を借りる権利
借地権とは、建物を建てる目的で地主から土地を借りる権利を指します。あくまでも借りる権利で、所有権とは異なりますが、建物を所有して利用することが可能です。
また、借地権は相続財産として承継できる権利であり、子どもや配偶者にも引き継げます。そのため、相続時には評価や手続きが必要です。
2つの借地権|「普通借地権」と「定期借地権」
借地権は「普通借地権」と「定期借地権」に大別されます。違いを理解し相続設計に役立ててください。
| 項目 | 普通借地権 | 定期借地権 |
|---|---|---|
| 契約更新 | 可能(正当事由がない限り拒否不可) | 不可(満了で終了) |
| 存続期間 | 原則30年、契約によっては30年以上(更新で継続可) | ・一般:50年以上 ・事業用:10~50年未満 ・建物譲渡特約付:30年以上 |
| 終了時 | 建物買取請求権あり | 建物の取壊し・返還 (建物譲渡特約付借地権の場合は建物について地主との間で賃貸借契約が成立することあり) |
| 権利の性質 | 借主に有利、長期利用可 | 地主に有利、期間限定の利用向き |
| 相続への影響 | 相続財産として価値を持ちやすい | 期間限定のため相続価値は限定的 |
どんな借地が相続税の対象になる?2つの判断ポイント

借地権が相続税の対象になるかどうかは、一律ではなく条件によって異なります。建物の有無や地代の支払い状況、さらに地域の取引慣行など、2つの視点から判断されます。それぞれの基準を理解し、相続の備えに役立てましょう。
1.建物を建て、地代を払っているかどうか
借地権が相続税の対象となるかは、建物を建てて所有しているか、適正な地代を支払っているかが重要な判断基準です。建物があり、地代を支払っていれば財産的価値が認められ、課税対象となります。
一方、建物を建てず駐車場として使っている場合や、親の土地に地代を払わず住んでいる場合は、借地権として評価されず相続税はかかりません。判断が難しいケースは専門家に相談すると安心です。
2.借地権の取引慣行のある地域かどうか
借地権が相続税の対象となるかは、その地域に借地権の取引慣行があるかでも判断されます。
「取引慣行がある地域かどうか」は、判断が難しい場合があります。取引慣行の有無を調べるには、国税庁が毎年公表する「財産評価基準書」を確認しましょう。借地権割合(30~90%)が載っていれば申告が必要です。記載がなければ、相続税の対象外と判断できます。
借地権の評価に迷ったら、まずは財産評価基準書を確認しましょう。
借地権の相続税評価方法

この章では、借地権の相続税評価方法について解説します。普通借地権と定期借地権では計算式や基準が異なり、土地の価額や、契約期間の長さが大きく影響します。正確な評価のために国税庁の基準を確認し、必要に応じて専門家へ相談することが安心です。
1.普通借地権の相続税評価
普通借地権の相続税評価額は、以下の計算式で算出されます。
計算式:自用地価額×借地権割合
自用地価額は、路線価方式または倍率方式で評価します。借地権割合は国税庁が地域ごとに定めており、一般的には60~80%程度。国税庁ホームページの路線価図で確認可能です。
正しい評価には、最新の路線価図で割合を確認することが不可欠。土地の形状や建物の状態によって、減額補正が認められる場合もあるため注意しましょう。
2.定期借地権の相続税評価
定期借地権の相続税評価は、借地人にどれだけの利益が残っているかと、契約があと何年残っているかを基準に計算するのが特徴です。
計算式:自用地評価額×{(経済的利益÷借地権設定時の土地の時価)×(残存期間の複利年金現価率÷契約期間の複利年金現価率)}
複利年金現価率は、国税庁ホームページにある複利表にて確認できます。契約満了で土地を返還する性質上、残存期間が短いほど価値は低くなります。
なお、上記計算式は税務上支障がない場合に使える簡便的な計算方法です。権利金の追加支払いや差額地代が生じている場合など、課税上の弊害がある時は使えないため注意しましょう。
借地権を相続した時の流れ

借地権を相続した場合、すぐに土地を利用できるわけではなく、地主への連絡や建物の名義変更といった手続きが必要です。地主への適切な流れを押さえておくことで、相続後のトラブルを防ぎ、スムーズに権利を引き継げます。
1.地主へ相続発生を連絡する
借地権の相続に地主の承諾は不要で、名義変更料などを支払う必要もありません。
しかし、今後も契約を円滑に続けるために、借主が亡くなったことや相続により権利を承継したことを地主へ連絡しておくことが重要。相続人が居住しない場合でも同様で、必要に応じ専門家に相談すると安心です。
2.借地上の建物の名義変更をする
借地権を相続した場合、地主の承諾や名義変更料は不要ですが、借地上の建物については相続登記を行うことが必須です。登記に必要な遺言書や遺産分割協議書などの書類を揃えたうえで、法務局に申請し、固定資産税評価額に応じた登録免許税を納付しましょう。
名義変更を怠ると第三者に借地権を主張できず、思わぬトラブルを招く可能性があるため、注意が必要です。借地権自体は登記されないケースが多いものの、まれに登記されている場合もあり、その際は借地権の相続登記も必要になります。
【借地上の建物の名義変更の流れ】
- 1.対象不動産を確認する
- 2.相続人を確定する
- 3.必要書類を揃える
- 4.登記申請を行う
- 5.登記完了
借地権相続の地主の承諾に関する3つの注意点

この章では、借地権を相続した後に気をつけたい4つのポイントを紹介します。譲渡や建て替え、遺贈には地主の承諾が必要となる場合があり、さらに承諾料が発生するケースもあります。トラブルを防ぐために、承諾の有無や費用の相場を正しく理解しておきましょう。
1.借地権を移転する際は地主の承諾が必要
借地権を第三者へ譲渡したり、法定相続人以外の人に遺贈したりする場合は、原則として地主の承諾が必要です。
承諾を得ずに行うと無断譲渡となり、契約解除のリスクが生じます。地主が承諾しない場合でも、家庭裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てることで認められるケースがあります。相続人間での承継とは扱いが異なるため、事前に十分な準備をしておくことが大切です。
2.建て替える時は条件により地主の承諾が必要
借地上の建物を建て替え・増改築するには、原則地主の承諾が必要です。承諾なく行えば契約違反とされ、最悪の場合契約解除のリスクも。
条項で制限されている場合もあるため、事前に契約内容を確認し、必要であれば裁判所に許可を求めることも検討しましょう。
3.地主の承諾には「承諾料」が必要
借地権の「承諾料」とは、地主の承諾を得る際に支払う金銭のことを指します。相場は、売却や遺贈の際には借地権価格の約10%、建て替えや増改築では更地価格の3〜5%程度とされています。
ただし、法定相続人が借地権を相続する場合には、承諾や承諾料は不要です。万一、地主から誤って承諾料を請求されても、相続であれば支払う必要はありません。
借地権相続のよくある質問

ここでは、借地権を相続する際によくある疑問をわかりやすく解説します。
1.借地権は相続放棄できますか?
借地権は相続放棄することができますが、借地権だけを選んで放棄することはできません。
相続放棄は、全ての遺産を放棄の対象とする制度です。他の財産も放棄となる点に注意して、慎重に検討しましょう。
2.借地権は兄弟で共有できますか?
借地権は兄弟で相続することも可能ですが、共有すると地代や管理責任も分担されてしまいます。建て替えや売却には全員の合意が必要になり、話し合いが難航する可能性も。
将来のトラブルを避けるため、単独相続や代償金で調整する方法も含め、早めに兄弟間で話し合うことが大切です。
借地権の相続準備をはじめよう

借地権は建物を建てるために土地を借りる大切な権利で、相続税の対象になります。手続きや評価方法には注意点が多いですが、事前に知っておけば安心です。まずは基礎をおさえ、今からできる準備から始めてみませんか?
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
