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不動産を相続したら名義変更が必要?放置するリスクや相続登記の流れなどについて解説

2025.05.11

法改正により、相続登記が義務化されましたが、相続した不動産の名義変更をしないとどうなるでしょうか?この記事では名義変更しないで放置した場合のリスク、名義変更の流れや費用などについて解説します。相続登記の放置はトラブルにつながる場合もあるので、すぐに手続きを開始しましょう。

不動産の名義変更とは

一般的に不動産の名義変更と呼ばれているのは、「所有権移転登記」のことです。法務局が管理している不動産の登記簿に、前の所有者から新しく不動産を取得した人の名義に所有権を変更する手続きのことを示します。不動産を取得したら、自分が所有者であることを証明するために、必ず名義変更の手続きをしましょう。

不動産名義変更が必要になるケースは、以下の4つが考えられます。

  1. 1.不動産を相続したとき
  2. 2.不動産を譲与されたとき
  3. 3.不動産を購入したとき
  4. 4.離婚による財産分与で不動産を取得したとき

なお、この記事では不動産を相続したときについて詳しく説明しています。

相続登記とは

相続登記とは、相続に伴う不動産の名義変更のことで、「相続による所有権の移転登記」といいます。土地や建物などの不動産を持っている方が亡くなった際には相続が発生します。亡くなった方から相続する方へ不動産の名義変更を行うことを示します。

相続登記は令和6年4月から義務化されました。申請期限は「不動産を相続したことを知った日から3年以内」です。義務化前に相続した不動産についても、令和9年3月末日までに登記を完了させる必要があります。この期間に相続登記しないと、10万円以下の過料が科されることもあります。

相続で不動産を取得したり、相続登記を放置していたりする場合は必ず相続登記を行いましょう。

相続した不動産の名義変更を放置するリスク

相続登記しないまま放置してしまうと、将来的にトラブルにつながるかもしれません。ここでは、不動産の相続登記を放置するリスクを3つ紹介します。

1.相続人が増えて話し合いが難しくなる

相続登記を放置している間に相続人が亡くなると、世代をまたいで相続人がどんどん増えてしまいます。

相続をする際には遺産分割協議で全員と話し合う必要がありますが、相続人が多ければ多いほど、面識のない遠い親戚などの連絡先を調べなければなりません。全員と連絡を取るのがますます困難になっていきます。そのため、できるだけ早く相続登記を済ませるのがおすすめです。

2.相続持分を売却されるリスク

相続した不動産に複数人が所有権を持っている場合に、相続持分を売却される可能性があります。登記申請は、他の共有者の同意がなくても法定相続分どおり共有とする登記申請ができます。

そのうえで、他の相続人が不動産会社などに自分の持分を売却したり、自分の持分に抵当権等の担保を付けて借り入れをしたりすることもありえます。そのため、早めに遺産分割協議を行うなどして相続登記をする必要があります。

3.不動産の売却が困難になるリスク

相続登記が放置されると、不動産の売却や活用が困難になるリスクがあります。登記簿で売主の名前が確認できないと、購入希望者や不動産会社は売買にリスクを感じてしまいます。そのため契約につながりにくくなることも。不動産売買において所有者が明確でないと、不動産の売買や活用は難しくなります。

相続した不動産の名義変更の流れ

相続登記は不動産の住所を管轄する法務局に申請します。ここでは相続登記の流れを解説します。

1.不動産の名義を確認する

まず、不動産の住所を管轄する法務局にて「登記事項証明書」を取得します。対象の不動産の名義や建物の実態を把握しましょう。亡くなった方の他に所有者がいないか、相続登記がされているかを確認してください。

2.相続人を決定する

遺言書に相続人の氏名がなければ、相続人について調査し、確定させてください。被相続人の戸籍を出生時まで遡って確認します。

<相続人の範囲と順位>

  • ・第0順位:被相続人の配偶者は常に相続人となります。
  • ・第1順位:被相続人の子や孫
  • ・第2順位:被相続人の親や祖父母(第1順位の相続人がいない場合)
  • ・第3順位:被相続人の兄弟姉妹(第2順位の相続人もいない場合)

3.遺産分割協議を行う

相続人が一人であれば遺産の全てを相続できますが、二人以上いる場合は、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、遺産分割について話し合う必要があります。法定相続分で分割する場合だけでなく、それ以外の分割方法を決める場合にも「遺産分割協議書」を作成しましょう。

4.必要な書類を集める

相続登記をするには、様々な書類を用意する必要があります。書類によっては入手場所が違うので、事前にチェックしておきましょう。また、相続の種類によって必要な書類が変わるので注意してください。

必要書類 場所 備考
亡くなった方の戸籍謄本 自治体の役所 出生から死亡までの記載が必要
亡くなった方の住民票除表 自治体の役所 出生から死亡までの記載が必要
相続人の全員の戸籍謄本 自治体の役所
相続人全員の印鑑証明 自治体の役所 遺産分割協議書に添付する
不動産の相続人の住民票 自治体の役所
登記事項証明書 不動産を管轄する法務局
固定資産評価証明 不動産のある住所の役所 固定資産納税通知書のコピーでも可

5.自分で書類を作成する

以下の書類は自分で作成する必要があります。

書類 備考
登記申請書 法務局ホームページなどにサンプルあり
相続関係説明図 被相続人と相続人の関係がわかる表
遺産分割協議書 遺産分割協議にて相続分を決定した場合に必要
委任状 相続登記を司法書士に依頼する場合に必要

6.法務局に必要書類を提出

必要書類が揃ったら、法務局に提出します。不動産の所在地を管轄する法務局に提出するので、どこの法務局が管轄なのか事前に確認しておきましょう。オンラインや持参、郵送での提出が可能です。

相続登記にかかる費用

相続登記をする際には、必要書類の発行手数料、登録免許税、司法書士への依頼料などがかかります。金額はケースによって異なります。

必要書類の発行手数料

戸籍謄本や住民票などの書類を揃えます。必要書類の発行手数料は、相続人が少なければ1万円程度です。相続人の人数によって必要部数も変わるので、総額は変動します。

登録免許税

登記登録をする際に、不動産の固定資産評価額に基づき、登録免許税を支払います。登録免許税の計算方法は、「固定資産評価額×0.4%」です。

司法書士への依頼料

司法書士に相続登記の手続きを依頼すると、10万円程度の費用がかかります。事務所によって費用は変化するので、まずは相談して見積もりを依頼してみると良いでしょう。ただし自分で相続登記を行う場合は不要です。

自分で相続登記はできるのか

相続登記は自分でもできます。しかし、遺言書がない・相続人の数が多い・長年相続登記を放置してきたなどの場合、集める書類が多くなってしまい、かなりの手間と労力がかかってしまいます。相続関係が複雑な場合や、自分で相続登記するのに不安を感じている方は、一度司法書士に相談してみましょう。

不動産を相続したら名義変更!相続登記は複雑なこともあるので、司法書士に相談しよう

法改正により相続登記が義務化されたので、不動産を相続したら必ず相続登記を行ってください。放置しているとより手続きが複雑になり、後々トラブルに発展することもあります。早急に着手するのがおすすめです。

自分で相続登記をすることもできますが、必要書類の収集や作成には時間も労力もかかります。無理はせずに、司法書士に依頼することも考えてみましょう。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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