相続した土地を3年以内に売却すべき?節税対策と注意点を徹底解説!
2025.05.16

相続した土地を3年以内に売却すると、節税効果があることをご存じですか?相続空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例を活用すれば、譲渡所得税が大幅に軽減できます。特例の適用には期限があり、早めの売却が重要です。
この記事では、相続した土地の売却時の注意点や、申告方法も詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
相続した土地を売却するなら知っておきたい!相続と税金の基礎知識

相続した土地を売却する際は、相続税や、売却時の譲渡所得税などの税金が発生します。事前にそれぞれの違いや計算方法を理解しておくことで、思わぬ負担を避けることが可能です。ここでは、相続と譲渡(売却)の基本的な違いを整理し、土地にかかる税金の種類を解説します。
まずは相続と譲渡(売却)の違いを知ろう
相続と譲渡(売却)は、どちらも土地の所有権が移る行為ですが、目的や税制の扱いが異なります。
違いの項目 | 相続 | 譲渡(売却) |
---|---|---|
所有権の移転 | 無償で相続人が承継 | 有償で第三者に売却 |
かかる税金 | 相続税(基礎控除あり) | 譲渡所得税(節税対策あり) |
手続き | 相続登記(義務化) | 売買契約・移転登記 |
維持コスト | 固定資産税・管理費が発生 | 売却すれば不要 |
3年以内の対応 | メリットはないが、相続登記の義務化に注意(2024年4月~) | 税制優遇あり(特例適用可能) |
2024年4月から、相続登記は義務化されました。そのため、未登記のまま放置すると、過料(罰金)の対象となる可能性があります。相続登記を済ませたうえで、3年以内に売却するかどうか早めに判断することが重要です。
土地を相続する際にかかる主な税金
相続した土地には、以下の税金が発生する可能性があります。
<相続した土地にかかる可能性のある税金>
- ・相続税:相続財産の合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に課税
- ・登録免許税:相続登記の際に固定資産税評価額の0.4%が課税
売却時にかかる主な税金
相続した土地を売却する際は、主に譲渡所得税が課されます。
【譲渡所得税の計算式】
課税譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除
譲渡所得税の税率は所有期間で異なるため、注意が必要です。土地の所有期間は、被相続人が取得した時点から計算します。そのため、相続後すぐに売却しても、長期譲渡所得に該当することが多いです。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
---|---|---|---|
5年以下(短期譲渡) | 30.63% | 9% | 39.63% |
5年超(長期譲渡) | 15.32% | 5% | 20.32% |
売却にかかる他の費用も確認したい人は、以下の記事をチェックしてください。
相続した土地やマンションを3年以内に売却で受けられる節税対策

相続した土地やマンションを3年以内に売却すると、2つの特例を適用できるため、譲渡所得税を軽減できる可能性があります。それぞれの特例について詳しく見ていきましょう。
1.相続空き家の3,000万円特別控除の特例
この特例は、相続した空き家やその敷地を売却する際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
計算方法:課税譲渡所得金額=収入金額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額
【適用条件】
- ・被相続人(亡くなった人)が亡くなる直前まで一人暮らしをしていた家屋であること
- ・家屋が昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物であること
- ・売却時に、耐震リフォームを行うか、または家屋を取り壊して更地として売却すること
- ・相続開始から3年目の12月31日までに売却すること
【節税の例】
- ・売却価格:2,500万円(売却代金は1億円以下であることが必要)
- ・取得費・譲渡費用:1,000万円
- ・譲渡所得:2,500万円ー1,000万円=1,500万円
- ・特別控除(3,000万円)適用後の譲渡所得:0円
このように、特例を利用することで譲渡所得税が完全に免除される場合もあります。
注意点は、賃貸物件や複数世帯住宅は対象外であること。築年数や耐震基準の条件を満たしているか、不動産会社や税理士に事前に確認しましょう。
2.取得費加算の特例
取得費加算の特例は、相続税を支払った場合に、その一部を土地の取得費に加算できる制度です。取得費が増えることで譲渡所得を減らし、税負担を軽減できます。
計算方法:課税譲渡所得金額=収入金額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額
【適用条件】
- ・相続開始の翌日から3年10か月以内に売却すること
- ・相続税を納付していること
【節税の例】
- ・売却価格:3,000万円
- ・取得費:1,100万円 取得費加算額(売却する土地に課税された相続税額)を含む
- ・譲渡費用:200万円
- ・譲渡所得:3,000万円ー1,100万円ー200万円=1,700万円
この特例を利用することで、課税対象となる譲渡所得を大幅に減らせます。
「3,000万円特別控除」との併用も可能ですが、最適な組み合わせは状況に応じて異なります。専門家に相談して最も有利な適用方法を検討しましょう。
相続した土地を3年以内に売却する場合の4つの注意点

相続した土地は、3年以内に売却すると税負担を軽減できます。一方で、特例の併用制限や共有状態での売却リスク、売却活動の遅れによるデメリットなどがあり、事前に知っておくべきポイントを押さえることが重要です。確定申告を忘れると特例が適用されない可能性も。スムーズに売却するための注意点を解説します。
1.特例は併用できない
相続空き家の3,000万円控除と取得費加算の特例は、基本的に併用できません。ただし、居住用と非居住用が分かれている場合に限り、例外的に両特例が適用可能です。どちらが有利か悩む場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
2.共有状態で売却しない
不動産が共有状態だと、共有者全員の合意が必要なため、単独所有より売却手続きが複雑になってしまいます。また、相続人が3人以上の場合、相続空き家の3,000万円特別控除が2,000万円まで減額され、税負担が増える可能性も。
遺言や遺産分割協議で単独所有にしておくと、スムーズに売却できます。
遺産分割協議書について詳しく知りたい人は、以下の記事をチェックしてください。
3.売却活動を先延ばしにしない
相続手続きに追われ、売却を後回しにすると、特例の適用期限を逃し、税負担が増える可能性があります。一般的に家の売却には3~6か月かかるため、早めに動くことが重要です。期限ギリギリで焦って売却し、不利な価格で手放すリスクを避けるためにも、早めに売却活動を始めましょう。
相続から売却までの流れを知りたい人は以下の記事をチェックしてください。
4.確定申告を忘れずに
相続した土地を売却した場合、売却翌年の確定申告が必要です。特例を適用するためには、譲渡所得税の計算書や売買契約書、相続に関する書類などを用意しましょう。
<手続きの流れ>
- ①必要書類の準備
- ②確定申告書作成
- ③譲渡所得の内訳書作成
- ④税務署へ書類提出
- ⑤納税もしくは還付を受ける
申告期間は、翌年2月16日~3月15日まで。申告を忘れると、税制優遇を受けられず、余計な税負担が発生する可能性もあります。
譲渡所得税の計算方法や特例の適用条件については、国税庁の最新情報をチェックしておくと安心です。早めに準備し、不明点があれば税理士に相談しましょう。
3年経過後も早めの売却がおすすめ|3つの理由

相続した土地を放置すると、罰則のリスクや維持費の負担が増加します。3年経過後も、できるだけ早めに売却するのが賢明です。
1.相続財産の放置は罰則の対象になる
相続した土地を3年以内に登記しないと、10万円以下の過料の対象となります。2024年4月から相続登記が義務化されており、早めの手続きが必要です。
相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きのこと。過去に相続した土地も義務化の対象になるため、登記漏れに注意しましょう。
3年以内の売却が節税の観点で有利ですが、5年以内に売却しても長期譲渡所得として税率が低く抑えられる場合もあります。
5年以内の売却を考えている方は、以下の記事をチェックしてください。
2.空き家の劣化防止につながる
家屋の劣化防止につながるため、早めの売却を推奨します。劣化を防ぐために、空き家を管理するサービスに依頼すると、金銭的負担も増えてしまいます。また、空き家の状態が続くと、家屋が劣化し資産価値が減ってしまう可能性があるため、早めの着手がおすすめです。
空き家の管理義務について詳しく知りたい人は、以下の記事をチェックしてください。
3.固定資産税の負担をなくせる
土地を売却すれば、固定資産税の負担をなくせるため、早めの売却が有利です。不動産を所有している限り、毎年固定資産税を支払う必要があります。
固定資産税は、1月1日時点の所有者に課税されます。売却が遅れるほど支払いが続き、負担は増えてしまうことに。
現在の固定資産税額を確認し、負担を減らす計画を立てましょう。
特例を活用し、税負担を軽減しよう!

相続した土地を3年以内に売却すると、税金面でメリットがあります。相続空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例を活用すると、譲渡所得税を大幅に軽減可能。特例には書類の準備や期限もあるため、早めに動き出すことが大切です。
売却の際は、住栄都市サービスにご相談ください!
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
