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相続で共有持分を取得したら?起こるトラブルと売却方法を解説

2025.09.29

親から不動産を相続した際、兄弟姉妹などと共有持分として登記されるケースは少なくありません。一見平等なように見える共有ですが、放置すると意見の対立や税負担などのトラブルに発展することも。

本記事では、相続によって共有持分を取得した際に起こりやすい問題や、円滑に売却するための方法をわかりやすく解説します。

共有持分とは

不動産を相続する際、兄弟姉妹など複数人で引き継ぐケースは少なくありません。このときに発生するのが共有持分です。共有持分はトラブルの火種にもなりやすいため、まずは仕組みを理解しておくことが大切です。

不動産の一部を所有する権利のこと

共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有する場合に、それぞれが持つ権利の割合を指します。例えば親から不動産を相続した際、兄弟姉妹で分けて受け継ぐと、それぞれが共有者となり、その持分割合が登記簿に記載される形となります。

共有持分の割合

持分割合は、共有者それぞれが不動産全体に対し持つ所有権の割合のことです。相続で取得した場合は民法で定められた「法定相続分」に従って決まるのが一般的で、例えば配偶者と子ども2人で親の家を相続すると、配偶者が1/2、子どもがそれぞれ1/4ずつの割合となります。

一方、購入時に夫婦や親子で出資して取得した場合は、出資額に応じた割合で持分が定められます。

不動産を共有することになる原因

不動産が共有名義になる原因はいくつかあります。代表的なのは相続で、親の持ち家や土地を兄弟姉妹で相続した場合、自動的に共有状態となります。

また、夫婦や親子で資金を出し合って家を建てたときや、二世帯住宅を購入したときにも共有名義になることがあります。さらに、離婚の際に不動産を共有したまま財産分与が進まず、共有状態が継続してしまうことも。

このような共有状態は一見公平に見えますが、将来的に売却や利用方法について意見が分かれ、トラブルに発展してしまうケースも少なくありません。

相続で不動産を共有することで起こるトラブル

共有相続した不動産は、複数人の共有になることで意思決定や維持管理が難しくなります。主なトラブルとその背景・原因は以下の通りです。

主なトラブル トラブルの背景・原因
売却・活用の同意が得られなくなる 共有者全員の承認が必要で、価値観の違いや感情が協議を停滞させる
一人が居住・利用する 実家などに共有者の一人が居続け、他人が使えず不公平感が高まる
維持費・税負担が不均等になる 固定資産税や管理費を特定の共有者が担い、未払い・支払い拒否が発生する
共有者が増えて関係が複雑化する 時間とともに共有者に相続が開始すると、共有者が多数になることで意思統一が困難になる

これらの問題が時間とともに連鎖し、最終的には共有財産が事実上凍結されかねません。早期の登記整理や共有解消が重要です。

相続した共有持分は売却できる!ただし注意点が多いので慎重に

相続で取得した共有持分は、登記された範囲内であれば他の共有者の同意がなくても売却することが可能です。法的には誰にでも自由に譲渡できますが、不動産全体を自由に使えないため、買い手を見つけるのは実際には簡単ではありません。

持分だけ購入しても自由に住んだり活用したりできないことから、第三者にとって共有持分は魅力に欠けます。特に居住中の物件や相続された空き家では、住人との利害調整が難航するケースも多くあります。

また、売却によって面識のない第三者と共有関係になる人にとっては精神的負担になりかねません。さらに、買取業者に売却した場合、業者によっては他の共有者に強引な交渉や、共有物分割請求訴訟を起こすリスクもあり、親族間で感情的な対立を招く恐れもあるため慎重な対応が必要です。

相続で取得した共有持分を売却する4つの方法

共有持分を取得したものの、そのまま放置するとどうなるのか不安に思う方も多いでしょう。共有持分は管理や活用が難しく、トラブルに発展するリスクもあります。

円滑に資産整理を進めるためには、共有持分を売却して共有状態を解消することも選択肢の一つです。ここでは代表的な4つの売却方法について解説します。

1.他の共有者に買い取ってもらう

現実的でスムーズな方法は、他の共有者に自身の持分を買い取ってもらうことです。特に1人の共有者に売却できれば単独所有となり、不動産を自由に活用できるようになります。

ただし、共有者が複数いる場合には「なぜ自分に売らなかったのか」と不満が出ることもあるため、事前に全員と相談しておくことが大切。トラブル防止のためにも、不動産会社を仲介に立てて契約手続きを進めるのがおすすめです。

2.不動産全体を共有者と一緒に売却する

共有者全員の合意が得られる場合は、不動産全体を第三者に売却する方法もあります。この方法なら共有状態を解消でき、相場通りの価格で売却できるため、持分のみを売るよりも高値での処分が期待できます。

ただし、売却手続きが煩雑になりやすいため、代表者を決めて委任状を交わすとスムーズ。売却後は、持分割合に応じて売却代金を分配するのが一般的です。

3.土地を分筆して単独名義にしてから売却する

土地を共有している場合は、分筆によって単独名義に変更してから売却する方法もあります。物理的に土地を切り分けて登記すれば、自分の土地として自由に売却可能です。

ただし、土地の形状や日当たりなどによって不公平が生じることもあるため、分筆を検討する際は不動産会社に相談し、適切な方法を確認することが重要です。

4.共有持分を買取業者に売却する

共有持分は一般の個人には扱いにくく、買い手がつきにくいのが実情です。そのため、早く現金化したい場合には買取専門業者に売却する方法もあります。

ただし、これらの業者は安く仕入れて再販することを目的としているため、相場よりも大幅に低い価格での買取となることが多い点には注意が必要です。

さらに、売却後に業者が他の共有者へ強引に交渉を仕掛たり、共有物分割請求を起こすなどのトラブルに発展する可能性もあるため、慎重な検討が欠かせません。

相続した共有持分を売却する場合の費用・必要書類・流れ

相続で取得した共有持分を売却するには、一般的な不動産売却と同様に費用や必要書類が発生します。ここでは、売却にかかる費用の目安と準備すべき書類、スムーズに進めるための基本手順を解説します。

売却時にかかる費用

共有持分の売却でも、複数の費用が発生します。以下は主な項目と目安金額です。

費用 詳細 金額の目安
印紙税 売買契約書への貼付 5,000円~3万円(売却価格により異なる)
登録免許税 抵当権抹消登記がある場合に必要 不動産1件につき1,000円
仲介手数料 不動産会社に依頼する場合に必要 売却価格の3%+6万円+消費税(売却価格400万超の場合)
譲渡所得税・住民税 利益が出た場合に課税 長期20.315%、短期39.63%

司法書士に依頼する場合は、その費用も必要になります。

必要な書類

共有持分を売却するには、以下の書類が必要です。

書類名 用途・注意点
登記識別情報(権利証) 所有者であることの証明用
身分証明書 売却者本人であることの確認用
住民票 登記簿住所と異なる場合に必要(3ヵ月以内)
印鑑登録証明書+実印 売買契約書への押印用(3ヵ月以内)
土地測量図・境界確認書 土地が含まれる場合に必要

売却までの手順

共有持分の売却には、一般的な不動産売却よりも調整や確認事項が多くなるため注意が必要です。特に共有名義が絡む場合は、売却に向けて早めに準備を進め、必要に応じて不動産会社や司法書士、税理士など専門家に相談しながら進めることが大切。

適切な段取りを踏むことで、トラブルを防ぎながらスムーズに売却を進められます。

【全体売却の場合の流れ】

  1. 1.売却の意向確認と共有者との協議
  2. 2.権利証や必要書類の準備
  3. 3.不動産会社への査定依頼・売却価格の決定
  4. 4.売買契約の締結
  5. 5.登記手続き
  6. 6.売却代金の受け取りと税金の申告(譲渡所得が発生する場合)

相続した持分の売却を考えるなら共有者との話し合いが大切

相続で取得した共有持分を売却する際は、後々のトラブルを防ぐためにも、まずは共有者同士でしっかりと話し合うことが大切です。

共有状態を放置すると管理や活用が難しくなりますが、共有者間で協力し合うことで円満な売却や共有解消につながります。不安がある場合は専門家に相談しながら進めましょう。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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