【親が亡くなった】遺産相続の手続きや税金、やることリストを解説
2025.04.15

親が亡くなった後、期限があるものからないものまで多くのやるべきことがあります。とはいえ、何から始めればよいのか、遺産相続はどのようにすればよいのかわからない方も多いでしょう。
親が亡くなった後の手続きで慌てないよう、遺産相続の手続きや税金、やるべきことを期限別に解説します。
目次
親の遺産は誰が相続できる?|相続順位と割合

法律上、遺産を引き継ぐ人のことを法定相続人といいます。法定相続人のうち、被相続人の遺産を必ず引き継ぐのは配偶者です。例えば、父親が亡くなった場合、母親が優先的に遺産を引き継ぐことになります。
ただし、相続時に入籍している場合に限られ、内縁の夫・妻の場合やすでに離婚している場合は認められません。
配偶者以外の法定相続人は、以下のように順位と法定相続分が決められています。
順位 | 法定相続人 | 法定相続分 |
---|---|---|
1位 | 被相続人の子ども | 2分の1(配偶者が2分の1) |
2位 | 被相続人の父母 | 3分の1(配偶者が3分の2) |
3位 | 被相続人の兄弟姉妹 | 4分の1(配偶者が4分の3) |
親の遺産を相続する手順

親の遺産を相続するには、まず遺言書を確認します。その後、相続人や財産を調査し、相続放棄・限定承認の手続きをとります。相続人と相続遺産が確定したら、遺産分割協議を行い、相続税の納付と相続登記をしましょう。
1.遺言書を確認する
親が亡くなったら、まずは遺言書の有無を確認します。遺言書があればその内容にしたがって相続を進めるため、遺産分割協議が不要です。自宅で見つからなかった場合は、公証役場や法務局に保管されていないかどうかも確認するとよいでしょう。
なお、自筆証書遺言や秘密証書遺言は勝手に開封せず、家庭裁判所での検認手続きが必要です。手続きを踏まなかった場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。
2.相続人を調査する
遺言書がない場合は、相続人を確定させるための調査が必要です。相続人が揃わなければ遺産分割協議が行えず、相続手続きが進められません。
相続人を調べるには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取得し、子・両親・兄弟姉妹を確認します。遠方にある本籍地の役所から取得する場合は手間と時間がかかるため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するとスムーズです。
3.財産を調査する
相続手続きにおいて、被相続人の遺産を正確に把握することも大切です。プラスの財産はもちろん、借金などのマイナスの財産も含めて全体像が不明確なままだと、相続人同士で公平に分けられません。
金融機関に問い合わせたり、自宅の保管書類を確認したりしましょう。財産の把握が難しい場合は、専門家に依頼するのも一つです。
4.相続放棄・限定承認の手続きをする
財産を把握したうえで、必要に応じて相続放棄や限定承認を検討しましょう。
限定承認とは、相続人全員の同意のうえで財産の範囲内で負債を精算し、余った分を相続する手続きのこと。マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合やその可能性のある場合、相続放棄や限定承認によって負債を引き継がないことも選択肢の一つです。
相続放棄をする場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に申請しましょう。
5.遺産分割協議を行う
相続人と相続する遺産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。合意ができた場合は、名義変更手続きなどに備えて遺産分割協議書を作成しましょう。
合意が得られなかった場合は家庭裁判所での調停や審判、弁護士への相談によって決定する必要があります。
6.相続税の納付・相続登記を行う
相続税の申告・納付は、遺産が基礎控除を超えた場合に必要です。相続開始を知った日から10ヶ月以内に行わなければなりません。
また、相続した財産は名義変更をする必要があります。不動産を相続した場合は、相続から3年以内に相続登記を行うことが義務付けられているため、忘れないよう注意しましょう。
親の遺産相続にかかる税金はいくら?

財産を相続した場合、相続税が発生します。ただし、遺産総額が基礎控除額以下であれば相続税の申告・納付は不要です。基礎控除額は以下の式で求められます。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
つまり、遺産総額が3,600万円以下だった場合、相続税の申告は不要です。なお、基礎控除額は法定相続人の人数によっても変動します。
遺産総額が基礎控除を超えた場合でも、配偶者控除や未成年者控除などの特例を利用することで、相続税を軽減できる可能性があります。場合によっては負担額がゼロになることも。
以下の例で見てみましょう。
例)遺産総額が5,000万円で法定相続人が配偶者だけであった場合
- ・基礎控除額を差し引いた1,400万円に対し相続税が課税
- ・相続税額:1,400万円×15%−50万円(控除額)=160万円
上記のケースでは相続税額が160万円ですが、配偶者控除を利用することで相続税がゼロになるため、申告も不要となります。
参考:相続税の税率|国税庁
参考:配偶者の税額の軽減|国税庁
【期限別】親が亡くなった後にやるべきこと

親が亡くなった後はやるべきことがたくさんあります。何から手をつけるべきか、期限別に優先順位を確認しておきましょう。
すぐにやるべきこと
親が亡くなった後、すぐにやるべきことは以下のとおりです。
- ・医師から死亡診断書・死体検案書を受け取る
- ・近親者や関係者、知人に訃報連絡をする
- ・葬儀社に連絡し、葬儀の手配を行う
死亡診断書はその後の手続きで必要になることがあるため、コピーを取っておきましょう。
7日以内にやるべきこと
親が亡くなってから7日以内に、死亡届、火葬・埋葬許可申請書を提出します。期限内に提出しなかった場合、5万円以下の過料が科されるため注意してくださいね。提出先は故人の死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかにある市区町村役場です。
なお、亡くなってから7日目に行う法要「初七日」は、葬儀と同時に済ませるケースが多いです。
14日以内にやるべきこと
親が亡くなってから14日以内にやるべきことは、以下のとおりです。
- ・世帯主変更届の提出(市区町村役場)
- ・国民健康保険・介護保険の資格損失届の提出(市区町村役場)
- ・年金受給停止(年金事務所)
年金の受給停止について、厚生年金・共済年金の停止手続きは10日以内、国民年金の停止手続きは14日以内である点に注意しましょう。
2年以内にやるべきこと
親が亡くなって2年以内にやるべきことは、以下のとおりです。
- ・埋葬料の請求(協会けんぽ/健康保険組合)
- ・葬祭費の請求(市区町村役場)
- ・高額医療費の還付申請(市区町村役場/協会けんぽ/健康保険組合)
- ・国民年金の死亡一時金請求(年金事務所)
※()は取得場所
3年以内にやるべきこと
親が生命保険に加入していた場合は、亡くなってから3年以内に生命保険会社に保険金を請求しましょう。法律上は、3年が経過すると請求権が消滅します。
ただし、状況によっては3年を過ぎても保険金を受け取れる場合があります。時効になっても、まずは保険会社に相談してみるとよいでしょう。
5年以内にやるべきこと
親が亡くなってから5年以内に、年金事務所に対し故人の未支給年金を請求しましょう。未支給年金とは、本来支払われる予定だったものの、本人死亡により支給されていない年金のこと。
未支給年金は請求することで遺族に支給されます。三親等内の親族までが請求対象です。故人の死亡後5年が経過すると時効となってしまうため、早めに手続きしましょう。
【その他】親が亡くなった後にやることリスト

親が亡くなった後、以下に示した各種名義変更や解約など、生活に関わる部分の手続きも必要です。
- ・運転免許証の返納
- ・パスポートの失効手続き
- ・クレジットカードの解約
- ・携帯電話・スマートフォンの解約
- ・インターネット回線の解約
- ・公共料金の名義変更・解約
- ・サブスクリプションの解約
- ・介護施設・訪問介護などの解約
- ・新聞の解約
親の死後における遺産相続ややるべきことを理解し、慌てずに進めよう

親の死後、死亡にまつわる各種届出の提出を2週間以内に済ませます。遺言書を確認し、遺産がある場合は相続するか否かを3ヶ月以内に判断し、相続する場合は必要に応じて10ヶ月以内に相続税の申告が必要です。やるべきことは多いですが、期限を確認し慌てずに手続きを進めましょう。
不動産相続について不安な点がある場合は、住栄都市サービスまでお気軽にご相談ください。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。
