相続不動産

JOURNAL

相続ジャーナル

お客様のお役に立つ情報を随時配信しています

相続登記義務化と手続きの簡素化|相続登記について知っておくべきこと・やり方を解説

2025.05.19

令和6年4月1日から、相続によって取得した不動産には、相続登記をすることが義務化されました。そのため今後不動産を相続する、または過去に相続したけれど、手続きせずに放置している不動産がある場合は、期限内に相続登記をしなければいけません。

しかし相続登記の手続きは簡単ではないので、何をしたら良いのか分からない方も多いはず。この記事では相続登記について知っておくべきことを解説し、相続登記を簡素化する制度、相続登記のやり方などについて紹介します。

相続登記の義務化について

相続登記とは、相続によって取得した不動産の名義を、相続した人の名義に変更することです。令和6年4月1日から相続登記が義務化されたので、不動産を相続したら相続登記が必須です。ここでは相続登記の義務化について解説します。

なぜ相続登記が義務化された?

相続登記が義務化された理由は、所有者不明の不動産が日本全国に急増したからです。今まで相続登記は相続人による任意で、面倒な手続きや費用などが発生することもあり、放置されるケースが多くありました。

相続登記の放置は、所有者の把握を難しくする要因になります。土地が荒れたり空き家が増えたりすると、周辺の不動産価値の低下や景観の悪化に繋がりかねません。このような所有者が分からない不動産の処分・有効活用ができないなどの問題が全国で増加し、社会問題化してしまいました。

所有者不明の不動産による経済的損失や公共事業の妨げなどの問題を改善するために、相続登記が義務化されたのです。

相続登記の義務化はいつから?

相続登記は令和6年4月1日から義務化されています。期限内に相続登記を申請する必要があるので注意してください。

  1. 1.相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内
  2. 2.遺産分割が成立した日から3年以内

義務化前の過去分の相続でも、相続登記が済んでいない不動産は相続登記をしなければいけません。最長でも令和9年3月末までに登記申請をしましょう。原則この期限内に申請しないと、10万円以下の過料が科されることがあります。

相続登記を簡素化する制度

相続登記には必要な書類を準備したりなど手間がかかりますが、相続登記の手続きを簡素化するための制度も創設されました。ここでは手続きの簡素化に繋がる制度について紹介します。

相続人申告登記

相続人申告登記は、令和6年4月1日から施行されました。前述した期限内に相続登記できない事情がある場合、法務局に「自分は不動産の相続人である」と申し出る制度です。相続人申告登記を申請することで相続人としての義務を果たしたとされ、過料の対象外になります。相続登記に比べ必要書類も少なく、申請費用はかかりません。

ただし相続登記とは違うので、不動産の権利を証明することはできません。遺産分割協議で相続内容がまとまり次第、相続登記をしてください。

戸籍の広域交付制度

戸籍の広域交付制度は、令和6年3月1日から施行されました。最寄りの自治体の役所で、被相続者の戸籍謄本などを一括で取得できます。今までは被相続者の本籍地を管轄する自治体に戸籍を請求する必要がありました。この制度を利用すれば、戸籍謄本などの取り寄せの手間と負担を軽減できます。

所有者不動産記録証明制度(仮称)

所有者不動産記録証明制度(仮称)は、令和8年2月2日から施行予定の制度です。特定の人(被相続人)が日本全国に所有している不動産のリストを取得できます。

相続登記の前には、被相続人が所有しているすべての不動産を調査する必要があります。確実なのは毎年送付される「固定資産納税通知書」を確認する方法です。

しかし、私道などの場合は課税されないことも。固定資産納税通知書で確認できないケースもあるので、固定資産納税通知書と各市区町村役場に「名寄帳」を請求して調査する必要があります。

所有者不動産記録証明制度を利用すれば、不動産調査を一度で済ませることができるので、手間を省くことが可能です。

相続登記のやり方

ここでは相続登記のやり方を説明します。相続登記の手続きを簡素化するための新制度を活用しながら、相続登記の準備を進めていきましょう。

手順1.相続不動産の確定

まずは、相続する不動産を特定します。固定資産評価表明書や登記事項証明書などで確認可能です。もしくは所有者不動産記録証明制度を利用して不動産を調査しましょう。被相続者の氏名と住所を使用して一括で調べられます。(令和8年2月2日施行予定)

亡くなった方の最終的な住所だけでなく、以前住んでいた場所の住所も確認するのがポイントです。考えられる全ての住所を確認し、不動産を把握してください。

不動産を確定したら登記事項証明書を請求します。土地と建物は別に登録されているので、両方の書類を取得してください。

手順2.相続人の確定

次に相続人について調査し、確定させる必要があります。被相続人の戸籍謄本を取得することで、相続人を確定できます。この際に戸籍の広域交付制度を利用してみましょう。申請者が最寄りの市区町村役場に請求すれば、手間をかけずに必要書類を取得できます。

手順3.遺産分割の話し合い

遺言書がなく、複数人の相続人がいる場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。遺産分割協議がまとまったら、「遺産分割協議書」を作成してください。

手順4.必要書類の準備

相続に関する必要な書類を準備します。相続によって必要な書類は変わるので注意してください。

  • ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
  • ・相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書
  • ・不動産を相続する人の住民票
  • ・遺産分割協議書
  • ・すべての不動産の登記事項証明書
  • ・固定資産評価証明書や納税通知書のコピー
  • ・登記申請書(自分で作成)など

手順5.法務局に必要書類を提出、登記申請

登記申請書を自分で作成し、必要書類が揃ったら、不動産の所在地を管轄する法務局に提出し、相続登記を申請します。書類の提出方法は法務局へ持参や郵送で行いますが、オンラインでの提出も可能です。

手順6.期限内に登記申請できない場合、相続人申告登記を申請

遺産分割協議がまとまらなかったり相続人の確定に時間がかかったりする場合、期限内に相続登記を申請できないかもしれません。その場合には相続人申告登記を申請してください。その後相続人が確定したら、あらためて相続登記を申請しましょう。

相続登記義務化の2つの問題点

相続登記が義務化されたのは、所有者不明の不動産を増やさないことが目的です。しかし、相続登記の手続きの複雑さや費用についての問題点が指摘されています。

相続登記には時間と労力がかかる

相続登記には事前準備が必須です。書類作成や手続きには手間がかかります。特に相続登記が長年放置されているケースでは、相続人の数が増えてしまっているかもしれません。相続人が増えるほど必要書類の数も増え、書類の収集や話し合いにも時間と労力が必要になります。

費用がかかる

前述のとおり、相続登記は複雑な手続きが必要なので、確実に行うために専門家に依頼する方も多くいます。専門家に依頼する場合には費用がかかり、場合によっては数十万円ほどかかることも。自治体によっては相続登記費用の補助金制度があります。相続登記をする前に、各自治体の役所に補助金について相談してみても良いでしょう。

不動産を相続したら、期限内に必ず相続登記を申請しよう

相続登記は、所有者不明の不動産など社会問題を改善するために義務化されました。相続した不動産がある、今後相続する予定がある方は、不動産の名義をしっかり確認しておくことをおすすめします。相続登記の知識や手続きについて理解し、早めに準備をはじめましょう。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

TOP