相続不動産

JOURNAL

相続ジャーナル

お客様のお役に立つ情報を随時配信しています

固定資産評価証明書とは?必要な場面・取得方法・費用を解説

2025.08.04

 

固定資産評価証明書とは、土地や建物などの不動産について、市区町村が固定資産税の課税基準となる評価額を証明する公的な書類のこと。登記や相続、税務申告、ローン契約など、さまざまな場面で求められます。

この記事では、固定資産評価証明書がどんな書類なのか、必要になる具体的な場面、取得方法や費用、注意点まで詳しく解説します。

固定資産評価証明書とは

不動産の相続や名義変更、税務申告の場面で必要になるのが固定資産評価証明書です。ここでは、証明書の役割や記載内容、固定資産課税明細書との違いについて詳しく解説します。

固定資産税の対象となる不動産の評価額を証明する書類

固定資産評価証明書とは、土地や建物などに課される固定資産税の基準となる評価額を証明するための書類です。評価額は、土地であれば公示地価の7割程度、建物であれば新築時の建築費の5~7割で算出されるのが一般的。

さらに、事業用の構築物や設備などの「償却資産」も評価の対象に含まれます。この証明書は、名義変更や相続登記、各種税務申告を行う際に欠かせない重要な書類です。

記載されている主な内容・見方

固定資産評価証明書には、不動産に関する詳細な情報が記載されていて、資産の内容を正確に把握するために役立ちます。

【記載されている主な項目】

  • ・固定資産の所有者氏名・住所
  • ・固定資産の所在地(地番・家屋番号)
  • ・固定資産の土地情報(地積(面積)、地目、持分など)
  • ・固定資産の建物情報(構造、床面積、種類、築年など)
  • ・固定資産の評価額(固定資産税評価額、課税標準額)

固定資産課税明細書との違い

固定資産課税明細書は、毎年の固定資産税額とその内訳を記載したもので、市区町村から納税通知書とともに送付される書類です。そのため、取得のための申請は必要ありません。

一方、固定資産評価証明書は、資産の評価額を証明する目的で使われ、申請しないと取得できません。評価証明書には非課税資産についても記載される点が、課税明細書との違いとなります。

固定資産評価証明書が必要になる場面

固定資産評価証明書は、不動産に関連するさまざまな手続きで必要になる書類です。ここでは、具体的にどのようなケースで必要になるのかを紹介します。

不動産登記を申請するとき

不動産の名義変更など、登記申請を行う際には、登録免許税の算出に固定資産評価証明書が必要になることがあります。税額は「評価額×税率」で決まるため、登記対象の物件に対して正確な評価額を示す証明書の提出を求められる場合があります。

ただし、法務局によっては固定資産課税明細書で代用できる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。

相続税や贈与税を申告するとき

相続税や贈与税の申告時には、路線価に基づき不動産の価値が把握され課税額が計算されますが、路線価が設定されていない地域では、「倍率方式」と呼ばれる方法が採用され、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて課税額を計算します。

建物に関しては、固定資産税評価額がそのまま課税額の算出基準になるため、評価証明書が重要な資料となります。

不動産に関する訴訟を起こすとき

不動産の所有権や境界をめぐって訴訟を起こす場合、裁判所に支払う手数料の基準として固定資産評価額が使われることがあります。そのため、訴訟に必要な申立書類とあわせて、固定資産評価証明書の提出を求められることがあります。

特に、境界確定訴訟や所有権移転訴訟などでは、ほぼ必須の書類といえるため、早めの準備が大切です。

不動産担保ローンを契約するとき

住宅ローンや不動産担保ローンの契約時には、担保となる不動産の評価を確認するため、金融機関から固定資産評価証明書の提出を求められることがあります。評価額は不動産の市場価値や資産性を見極める指標として利用されます。

必要書類は金融機関によって異なるため、ローンの申込前に確認しておくとスムーズです。

固定資産評価証明書の取得について

固定資産評価証明書が必要になった際、どこで、誰が、どのように取得できるのかは事前に確認しておきたいポイントです。申請には条件や書類があるため、スムーズに手続きするためには取得方法や費用を把握しておくことが重要。

取得できる人

固定資産評価証明書は、誰でも自由に取得できるわけではありません。取得できるのは、不動産の所有者本人をはじめ、同居家族、相続人、成年後見人、代理人など、特定の立場にある人に限られます。

本人以外が申請する場合には、関係性を証明するための書類(戸籍謄本や住民票、委任状など)の提出が必要です。また、所有者が法人である場合には、法人代表印や委任状など、法人との関係を示す書類が求められるケースもあります。

取得方法

固定資産評価証明書の取得方法には、主に3つの手段があります。まず1つ目は、固定資産の所在する市区町村の役所窓口で申請する方法です。2つ目は、自治体の公式Webサイトから申請書をダウンロードし、必要書類と手数料を同封して郵送する方法。

そして3つ目は、マイナンバーカードを利用して、コンビニエンスストアの端末から証明書を取得する方法です。コンビニ交付は一部の自治体に限られますが、対応している地域では手軽に取得できる手段として活用されています。

申請時に必要な書類

申請に必要な書類は、申請者の立場によって異なります。申請書に加えて必要な書類は次のとおりです。

申請者 主な必要書類
本人 本人確認書類
同居家族 本人との関係がわかる住民票や戸籍謄本
相続人 除票・戸籍謄本など相続関係を示す書類
代理人 委任状・代理人の本人確認書類
法人関係者 代表者印・委任状など

取得費用(発行手数料)

固定資産評価証明書の発行手数料は自治体によって異なりますが、一般的には1件あたり200~400円程度が相場です。例えば、土地と建物が別々に登記されている戸建て住宅の場合は、それぞれに証明書が必要となるため、2件分の手数料がかかります。

一方、マンションの一室などでは土地と建物が一体として扱われるケースが多く、その場合は1件分の費用で済むことがあります。

申請から受け取りまでの期間

固定資産評価証明書は、役所の窓口で申請すれば、当日中に交付されるのが一般的です。一方で、郵送による申請の場合は、書類の到着から返送までに1〜2週間ほどかかることもあります。

また、申請内容に不備があったり、窓口が混雑していたりする場合は、さらに時間がかかる可能性があります。急ぎで必要な場合は余裕を持って手続きするのがおすすめ。スムーズに取得するためにも、申請前に自治体の受付時間や処理日数を確認しておくと安心です。

固定資産評価証明書を取得する際の注意点

固定資産評価証明書を正しく活用するには、取得時の注意点を理解しておくことが大切です。ここでは主な注意点を紹介します。

必要な「年度」を間違えると再取得が必要になる

固定資産評価証明書は、毎年4月1日に新しい年度へと切り替わります。不動産登記に利用する場合は、登記申請時点における最新年度の証明書が必要とされます。

例えば、3月に取得した証明書は、そのままでは4月以降の登記には使用できず、新年度分を改めて取得し直さなければなりません。

また、相続税や贈与税の申告においては、相続や贈与が発生した年の評価額が求められるため、登記に使うものとは異なる年度の証明書が必要になるケースもあります。

このようなトラブルを防ぐためにも、申請前に「いつの年度の証明書が必要か」を必ず確認してから手続きを行いましょう。

固定資産評価証明書は目的に応じて正しく取得しよう

固定資産評価証明書は、不動産の登記手続きや税務申告、ローン審査などで広く使われる重要な書類です。使用する目的やタイミングによって必要な「年度」や提出先が異なるため、事前の確認が欠かせません。

また、取得には手数料がかかり、申請者の資格や必要書類も市区町村ごとに定められています。スムーズに手続きを進めるためにも、事前準備をして正しく取得しましょう。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

TOP