家の名義変更とは|流れ・費用・必要書類・しないリスクを徹底解説
2025.07.05

家の名義変更とは、家の所有者が変更したことを届け出る手続きのことです。不動産売買や遺産相続の際に必要ですが、具体的にどのような手続きをすればいいのかわからない方も多いでしょう。
家の名義変更をスムーズに進められるよう、手続きの流れや費用、必要書類、手続きをしないリスクを解説します。
目次
家の名義変更とは

家の名義変更とは、家の所有者が変わったことを法的に記録する手続きのことです。この手続きを正式には所有権移転登記と呼びます。家の所有者を証明するには登記が必要で、所有者が変わった場合に手続きをしなければ、第三者に対して権利を主張できません。
家の名義変更はどんなときに必要?4つのケース

家の名義変更は、所有者が変わるさまざまなケースで必要な手続きです。ここでは、4つのケースを見ていきましょう。
1.不動産売買
家を売買したら、買主は家の名義を自分名義に登記する必要があります。名義変更をせず前の持ち主のままになっていた場合、売却されるリスクも。
一般的に、家の引き渡し・売却代金の支払いと同時に、売主と買主が共同で名義変更を申請します。なお、家に抵当権が付いている場合は、抵当権抹消登記も併せて行います。
2.生前贈与
家を生前贈与で譲ったら、贈与を受けた人への名義変更が必要です。生前贈与とは、財産を生きているうちに子や孫に無償で渡す制度のこと。
贈与する側に費用はかかりませんが、もらう側は贈与税の課税対象です。生前贈与は遺産を減らせる点で相続税対策になりますが、税金や登記手続きが複雑なため、専門家に相談するとよいでしょう。
3.財産分与
財産分与で家の名義を夫婦どちらかの単独名義にする場合、家の名義変更が必要です。財産分与とは、結婚中に夫婦で築いた財産を離婚時に公平に分ける制度のこと。
家が共有名義になっている場合や、夫名義でも妻が家事などで家を支えていた場合は、分与の対象となる可能性があります。
4.遺産相続
所有者が亡くなり、家を相続した場合は、自分名義に変更しなければなりません。相続による家の名義変更を相続登記といいます。
相続登記は2024年4月1日より義務化され、相続人が家を取得したことを知った日から3年以内に手続きをする必要があります。正当な理由なく行わなかった場合は、10万円以下の過料が発生する可能性があるため注意しましょう。
【ケース別】家の名義変更の流れ

名義変更の手続きの流れは、ケースごとに異なります。間違いのないよう、各ケースの流れを確認しておきましょう。
不動産売買における手続き
不動産売買における名義変更手続きは、以下の流れで進めます。
(1)売買契約を結ぶ
売主と買主で売買契約書を作成
(2)必要書類を揃える
売主・買主がそれぞれ書類を準備
(3)引き渡しと支払いを行う
書類確認後に売買代金を支払い、引き渡し行う
(4)登記申請を行う
司法書士が法務局に名義変更を申請
(5)登記完了を確認する
権利証や登記完了証が交付される
生前贈与における手続き
生前贈与における名義変更手続きは、以下の流れで進めます。
(1)贈与契約を結ぶ
口頭でも問題ないが、書面で契約書を作るのが安心
(2)必要書類を揃える
贈与者・受贈者がそれぞれ書類を準備
(3)登記申請書を作成する
名義変更に必要な書類を作成し、収入印紙なども用意
(4)登記申請を行う
不動産を管轄する法務局に名義変更を申請
(5)登記完了を確認する
権利証や登記完了証が交付される
財産分与における手続き
財産分与における名義変更手続きは、以下の流れで進めます。
(1)財産分与の合意をする
夫婦間で不動産名義をどちらにするか話し合う
(2)離婚届を提出する
市区町村へ離婚届を提出
(3)必要書類を揃える
協議離婚・裁判離婚など離婚の種類に応じて書類を準備
(4)登記申請を行う
夫婦で登記申請書を作成し、法務局に提出
(5)登記完了を確認する
権利証や登記完了証が交付される
遺産相続における手続き
遺産相続における名義変更手続きは、以下の流れで進めます。
(1)必要書類を揃える
遺言書の有無で必要な書類が異なるので注意
(2)相続人を確認する
遺言がない場合は、戸籍謄本を確認して相続人を決定
(3)遺産分割協議を行う(遺言書のない場合)
相続人全員で協議後、遺産分割協議書を作成
(4)登記申請を行う
登記申請書を法務局に提出
(5)登記完了を確認する
権利証や登記完了証が交付される
家の名義変更で支払いが必要な費用

家の名義変更で支払う必要がある費用は、主に登録免許税、印紙代・諸費用、ケース別の税金です。具体的には以下のとおり。
ケース | 登録免許税 | 印紙代・諸費用 | その他の税金 |
---|---|---|---|
不動産売買 | 評価額の2% | 印紙代・仲介手数料など | 売主:譲渡所得税 買主:不動産取得税 |
生前贈与 | 評価額の2% | 印紙代 | 受贈者:贈与税・不動産取得税 |
財産分与 | 評価額の2% | 印紙代 | 分与元:譲渡所得税 分与先:取得税・贈与税 |
遺産相続 | 評価額の0.4% | 戸籍取得費など | 相続人:相続税 |
このほか、手続きを司法書士に依頼した場合は、報酬として5〜15万円程度かかります。
家の名義変更で準備が必要な書類

家の名義変更ではいくつかの書類を準備する必要があります。ケース別の主な必要書類は以下のとおり。
ケース | 主な必要書類 |
---|---|
不動産売買 | ・売買契約書 ・印鑑証明書【売主】 ・住民票【買主】 ・登記識別情報or権利証 ・固定資産評価証明書 |
生前贈与 | ・贈与契約書 ・印鑑証明書【贈与者】 ・住民票【受贈者】 ・登記識別情報or権利証 ・固定資産評価証明書 |
財産分与 | ・財産分与協議書or調停調書 ・印鑑証明書【分与する人】 ・住民票【受け取る人】 ・登記識別情報or権利証 ・固定資産評価証明書 |
遺産相続 | ・被相続人の戸籍【出生〜死亡】 ・相続人全員の戸籍謄本 ・住民票【新しい名義人】 ・遺産分割協議書【必要に応じて】 ・固定資産評価証明書 |
遺産相続での名義変更(=相続登記)で必要な書類については、以下の記事で詳しく解説しています。
家の名義変更はいつまでにすればいい?

家の名義変更のうち、相続により不動産を取得した場合は、相続開始および不動産を取得した日から3年以内に手続きをしなければなりません。2024年4月1日より相続登記が義務化されたため、期限内に対応しなければ過料が科せられる場合もあります。
不動産売買、生前贈与、財産分与の場合は特に期限は設けられていませんが、早めに手続きすることが大切です。
家の名義変更は自分でできる?相談先はどこ?
家の名義変更手続きは自分でもできます。法務局のサイトから申請書のダウンロードや記入例の確認ができ、窓口や郵送、オンラインでの手続きに対応しています。
ただし、法律や税金に関する知識が求められたり、手続きに時間と労力がかかったりするため、人によっては大変に感じるでしょう。そのため、専門家に依頼するのが一般的です。登記手続きは司法書士に、税金関係は税理士に相談しましょう。
家の名義変更をしないとどうなる?3つのリスクを解説

速やかに家の名義変更をしなかった場合、第三者に権利を主張できないためトラブルになる可能性があります。特に、相続によって家を取得した場合は注意が必要です。ここでは、3つのリスクを解説します。
1.家の売却や担保活用ができない
生前贈与や相続などによって家を取得しても、名義変更を行わなければ売却や担保としての活用はできません。家の売却や担保入れは、名義人本人でなければ手続きできないからです。このほか、第三者に売却されたり、差し押さえられたりする可能性もあります。
2.過料が科せられる可能性がある
前述のとおり、相続によって家を取得した場合、名義変更手続き(=相続登記)は必ずしなければなりません。2024年4月1日より相続登記は義務化されました。正当な理由なく手続きをしなかった場合は、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
3.相続関係が複雑になる
家を相続によって取得し、名義変更手続きをしないまま放置すると、相続関係が複雑になってしまいます。相続人がどんどん増えることで、把握が困難になったり遠方にいたりして、手続きがスムーズに進められなくなります。権利関係が複雑になる前に、早めに名義変更を行うことが大切です。
家の名義変更手続きの不安を解消し、手際よく進めよう

家の名義変更は、家の所有者が変わるさまざまなタイミングで必要な手続きです。手続きを行わなかった場合、トラブルや不都合が生じる可能性があります。手順や費用はケース別に異なるため、不安な場合は専門家に相談しながら手際よく進めましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
