相続登記と不動産の名義変更の違い|親が亡くなったときの手続き・費用・必要書類も解説
2025.07.01

相続登記とは、不動産を相続した際に、その所有者の名義を相続人へ変更する手続きのことを指します。一方、不動産の名義変更は、相続に限らず、売買や贈与などの理由によって不動産の所有者情報を変更する手続きの総称です。
両者の違いを正しく理解した上で、親が亡くなった際に必要となる手続きや費用、必要書類について確認していきましょう。
目次
相続登記と不動産の名義変更の違いとは

不動産の名義変更のうち、相続によって名義を変更するケースが相続登記と呼ばれます。まずは、それぞれの定義を明確にし、相違点を整理しましょう。
相続登記とは?
相続登記とは、不動産を相続した際に、故人(被相続人)の名義から相続人の名義へと変更する手続きを指します。不動産を所有する場合、その情報は法務局が管理する登記簿に登録されます。
登記の目的は、権利関係を公的に証明することです。相続により所有者が変更された場合、相続人は相続を知った日から3年以内に相続登記を行う義務があります。
不動産の名義変更とは?
不動産の名義変更とは、所有者が変更された際に、登記簿上の名義を新たな所有者へと変更する手続きを指します。これを正式には所有権移転登記といいます。不動産の名義変更は相続によるものだけでなく、売買、贈与、離婚に伴う財産分与などさまざまな理由で行われます。
相続登記と不動産の名義変更の違い
相続登記と一般的な不動産の名義変更の主な違いは、名義変更の理由が相続に基づくかどうかという点です。相続登記は、不動産の名義変更の一種であり、相続によって名義を変更する際に用いられます。そのため、相続による不動産の名義変更は、実質的に相続登記と同義といえます。
【親が亡くなった場合】不動産の名義変更の手続きを進めよう

親が亡くなった際には、所有していた不動産の名義を変更する必要があります。ここでは、手続きの流れや必要書類について説明します。
名義変更手続きの流れ
相続による不動産の名義変更は、以下の手順で進めます。
- 1.遺言書の有無を確認し、遺言がなければ遺産分割協議を行う
- 2.必要な書類(戸籍謄本や住民票など)を取得する
- 3.登記申請書を作成する
- 4.不動産を管轄する法務局へ申請書類を提出する
- 5.登記完了後、登記識別情報通知書などの書類を受け取る
親の遺産を相続する際の具体的な手続きについては、以下の記事も参考にしてください。
必要書類一覧
相続による不動産の名義変更を行う際には、以下の書類が必要になります。
- ・故人の出生から死亡までの戸籍謄本
- ・故人の住民票の除票または戸籍の附票
- ・相続人全員の戸籍謄本
- ・相続人の住民票
- ・固定資産評価証明書
- ・登記簿謄本
- ・登記申請書
- ・遺言書(ある場合のみ)
- ・遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書(必要に応じて)
【相続】不動産の名義変更にかかる費用について

相続による不動産の名義変更には、登録免許税や書類の取得費用がかかります。さらに、司法書士へ依頼する場合は報酬が発生し、場合によっては相続税の支払いも必要になります。
登録免許税
相続による不動産の名義変更では、登録免許税が課されます。その金額は以下のように求めます。
登録免許税額=固定資産評価額×0.4% |
例えば、不動産の固定資産評価額が1,000万円の場合、登録免許税は4万円です。
書類取得のための費用
名義変更の際には、必要書類を取得するために以下のような費用が発生します。
書類 | 費用目安 |
---|---|
戸籍謄本 | 1通450円 |
住民票 | 1通300円 |
印鑑登録証明書 | 1通300円 |
固定資産評価証明書 | 1通300円 |
登記簿謄本 | 1通600円 |
すべての書類を取得しても、数千円から1万円程度に収まることが一般的です。
司法書士への依頼費用
相続した不動産の名義変更を司法書士に依頼した場合は、司法書士報酬が発生します。名義変更手続きは自分で行うことも可能ですが、複雑なケースや時間がない場合は専門家に依頼するのも一つです。
司法書士報酬の目安は5〜15万円。事務所によって異なるため、依頼前に確認しておくと安心です。
相続税の支払い
手続きにかかる費用ではありませんが、不動産を相続した場合、基礎控除額を超える遺産総額があると相続税が発生します。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数 |
相続税が課税される場合は、相続の開始を知った日から10ヶ月以内に申告と納税を行う必要があります。
【相続】不動産の名義変更をしないとどうなる?

相続後、不動産の名義変更をしなかった場合は10万円以下の過料が科せられる可能性があります。また、相続人が増えることにより権利関係が複雑になるほか、法定相続分を差し押さえられる場合も。各リスクを解説します。
10万円以下の過料が科せられる
相続した不動産の名義変更を正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
令和6年4月1日より、相続登記が義務化されました。相続人は不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。相続登記の義務化については、以下の記事で詳しく解説しています。
相続人が増えて権利関係が複雑になる
不動産の名義変更を放置すると、相続人が増え、後々の相続手続きが複雑になってしまいます。名義変更を行わないと、相続手続きが終わらないまま亡くなり相続人が増える「数次相続」が発生します。
相続人が多いと話し合いがまとまりにくくなり、スムーズな手続きが困難になります。権利関係が複雑化する前に、早急に名義変更を行うことが大切です。
法定相続分を差し押さえられる可能性がある
不動産の名義変更をしないと、第三者によって不動産を差し押さえられるリスクがあります。一部の相続人に借金がある場合、債権者がその相続人に代わって登記(代位登記)して、その相続人の法定相続分を差し押さえることが可能です。
相続後に名義変更をしておかなければ、第三者に対して相続人の権利を主張できません。借金のない相続人名義で相続登記が完了していれば、不動産の差し押さえは回避できます。
【相続】不動産の名義変更に関するQ&A

ここでは、不動産の名義変更についてよくある疑問に答えていきます。
Q1.相続登記の期限はいつまで?期限を過ぎたらどうなる?
相続登記の申請期限は、不動産を相続したことを相続人が認識した日から3年以内です。義務化前である令和6年4月1日より前に相続が発生している場合は、令和9年3月31日までに手続きを完了させましょう。
期限を過ぎても手続きをしないと、正当な理由がない限り、10万円以下の過料が科される可能性があります。
Q2.不動産の名義変更は自分でできる?
相続による不動産の名義変更は、自分で行うことも可能です。ただし、必要な書類の準備や申請手続きには専門知識が求められ、時間や手間がかかるため注意が必要です。
相続人が複数いる場合や、権利関係が複雑なケースでは、専門家に依頼するほうがスムーズに進められるでしょう。専門家に依頼することで、手続きのサポートを受けたり、万が一のトラブルにも対応してもらえたりするメリットがあります。
「自分で相続登記を進めたい」と考えている方は、以下の記事を参考にしてみてください。
相続登記と不動産の名義変更の違いを理解し、早めに手続きを

不動産の名義変更は、相続だけでなく、売買や贈与などの理由でも行われます。その中でも、相続が原因で名義を変更する場合は相続登記と呼ばれます。
相続登記には期限が設けられているため、手続きを後回しにせず、早めに準備を進めることが重要です。必要に応じて専門家に相談しながら、スムーズに手続きを完了させましょう。
不動産の相続でお困りの方は、住栄都市サービスまでお気軽にご相談ください。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
